死と隣り合わせになった経験で得たもの

藤重政孝

藤重政孝

――顧みてご自身の人生を振り返っていかがですか?

 実は撮影前に入院したんですよ。お医者さんに「このままだと死にますよ」と言われて「このまま帰らないで入院してください」と。あるところを壊して、今は全然元気なんですけどね。でも初めてお医者さんに「死ぬよ」と言われて。おかげ様でこうして生きていられているんですけど(笑)。自分の人生には後悔はない。でももう少し自分の子たちの成長を見ていたいと思って。僕がいなくても育っていくと思うけど。

――それから仕事の取り組み方は変わりましたか?

 その後の今回のお芝居だったので、意識はないけど変わったと思います。すごくナチュラルになったというか、良い意味で力が抜けていたんだと思います。それ以前に、子どもを授かった時に意識は変わっていて、この子たちに見せて恥じない、誇れるものを残したいなと。例えば、殺人犯の役がきたとしても、その人にある愛の部分をしっかりとみて、一生懸命に演じたいと。子どもができたことによって一つの自分の価値観の基準が変わりました。そういう考えに変えてくれた子どもたちは僕にとっては宝ですね。

――では今は自然体でいるような感覚なんですね。今後はいかがですか?

 歌手としてデビューして、連ドラにも出させて頂いて、今思えば幸せですが、当時の自分からしたらあまりの忙しさに何が何だか分からない状態で。その時、インタビュアーさんによく「歌とお芝居どちらが好きですか?」と聞かれていたんですけど、まったく今は垣根がなくて、その一環で演出していて。歌の表現と芝居の表現を融合したものとして演出は面白いかもと思って。それで演出の話がきて。この映画のエピソード0という位置づけの朗読劇でした。演出は楽しかったけど、難しかったですね。役者は活字、台本にとらわれてしまう。けれど、役者は隣り合わせで座っているけど、向かい合って話しているように見せながら前(観客)にセリフを届けるというのは、難しいことだけど、それをやってみせていたので役者はすごいなと思いましたね(笑)。

――役者も経験されて演出も。役者の気持ちが分かるという点でもいいですね。

 でも、役者の気持ちを理解しているからこそ、役者に甘い演出家になってしまわないようにしたいですね。やっぱり役者の気持ちが分かるから「そうだよね」と寄り添ってしまうけど、作品が前提にあるので、そこはそうならないように気を付けています。それと、演出家の時は役者よりも前に出ないようにしたい。あくまでも裏方は裏方なので。そうやって物事を常に俯瞰してみられるような人間になりたいですね。もちろん主観も大事だけど、俯瞰する仕事もやっていきたいです。

――今年は芸能活動25周年です。

 本当にファンの方に生かされているので、感謝しかないです。スタッフも家族も、友達にも支えられてなんとかご飯を食べてこられた。本当に感謝しています。そういう意味でも恩返しのつもりで、そしてナチュラルにこれからも頑張っていきたいです。

藤重政孝

(おわり)

映画情報

映画『みとりし』
出演:榎木孝明、村上穂乃佳
高崎翔太、斉藤暁、つみきみほ、宇梶剛士、櫻井淳子ほか
原案:『私は、看取り士。』柴田久美子著(佼成出版社刊)
監督・脚本:白羽弥仁
配給・宣伝:アイエス・フィールド
有楽町スバル座ほか全国順次公開中

記事タグ

関連記事は下にスクロールすると見られます。