4人組ロックバンドのIvy to Fraudulent Gameが9月4日、2ndアルバム『完全が無い』をリリースした。2010年に、寺口宣明(Gt&Vo)、福島由也(Dr&Cho)、カワイリョウタロウ(B&Cho)、大島知起(Gt)で地元・群馬で結成。独自の世界観を持った楽曲と圧倒的なパフォーマンスでファンを魅了し、2018年9月にシングル「Parallel」でメジャーデビュー。今作『完全が無い』は、アニメ『トライナイツ』EDテーマとして話題の「模様」をはじめ、今年初頭にリリースしたシングル「Memento Mori」、ライブでも人気の楽曲など全11曲を収録。今作の制作過程やそこに込めた気持ち、バンドの根底にある死生観について話を聞いた。【取材=榑林史章】

自分の中に突き通すべきものがある

――『完全が無い』は、前半と後半で印象がまったく変わりますね。一筋縄ではいかない感じを受けました。

寺口宣明 俺たちの中では、今回は意外とシンプルだよねっていう感じだったんです。それでもそう思われたということは、俺たちがもともと持っているそういう良さも残っているんだと気づけて、安心しました。

――アルバム制作は、どういうところから始めるんですか? 最初にコンセプトを決めたり?

寺口宣明 コンセプトを決めて作ったわけではないですね。曲ができていく中で、じゃあ次はこういうテイストで作ろう、じゃあ次はこうでみたいな感じで曲を作っていって。そうやって曲が集まって、アルバムができたみたいな。

――最初にできたのは、どの曲ですか?

寺口宣明 5曲目の「真理の火」です。ライブでは1年半くらい前からやっているんですけど。

福島由也 それからちょっとずつ変化していって。

寺口宣明 去年の4月に一度レコーディングしたんですけど、今回アルバムを制作している間に直したいところが出てきたり、歌にしても今歌ったものを録ったほうがいいという考えもあって。それで、歌を録り直しさせてもらいました。そこで思ったのは、曲ってその時期の状況やメンタルの変化によって、本当に変わっていくものなんだなっていうことです。

――「真理の火」は、いわゆるロックやポップスとは違う、すごく壮大な感じがありますね。映画音楽のような重厚さがありながら、スクラッチが入っていたりと、クラブミュージックの要素もあって。

カワイリョウタロウ その時は、ヒップホップにハマっていたんです。

福島由也 最初はブリストルっぽいサウンドを意識していて。だから映画音楽と言うよりは、それをサンプリングしたような感じで、質感もそこを目指して作っていました。

――ブリストルでは、どういうバンドが好きなんですか?

福島由也 王道で、マッシヴ・アタックとかポーティスヘッドとか。

――90年代後半から2000年代に流行った音楽ですが、どういうきっかけで?

福島由也 そうですね。でもヒップホップがわりと流行っている中で、その時代のトリップホップと呼ばれるようなブリストルサウンドが、個人的に面白いなと思ったので。

カワイリョウタロウ 「このバンドが格好いいよ」とか、常にメンバー間で情報を共有しているから、「真理の火」を聴いた時はすぐに分かりましたよ。「この要素を入れてきたか!」って。

――演奏は福島さんのデモを元に?

カワイリョウタロウ ほぼデモ通りで、その代わりサウンドメイクの部分を自分が納得するようにさせてもらっています。

大島知起 俺もだいたい似たような感じです。フレージングも、ほぼそうです。

寺口宣明 歌に対してはリクエストもないので、いちばん自由です。だからレコーディングしていちばん変わるのが歌ですね。こういう風に歌ってほしいみたいなものは、もしかしたらあるのかもしれないけど、言われたことがないから。俺が歌っているところはイメージするの?

福島由也 するよ。毎回しているけど、それが制約になってしまうのは嫌だし、歌の表現に関してはノブ(寺口)のほうが知識を持ってるから。まずは自由に表現したものを聴きたいって思うから。どういう歌を乗せてくるか、僕は毎回それを楽しみにしているところもあるので。

――歌詞は、どんなイメージで書いているんですか?

寺口宣明 「真理の火」は、一つの葛藤や迷いの中で出てきた言葉たちなのかなって思います。それでも自分の中に突き通すべきものがあるという、芯を感じて。それを曲自体で叫んでいる感じがしました。それはバンドのことでもあると思うし、福島が一人の人間として思ったことなのかなって。そういう意味では、けっこうパーソナルな曲だと思います。

――「blue blue blue」という曲の歌詞でも、<一つだけ譲れなくて>と歌っていますね。他のバンドとは違う譲れないものがあって、それを突き通していくんだ、と。

福島由也 個人の美学って、正しさと対極にあることもあると思っていて。そことどう向き合っていくかが、重要なんじゃないかと。言ってしまえば真理などというものは存在しなくて、ただそれらしく思えると言うか。それに対して常にどう向き合っていくかを、考えているだけなんです。

――ちょっと前までは、フェスではバンドシーンが同じダンスロックの方を向いている傾向があって、その中でIvy to Fraudulent Gameは異彩を放っていました。そこと重なる感じがしました。

寺口宣明 そういうところも、あるかもしれないですね。今はそのシーンが終わって、ジャンル的な流行りはあると思うけど、一時期に比べたら良いものは良いと言ってもらえる時代になってきている気がしています。今、俺たちにとってはいい時代に向かっている感じがあります。

――そういう経験が、Ivy to Fraudulent Gameのオリジナリティや、それをブレさせない芯になっていると。

寺口宣明 そういう経験を経て時代が変わって来ている今、こうしてこのアルバムを出せるのが嬉しいし、みんながどんな反応をしてくれるかがとても楽しみです。

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