作業着へのこだわり

木川尚紀

――歌を聴かせて頂いて、演歌を歌うために生まれてきたような歌声だと思ったのですが、特別なレッスンとか受けたんですか。

 ずっと独学なんです。花岡優平先生からも「このまま行った方がいい」とアドバイスをいただきましたので、今も特に習ってはいないんです。

――そういえばYouTubeで坂本九さんの曲をカバーされていましたが、ニュアンスが近いなと感じました。

 ありがとうございます。マネをしようとは思ってはいないんですけど、実は物心ついてから歌った初めての曲が坂本九さんの「明日があるさ」だったんです。小さい時から歌っていた事もあって、自然とそうなってしまっているのかもしれません。

――ルーツのひとつなんですね。カラオケ大会にも出場されていたみたいですね。

 はい。最初に出たのは地元・行方市のカラオケ大会で、そのあとにデビューのきっかけにもなった『小美玉発!スター★なりきり歌謡ショー』に出演して、花岡先生とお会いするきっかけになりました。この時に初めて生の伴奏で歌うという事も経験させていただきました。

――出演したのは、プロになりたいという思いからですか。

 もちろんそれもありましたが、知人が「これに出てみないか」と勧めてくれたんです。そのチラシに審査員長に花岡先生のお名前があって、「秋元順子さんの『愛のままで』を作った人だ」と知って出演したんです。プロを意識したのは物心ついた時で、歌謡コンサートをテレビで見ていて、自分もそのステージで歌いたいと思うようなったんです。

――サラリーマンを経験されていますが、それは歌手への道を一回諦めて?

 やはり歌手は厳しいという事を周りからも言われていたので、とりあえず製鉄所に就職したんですけど、心の中では「自分がやりたいのは会社員ではないんだよな」と思いながらも、1年で退職して、今年7月までいた歯科医療器具を作る会社に転職しました。でもまた、ここで歌手への思いが強くなって…。

――ちなみに会社員時代で一番大変だったことは何ですか。

 製鉄所で働いていた時です。死と隣り合わせの仕事だったんです。保全作業なんですけど、隣ですごい大きな機械が回転していたり、ラインの上を何百度という熱い鉄板が流れてきます。僕のやっていた仕事は1時間しか出来なくて、それ以上やると身体に負担がすごいんです。その時についた傷が手に沢山あります。仕事をしていて、「今日死ぬんじゃないかな…」とか考えてしまうんです。夢にまで現場が出てきてしまうくらいでした。今まで生きてきた中では一番過酷でした。

――すごい経験をされてきたんですね。今着用されている作業着は前職の歯科医療器具メーカーの時に来ていたものなんですよね。

 そうなんです。部署にもよるんですけど、僕の部署は機械に塗る油だったり、ペンキで結構汚れてしまうんです。

――作業着にもこだわりはあるんですか。

 あります! 今着ているのは会社から支給してもらったら作業着ですが、他のはワークマンさんで購入させていただいています。今回も衣装用に15点ほど買ったんですけど、2万円もいかなくて、めちゃくちゃ安かったんです。こだわりとしては色は今着ているような白っぽい色が好きで、あと極めつけはベルトです。寅壱というブランドのベルトなんですけど、作業着ベルト界のヴィトンみたい格付けで、これを付けていると、分かる方からは「おっ!」となるんです(笑)。

――通なベルトなんですね。ちなみに作業着が衣装になった経緯は?

 「泥だらけの勲章」をレコーディングする前日に、綺麗な格好でこの曲は歌えないと思い、当日に作業着を持っていってレコーディングしたのがきっかけです。それを見た花岡先生とディレクターさんが作業着を気に入って頂いて、これが衣装で良いじゃないかとなりました。あと、ずっと着てきたので、この作業着だと気持ちが落ち着くという効果もあります。「泥だらけの勲章」は働く人の応援歌になっているので、この曲を聴いて元気が出たとか、頑張れると思ってもらえたら嬉しいです。

――この曲を聴いてどう思いましたか。

 自分が夢に向かって行くぞという歌で特に、<心に広がる 果てない荒野 たがやして ゆくことが 人生だから>というところが自分に響きました。歌詞の内容が自分にピッタリだなと思いました。

――歌うポイントとしてはどこが難しいですか。

 <意地っ張りを つらぬいて>というところなんですけど、ここは力を入れずに嘆くような感じで、優しく歌っています。最初は強く歌っていたんですけど、先生とお話しして今のような歌い方になりました。<いつの日か 花になる 夢を抱いて>は目標に向かって頑張るぞという意味を込めて大きく表現しています。

――それでは「てるてるぼうず」のポイントは?

 母のことを考えながら、俺が働いて助けるから、笑顔になって欲しいという気持ちを込めています。僕の場合は母親が生きていたらこうするんだろうな、こう言ってくれるんだろうなとか思い浮かべながら歌いました。<段ボールの中の かあちゃんの手紙>の続きは、母親が問いかけてくれるかのようなイメージなんです。

――編曲は川村栄二さんですね。

 そうなんです。花岡先生が僕の人となりを見てもらいたいと、川村先生の自宅まで連れて行ってもらいました。そこで、今回の2曲を歌わせていただいて、「すごくストレートだな」と感想をいただきました。

記事タグ

関連記事は下にスクロールすると見られます。