シンガーソングライターの有華がいま注目を集めている。社会人など様々な経験を通して綴られる等身大の歌詞、それを優しく包み込む歌声が人気の秘密だ。もともとライブハウスなどで活動していたが、多くの人に聴いてもらいたいとSNSを通じた歌唱を始めた。広く知られるようになったのはカバー曲で、その歌声に「癒される」と話題になり、いまではフォロワー12万人にもおよぶ。「聴いて下さる方に寄り添いたい」。今年7月にリリースした自身初の全国流通ミニアルバム『キミノサプリ』にはそうした思いが込められている。昨年からは全国ツアーも実施している。音楽で心を通わせる有華、その人間性に迫ってみた。【取材・撮影=木村陽仁】

歌手を決心させた憧れの存在、いつかは共演を…

 「お会いしたことがなくても、私が歌う曲が、その人の元気になっていることが嬉しくて。そういう存在でいたいと思っています。歌えるだけで幸せですし、この先どんな出来事があっても私が感じたことを伝えていきたいです」

 そう語るのは、大阪在住のシンガーソングライター・有華。優しい歌声と等身大の歌詞が共感を呼び、10代から20代の女性を中心に支持されている。

 注目を集めるようになったきっかけは、カバー曲。著名アーティストの曲をカバーし、その様子をSNSなどで配信したところ、好評を得た。今ではインスタグラムのフォロワー数は12万6千人を超えるほどになった。「びっくりですよね…自分でも実感がなくて…」。

 もともと「私は好きな曲を歌って載せているだけだった」というが、フォロワーからは「今日も癒された」というコメントが多く寄せられている。「そう寄せてくださるのはすごく嬉しいです。私自身も皆さんからいっぱい元気をもらっています」と感謝した。

 持ち味は、声楽で学んだ発声法だ。なかでも裏声は曲の世界観のアクセントになっている。「寄り添いたいという気持ちがあります。スッと入ってくる声でありたい」という気持ちがある。

 歌手は小さい頃からの夢だった。本格的に動いたのは高校三年生から大学生時代。モーニング娘。も大好きで一時期は「歌って踊る感じもいいな」とも思ったようだが、歌手・絢香への憧れが強かった。「絢香さんが書く曲への共感もそうですし、何よりも歌声が大好きで、人柄も含めてすべてが理想でした」。

 そんな憧れの絢香と一度、同じステージに立ったことがある。それもファンの一人として。ファンクラブイベントで、誰かひとり絢香と一緒に歌うことができる企画がおこなわれたのだ。幸運にも有華が選ばれ、歌うことになった。そこでは会話も交わした。

 「『歌っているときと喋っているときのギャップが凄いね』と言われたのを鮮明に覚えています。『今度はアーティスト有華として是非またステージで歌わせてください』ということはお話させて頂いて、『ぜひぜひ』と言ってくださったので、いつか叶えられたら…」

あきらめかけた歌手の夢、窮地を救ったインスタ

 幼少期からピアノや声楽を習っていた。辞めたいときもあったが、高校三年生までやり続けた。「やっぱり続けるということは大事ということを今になって実感しています。今でもその頃の曲が弾けますし、ピアノの弾き語りができたのもこの時の経験があったから。続けていて良かったと思います」

 高校三年生の時に歌手になることを決心した有華。そのきっかけは、出場したコンテストの審査員から送られた言葉だった。

 「そのコンテストは見事に落ちました。でも審査員の方が、『声が良いね。自分で曲とか作ってみたら?』と言ってくださって。それまでは私、絶対すぐ売れると思ってたんです(笑)。『こんなに歌が上手い人はいないぞ!』という気持ちが強くて(笑)。でもオーディションも落ちまくりでしたし、現実は甘くなくて。なのでその言葉に後押しされて曲を作り始めました」

 その審査員からはライブを経験することも勧められた。「3カ月くらい練習して初めてライブハウスでピアノの弾き語りをしたんですけど、今でも覚えていないくらい緊張しました。でも人前で歌うことがすごく気持ちよかったのも覚えています」

 その後も、ライブハウスを中心に歌い続けた。しかし、順調にはいかなかった。

 「お客さんがつかなくて…。両親とは『就活が始まるまでに事務所が決まらなかったら就職する』という約束もしていたので、『これはヤバイな』と。昼は学生、夜はライブという生活をしていたいんですけど、結局、事務所は決まらず、一般企業に就職して…」。

 だが、夢を諦めなかった。平日は働き、休日はライブをするようになった。そのタイミングで「もっと多くの方に聴いてもらいたい」とインスタグラムなどで歌っている姿を投稿し始めた。

 そして、カバー曲をインスタグラムに投稿し始めた3年前から、フォロワーが徐々に増えていった。今では全国ツアーができるようにまでなった。

 企業で働いていた経験は決して無駄になってはいないという。

 「最初は社会人をしている自分が嫌で、『私はアーティストや!』という気持ちもありました。でも職場の方々が凄く応援して下さったり、社会人を経験したから、イベントをするにはどれだけの方が動いているのかとか、そういう裏の部分まで意識がいけるようになったと思うんです。だから社会人は本当に経験して良かったと思います」

 期間は1年ほどだったが、この時の経験は曲にも反映され、それが多くの共感を得る源にもなっている。アルバム『キミノサプリ』に収録されている「おつかれさま」もそのなかの一つだ。

 「社会人をしていた頃、家に帰った時に『おつかれさま』と言ってもらいたいけど、現実はなかなか言ってもらえない。なので、この曲を通して『おつかれさま』と言ってあげられたら、と思って作りました」

 彼女の作る曲には、経験したからこそ感じられる“かゆいところに手が届く”曲が多くある。ここからは一問一答。

有華

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