9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎(Vo, Gt)、滝 善充(Gt)によるユニット・キツネツキが8月9日、東京キネマ倶楽部でワンマンライブ『キツネノヨメイリ〜2019夏〜』をおこなった。キツネツキは2017年に結成し、9mmではギターの滝がドラム担当だったり、「取り憑かれメンバー」と呼ばれる様々なゲストミュージシャンが参加するなど、編成もライブごとに変化し、“自由に楽しく”をモットーに活動。ミニアルバム『キツネノナミダ』のリリース記念ワンマンライブでは、次々と変化するキツネツキ・取り憑かれメンバーの変幻自在なパフォーマンスを存分に味わえる一夜だった。【取材=平吉賢治】

菅原&滝の2ピース演奏から変化していくキツネツキ

キツネツキ(撮影=西槇太一)

 9mmの菅原と滝が“自由に楽しく”をモットーとし、キツネツキとしておこなうライブ。その自由度がサウンドとしてどう飛散するのかということを想像するだけでもワクワクする。この日はあらゆる角度からパフォーマンスを披露してくれたキツネツキに、良い意味で爽快に“キツネに化かされた”という快感を持ち帰らせてくれた。

 序曲「キツネツキのテーマ」を奏でる菅原&滝は笑顔でリラックスした空気感。かと思えば、たちまちタイトなドラミングを魅せる滝と重厚なサウンドの菅原のギターがキネマ倶楽部にボワッと火を点ける。2人編成とは思えないほどのたっぷりとした音圧を出力させ、スタッカートなフレーズが印象的な「odoro odoro」のシリアスなパワーがオーディエンスを刺しまくる。

 MCで菅原は「暑中お見舞い申し上げます! たいへんお暑い東京にお集まり頂きありがとうございます」と、涼しげな笑顔でお盆間際らしいご挨拶。ここまで2人でのアンサンブルだったが、爲川裕也(Gt)(folca)と下上貴弘(Ba)(アルカラ)、2人の“取り憑かれメンバー”がステージに現れ、ライブは4人での演奏へと変化した。

 この日のセットリストはキツネツキの楽曲に加え童謡のカバー楽曲も披露するという楽しげな味わいだ。BPM180はあるかという程の高速ビートで演奏される「犬のおまわりさん」は既存の原曲のイメージを完全に覆す激熱のサウンド。「ロックミュージシャンが何かに取り憑かれて童謡を奏でるとこうなるのか!」という圧倒感に押されつつも、オーディエンスの初曲からの好反応は右肩上がりに上昇した。

 そして、「ふたりはサイコ」で滝はドラムを渡部宏生(Dr)(heaven in her arms / SZKN)にタッチし、ギタリスト・滝として演奏。エレクトリック弦楽器4本の強烈なバンドセットの音圧がフロア隅々までみっちりと覆い尽くす――。「GOHONG-ZONE」ではギターが各々のパートに分かれたトリプルギター特有のアンサンブルが炸裂し、コーラスではオーディエンスも一体となって大いに沸いた。

6人編成へ変化したキツネツキ“取り憑かれメンバー”

キツネツキ(撮影=西槇太一)

 色で表現したら白、水色、白銀色――そんな瑞々しい一服の清涼剤のようなインプロビゼーションの演奏のなか、リラックスムードでMCを走らせる菅原は、4人目の“取り憑かれメンバー”・東出真緒(Vn)(BIGMAMA)を召喚。紅一点の花が凛とした存在感、音として、ライブに花を咲かせる。

 4つ打ちビートが心地良い「てんぐです2019」をメロディアスに歌う菅原の自由で楽しそうな表情は、9mm Parabellum Bulletのライブで見せる勇姿とはまた別軸の姿だ。そして、意気揚々とギターを掲げ、ときには後頭部までギターを持ち上げ弾き倒す滝のクールで奔放なプレイ、ステージ所狭しと言わんばかりに移動しながらパフォーマンスする6人のメンバーは、“自由に楽しく”というモットーのキツネツキの在り方を、それこそ何かに取り憑かれたようにハツラツと音を飛び散らせていた。

 童謡カバー曲「ちいさい秋みつけた」では滝&東出の長尺のリードプレイが輝く――。 キツネツキの解釈する童謡は聴き所・見どころ満載で、聴き馴染みのある童謡に含まれる新たな側面に気付かせてくれた。キツネツキが“バンド”であるという感覚が最もストレートに感じたのは、「かぞえうた」でのテーマの強烈なユニゾンプレイだろうか。そしてあまりにも熱く燃え盛るような流れのなか、涼気漂うアンビエントサウンドから清々しいシューゲサウンドに変化する「It and moment」と、セットリストの彩り深さをたっぷりと魅せてくれた。

「キツネツキは自分達が生きて行くために必要」

キツネツキ(撮影=西槇太一)

 ライブも後半、「証城寺の狸囃子」では自由度満載なプレイのなかにもバンドとしての一体感を魅せ、「MONDAY NIGHT BEER RUN」から勢いをグイグイと上げつつ、キツネツキは様々なカラーのオリジナル楽曲から童謡カバーまで、多様なアプローチのなかでもバンドとしての音の塊をブレさせないライブを堪能させてくれた。

 菅原は「俺達がキツネツキをやっているのは、遊びのように見えるけど自分達が生きて行くために必要なのかなという風に思うんです」と、キツネツキの活動に対する矜持を言葉としてもオーディエンスへ示した。そして演奏された「まなつのなみだ2019」の和風のメロディを歌う菅原の歌声と、滝のギターと東出のヴァイオリンのハーモニーが美しく、爽涼に響き渡った――。

 そして、「四川省」をもって本編は終了したが、アンコールに応えて姿を表した6人のメンバーは更に3曲を披露してくれた。菅原は、「もうちょっと遊びましょう!」とオーディエンスへ伝え、「ケダモノダモノ2019」「C.C.Odoshi」と、ハイボルテージの演奏でキツネツキ初ワンマンライブを華麗に締めた。

 菅原と滝、そして4人の“取り憑かれメンバー”によるキツネツキのライブは、オリジナル曲をライブで別の生き物のように化けさせ、童謡カバー曲を新解釈の音楽に化けさせた。ライブの進行も、中盤まで変化し続けるという、“キツネツキ”というバンド名に沿った、コンセプチュアルなショーだったように思える。

キツネツキ(撮影=西槇太一)

 “取り憑かれメンバー”が変化していくというこのバンドのコンセプトで、今後どのような展開で聴き手を化かしてくれるのか、「化かされることで楽しませてくれる」という、ある種の新しい快感を覚えずにはいられない一夜だった。

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