Ivy to Fraudulent Gameがリリースした新曲「模様」は、自身3枚目のシングルでありながら初のアニメ主題歌。6月26日には“音源なし”リリックビデオが公開されたことでも話題を集めた。「模様」というタイトルにちなんでか、心理学の検査で使う“ロールシャッハテスト”のような模様が浮かび上がる映像の中を歌詞が淡々とスクロールしていくだけのリリックビデオは、楽曲の試聴が同時にできる従来の手法とは大幅に異なり、耳から入ってくる情報はメトロノームのような音だけ。このような取り組みにも象徴されるように、彼らの表現の特徴のひとつとして、歌詞のメッセージ性の高さを重視しているという点が挙げられる。ここでは代表曲のMVの中から、歌詞の美しさやメッセージ性の強さを映像によって更に印象的に彩っている3作を取り上げて紹介する。【五十嵐 文章】

「Memento Mori」

 今年1月にリリースされた、自身2枚目のシングル「Memento Mori」。リリース直前に、「模様」と同じく音源なしのリリックビデオが公開されたことで話題を集めたこの楽曲のMVは、Ivy to Fraudulent Gameとしては異彩を放つ作品となった。

 画面の右端に白抜きで字幕のように歌詞が表示された映像は、銭湯の湯船に浸かった寺口宣明(Gt&Vo)の姿から始まる。大島知起(Gt)は自宅のような場所で本に囲まれてあぐらをかいており、福島由也(Dr)は洗濯物がそよぐ屋上で煙草をふかせ、カワイリョウタロウ(Ba)は公演の片隅で漫画本を開いている。メンバー4人の日常の一瞬を切り取ったような生活感ある描写は、幻想的な世界観が特徴的なIvy to Fraudulent GameのMVとしては珍しい印象だ。

 MVの中で演奏シーンは一切なく、時折寺口の唇が口ずさむように動くだけ。歌を邪魔しないシンプルな演出によって、歌詞を表示した字幕の存在感が自然と際立ち、寺口の歌と共に歌詞の内容が伝わってきやすいのが印象的だ。奇をてらわない映像とメンバーのアンニュイでありながら自然体な姿が、「いつか死にゆく命の儚さを想うことで今生きていることの尊さを知る」という楽曲に込められた繊細なテーマを聴き手の心に優しく語りかけてくる作品だ。

「she see sea」

 “海”がモチーフの歌詞が印象的な、ライブでも高い人気を誇るバラード曲。MVは物語仕立ての映像で、寺口の歌声が登場人物のモノローグのように聴こえてくるほど映画的な描写が印象的だ。

 登場するのはひとりの女性と車いすの男性。男性は画家であるらしく、車いすに乗ったままキャンバスに絵筆を伸ばすが、絵が描けずに筆を落としてしまう。車いすを押され、海に辿り着いた男性は、そのまま海の中へ身を投げる。

 この楽曲の作詞を手掛けた福島は、歌詞の中で、時の流れによって記憶が薄れていくことへの悔しさや生きて時を過ごすことの根源的な苦しさを赤裸々に描いている。この狂おしい独白はMVに登場する男性と女性、どちらの心情を物語っているのか。冒頭と終盤で花束を手に海の前に佇み、暗い瞳で歌う寺口は何を象徴しているのか。哀しく美しい、謎めいた物語を紡いだ作品だ。

「革命」

 メジャー1stアルバム『回転する』のリードトラック「革命」のMVは、映像作家・番場秀一による作品。椎名林檎の「罪と罰」やBUMP OF CHIKENの「天体観測」など、有名楽曲のMVを多数手掛けている番場の作家性が存分に活かされた映像となっている。

 フィルム風のセピアな映像で映し出されるのは、緑の中をかけていく孤児のようなふたりの子供と少女の姿。決して恵まれた環境で生まれ育ったとは思えない子供たちだが、彼らは携帯電話のような機械を手にしている。その画面の中に映し出されるのは、異国の戦争の映像だ。その様子にリンクするように歌われるのは、<笑顔を筋肉が支えてる/と言った様な表情浮かべ/その場をしのいでも心は/憤怒の形相で僕を見てる>というワンフレーズ。見知らぬ異国の暴動の映像には、作詞を手掛けた福島が歌詞に込めた、自分の内心に存在する「不安」や「罵声」や「怒号」が投影されているようだ。

 廃墟のような建物の中で演奏するメンバーの姿も目を引く。自分自身を鼓舞するための音楽による「革命」が、世界を変える大きな「革命」へとつながっていくような希望が感じられる、ミニマルでありながら壮大な寓話のようなMVだ。

現実と幻想

 Ivy to Fraudulent Gameの楽曲の歌詞には、生きることへの根源的な苦悩、そしてそれを越えてゆきたいという前向きな渇望が表現されていることが多い。それを幻想的に彩るMVもまた、きちんとそのメッセージや詩情を汲み取り、暗黙の裡に雄弁にリスナーの目の前に映像の形で差し出しているようだ。

 最新曲「模様」の作詞を手掛けたのは寺口だ。彼がこのIvy to Fraudulent Gameとしての大きなメッセージをどのような形で表現しているのか、そして新たなMVはどのようにそのメッセージを汲み取ったのか。9月には新アルバムのリリースも控えている彼らの描く新たな物語を、目と耳を通してしかと受け止めたい。

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