エクスぺリメンタル・ソウルバンドのWONKが7月31日、5曲入りEP『Moon Dance』をリリースした。メンバーそれぞれがソウル、ジャズ、HIP HOP、ロックのフィールドで活動するプレイヤー/プロデューサー/エンジニアという異色なバンドである彼ら。今作は、後の作品の序章となるコンセプチュアルな盤とメンバーは語る。近年の音楽制作環境に触れつつ、今作のコンセプトについて、各曲の特色、WONKの制作手法から創作のモチベーション、インスピレーションの源流など、彼らの音楽スタイルである“エクスぺリメンタル・ソウル”を構築する要素を中心に話を聞いた。【取材=平吉賢治/撮影=木村陽仁】

ソウルにおいてのグルーヴの変化。“エクスぺリメンタル・ソウル”とは?

――WONKの“エクスぺリメンタル・ソウル”とは、具体的にどういった音楽なのでしょうか? 例えば“ネオソウル”だと、ディアンジェロ(米シンガーソングライター)などのアーティストを代表するクロスオーバーなソウルという感じですが。

長塚健斗 「自由度が高いソウル」というか、何でも新しいことに挑戦して行こうみたいなところと、「自由度の高い、心にグッとくる音楽をやるバンド」という感じです。それを“エクスぺリメンタル・ソウル”と言ってみようぜと始めたんです。でも気付いたら“フューチャーソウル”というのが出てきて(笑)。

長塚健斗

江﨑文武 そうそう。端的に言うと、2013年の結成時点ではネオソウルの次のムーブメントを示す具体的な用語がなかったというのが大きいと思っています。以降はジ・インターネットとかロバート・グラスパーとか、そのへんの潮流をまとめてフューチャーソウルと言うようになってきたなという印象なんです。

江﨑文武

――ソウルという音楽は60年代のソウルから現代までで、かなりリズムの面に変化があると思うのですが、その点はどう感じますか?

荒田洸 変化があるのはリズムの“ヨレ”だと思うんです。HIP HOPのドラムの、打ち込みのクオンタイズをしないリズムから独特なフィールが生まれて、それを更にディアンジェロなどのネオソウルと呼ばれる人達がもう少しはっきりとヨレを出したというか。打ち込みではなく、ドラムでヨレを出すような流れがあって。

荒田洸

 フューチャーソウルの場合は、そのヨレが更にはっきりした状態で、もっと打ち込みっぽいサウンドになったという印象を受けます。ヨレさせるのがネオソウルのひとつの作法だったと思うんですけど、最近はヨレてないのもフューチャーソウルと言われていて対義的になってきているなと思っています。基本的に後ろでローズ・ピアノの音がシャラ~ンと鳴ってたらフューチャーソウルなんじゃないかなという気もします(笑)。

江﨑文武 うん。チルと言われるものもフューチャーソウルに分類されていたりするよね。

――リズムのヨレ、グルーヴに関して、聴き手によって受け入れやすさや好みが分かれる気がしますが、その点についてはいかがでしょうか?

井上幹 そこは単純に流行りだと思います。2000年くらいのときはディアンジェロを筆頭に、人間味のあるズレたビートやサウンドがウケていたけど、それから20年くらい経って、それのより戻しが来ているというだけだと思うんです。HIP HOPで言うとトラップが流行りだして、それは完全に打ち込みベースのクオンタイズされたビートとベースが入っていて。バンドでも、人間がやっていてもクオンタイズされたようなカッチリしたものが最近流行っているだけであって、好みというよりは流行のより戻しかなという印象です。WONKの曲で言えばどっちの曲もあるし、どっちも好きなフィールがあるから両方もやっているという。

井上幹

――「Blue Moon」は特に独特なグルーヴですよね。

荒田洸 そうですね。それはヨレ方面の曲です。

――逆に、ヨレ方面のではない曲は?

井上幹 「Orange Mug」「Sweeter, More Bitter」はクオンタイズされたほうを意識してやっている曲です…かね?

荒田洸 「Orange Mug」はどっちか難しいですよね(笑)。実はかなり変なことをしているというか、バースの所は跳ねているんだけど、フックに入って跳ねないように、ハイハットの刻みを出来る限りイーブンに近い若干の跳ねみたいな感じにしているから、ストレートと言えるのかな?

江﨑文武 まあ、「Sweeter, More Bitter」が一番チャキっとはしているかと。グリッドで作った感はあるよね。

荒田洸 ハイハットも普通に16分で刻んで。確かにヨレがなくてはっきりしているのは「Sweeter, More Bitter」かもしれないです。

――「Sweeter, More Bitter」はベースラインが凄く格好良いしとっつきやすいし、印象的なベースラインです。

井上幹 ありがとうございます。

荒田洸 そこは割とこだわりました。「もっとキャッチーにできるんじゃない?」とか、そういう議論がありました。

江﨑文武 ベースラインのポップさにこだわりましたよね。

荒田洸 もう「ベースラインが全てだ」みたいな感じで。

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