3ピースバンドのThe Wisely Brothersが7月17日、2nd Full Album 『Captain Sad』をリリース。メンバーは真舘晴子(Gt.Vo)、和久利泉(Ba.Cho)、渡辺朱音(Dr.Cho)の3人組で昨年リリースされた1stアルバム『YAK』でメジャーデビュー。約1年5カ月振りとなった2ndアルバムは2曲を除いてセルフプロデュースで制作。アルバムにはライブでも既に披露されている「気球」やアナログEPとしてリリースされた「柔らかな」など全11曲を収録。悲しみを背負って前に進んでいく、そんな意志を強く感じさせてくれる1枚に仕上がった。インタビューでは産みの苦しみがあったと話す制作背景に迫るとともに、いま3人がそれぞれが考えるプレイヤーとしての目標について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

セルフプロデュースで苦しんだアルバム制作

真舘晴子

――今作は『Captain Sad』ということで、悲しみがテーマとなっていますが、なぜ悲しみにフォーカスされたのでしょうか。

真舘晴子 アルバムを通して、自分でも気づいてはいなかったんですけど、悲しみを思わせる言葉が沢山入っていたんです。それで、どんな人も日々悲しみを感じているんじゃないかなと思いました。自分もそうだなと思いましたし、この悲しみをこれからに活かせたらいいなと思ったんです。その気持ちは以前からあって、タイトルを考える時にアルバムを通して聴いていたら、「私たちは悲しみを変えようとしているんじゃないか」と思えました。悲しみを背負って前に進んでいく曲が多かったんです。

――制作中にも悲しい出来事があったり?

真舘晴子 制作に関しては悲しみというよりも苦しみがありました。今回は作りたいのに出来ない、産みの苦しみです。上手くいかなくて、メンバー同士でむしゃくしゃしてしまう時もありました。

和久利泉 曲を作る時は私たちも意見を出すので、強い言葉になってしまうこともあるんです…。でも、それを普段の生活に引きずることはないんですけど。

真舘晴子 曲を作っている時はうまく接することが出来ない時もありますし、日常で人と接する時にも「今の悲しかったな」と思うことはあります。そういうものって意外とすごく残ったり、逆にすぐなくなったり、両方あると思うんです。人のことばや接し方から生まれた悲しみは自分はこういう気持ちにしたくないなという、次の人に接するための明るさでもあるのかもしれないなと思って、次の自分に繋がっていく悲しみなのかも知れないと思いました。

――すごくポジティブな悲しみですよね。ただの悲しみではなく、タイトルの“Captain”という言葉がすごく活きているなと思いました。さて、制作は大変だったみたいですがそれぞれ今作で大変だったところどこでしょうか。

和久利泉 今回は「気球」と「Horses/馬たち」以外はセルフプロデュースなんです。前作の『YAK』は片寄(明人)さんのプロデュースで、マスタリングまでイメージを提案して頂いて形にしていったんですけど、今回はその部分まで自分たちでイメージを伝えていかなければいけなかったんです。作るまでも苦しかったんですけど、録り終わってからもまだ大変で、想像はある程度していたんですけど…。ミックスでボーカルのエフェクトだったり、ちょっとした効果で曲の印象が変わるので、そこまでちゃんと関わらないといけないんだなと改めて思いました。

真舘晴子 以前は私たちが要望を出す前にミックスを作ってもらうことも多くて、それは、私たち以外、第3者の見え方を提示してもらうことになるんです。その時は自分たちの明確なイメージは実はあまりなくて、ある程度完成したものに対して微調整してもらう感じでした。でも、今回気づいたことは、実は私たちもイメージは最初からあったんだなということなんです。それは、大胆なエフェクトだったり、自分たちのイメージを提案できたので、曲が大きく動いていった感覚があって、それを知れたのは大きかったなと思います。

――周りの人が提案できないことにもセルフプロデュースなら出来てしまうと。

和久利泉 そうなんです。それらは片寄さんにプロデュースして頂いた時の経験がすごく活きています。

真舘晴子 片寄さんも大胆にグイッと行かれる方でしたから。前作はそれを外側からやってくださって、私たちの曲がこういう風にもなれるんだとわかったので、片寄さんのおかげで振り幅がすごく広がったと感じています。

――朱音さんはいかがでしたか。

渡辺朱音 今回2曲のプロデュースをお願いしたDadaDのShigekuniさんに、制作中の他の曲を聴いてもらえる機会がありました。その感想をもらったときに、「それぞれがその曲に合う一番かっこいいフレーズを持ってくれば良いんだよ」というお話をしてくださったんです。その時は「そうだな」と思ったんですけど、改めて考えるとそれってすごく難しいなと感じて。私はドラムなのでフレーズという概念があまりなくて、それをドラムでやるということはどういうことなんだろうと考えました。

――確かにドラムは打楽器なのでフレーズというのは、また解釈が変わってきそうですね。

渡辺朱音 そうなんです。でも、考えているだけでは全然出てこなくて…。今まで考えてこなかったところを、今作はそれぞれ苦しんで考えたと思います。その中でLogic (レコーディングソフト)というパソコンのソフトで、3人の音を視覚的にも確認しました。それをしたことで、3人の楽器への関わり方みたいなものが具体的にもっと見えるようになって、自分の立ち位置や存在感みたいなものを各々考えたサウンドに仕上がったと思います。すごく難しかったんですけど、新しい発見にも繋がりました。ここまで1曲に対して細かく考えたのは初めてだったかも知れません。

和久利泉 今回はそれぞれの音を一番聴いたと思います。今まではスタジオで合わせることが多かったので、細かいところよりも大きく見て、気持ち悪いところがあったら、そこを直すみたいな感じだったので。

――そういえば、過去のインタビューでコードの概念がなかったことから、不協和音が多かったとお話されていたのですが、流石に今はそれはなくなりましたか?

和久利泉 今でもたまにあります(笑)。でも、敢えて外した曲もあります。今作だと「イルカの背中」は沢山外しました(笑)。この曲は意を決してギターがワンコードで進行するという曲になったので、逆にベースが動こうと思いました。その中でただ動くだけではなくて、外した音も入れようと思ったんです。

――この曲はイナタさもあり、好きな曲なんです。その中でタイトルもすごく良いなと。なぜこのタイトルになったんですか。

真舘晴子 テーマは最初の頃から決まっていたんですけど、なかなか歌詞に落とし込むことが出来なかったんです。夜の光をテーマにした曲なんですけど、寝る頃の時間になると窓から夜の光が入ってきて、その光は私の中でちょっと青い感じで、それがすごくキレイだなと思って。海でイルカがジャンプした時に、イルカの背中が光る感じも一緒なんじゃないかなと思いました。歌詞にイルカは登場しないんですけど、どうしても「イルカの背中」をタイトルにしたくなってしまったんです(笑)。

――夜の空とイルカというのは素敵ですね。

真舘晴子 ありがとうございます。今考えると最後に収録された「Horses/馬たち」でも<背中のせてどこか遠くに>と書いたんですけど、今回は担いでいくぞ感が強いのかなと今思いました(笑)。

――背中って物語るとも言いますし、頼もしいイメージもあって、希望につながる感覚もありますからね。タイトルと言えば、「はなればなれピーポーズ 」など敢えて平仮名にしている曲も多いですよね。

真舘晴子 漢字にしてしまうとゴツく感じてしまったので、平仮名にしました。私は平仮名の方が絵のような感じがして、好きなんです。なので、歌詞でも敢えて漢字を使わずに平仮名にしているところもあるんです。それは曲によって考えます。

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