俳優・大森南朋率いるロックバンド「月に吠える。」のワンマン・ライブ『歌舞伎町インシデント 月に吠える。新宿LOFTで吠える!>が5月31日、新宿LOFTでおこなわれた。バンド結成5周年を迎えたその日に、大森が少年時代から憧れていたという新宿LOFTでの本公演は、彼らの重要なひとつの到達点であり通過点であることを示した熱い一夜となった。【文=上田優子】

月に吠える。(撮影=三浦憲治)

撮影=三浦憲治

 客電が落ちると、ステージ上のスクリーンには結成5周年を総括すべくバンドのドキュメンタリー映像からスタート。オープニングSEへと続きスクリーンが上がると、壇上に大森南朋(Vo,G)塚本史朗(G)長野典二(B)山崎潤(Dr)の姿が現れM-1「ワンダートレイン」を披露、意表を突いたメロウ・チューンからの幕開けは、彼らがこれまでの道程と今この瞬間を噛みしめるかのように、少し感傷的なロードムービーを観ている感覚だ。ところが曲が終わるや否や、大森が「ようこそいらっしゃいました!1曲目はちょっと気取ってみました!」とおどけてみせる。M-2「空蝉」はブルージーかつダウナーなロックで落とし込み、大森は気怠けなアティチュードの中にも、間奏では思わず満面の笑みがこぼれ”ロックの聖地”での念願のステージが心底楽しそうだ。もはやおなじみのきわどい発言が飛び出すMCの後はM-3「世田谷NERVOUS BREAKDOWN」、キャッチーで軽快なポップ・ロックは、サビのオーディエンスとのキメもバッチリにヒートアップし、M-4「月に吠える。」はサイケデリックなモードが場内を染め、変拍子のリズムが聴衆の身体を揺らさずにはいられない。メンバーのソロ・パートの見せ場も冴えわたる。打って変わってM-5「ブルースにとりつかれたまま」、M-6「ただただ…」とストレートでメロディアスなレパートリーを繰り広げ、緩急自在に勢い任せで突っ走らないのが、“ミドルエイジのロックバンド”の余裕といったところか。かと思えば、M-7「恋にバカで」は月に吠える。流のファンクネスでグルーヴィーにフロアを煽り、M-8「ネクストマン」はドラマー・山崎がボーカルを務め、とびきりポップでアップテンポのノリの良さはまるでフレッシュなビートバンドを彷彿とさせ、なかなか予測不能な展開が実に小気味よい。

月に吠える。(撮影=三浦憲治)

撮影=三浦憲治

 MCをはさみ、大森がアコースティック・ギターを手にするとM-9「西のインディアン」を披露。ラフでポップにハネるリズムで和やかなムードが漂うも、曲中でボーカルのタイミングをトチってしまうアクシデントにいたく反省する大森。気持ちを切り替え、次曲はM-10「だってこんな好きなんだからしょうがない」、サビでは大森が楽曲タイトルのフレーズを熱くリフレインし、感情を武骨にむき出しにさらけ出す様には心を揺さぶられ思わず息を呑む。“平成最後のヒットソングで超大ヒットドラマのエンディング・テーマ(笑)”との前置きからのM-11「夜の雲」、ほぼアンプラグドな編成で奏でるミディアム・バラードは大森のぬくもり溢れる声とあいまって、束の間の心温まる澄み切った空気感を生みフロアを包み込んでいく。

月に吠える。(撮影=三浦憲治)

撮影=三浦憲治

 続いてゲスト・コーナーへ。大森が高まる興奮を抑えつつ「俺たちの青春。俺はこの人の歌を総武線に乗ってカセットテープのウォークマンで聴いて三鷹まで通っていました」と語り、JUN SKY WALKER(S)の宮田和弥が登場。大森は終始、謙虚過ぎるほどリスペクトの姿勢を貫きながらも、M-12「ブルースごっこ」はあくまで宮田と対等に濃密なリアル・ブルースを繰り広げ、なんと美しきミュージシャン・シップだろうか。M-13「すてきな夜空」、ジュンスカの名曲のコラボレートではすっかりロックキッズに舞い戻っている大森、ミラーボールが煌めく中、宮田と共にサビをユニゾンで歌い息の合ったパフォーマンスを展開し、二人で今日イチのハイジャンプを決めて夢の共演を締めくくった。

月に吠える。(撮影=三浦憲治)

撮影=三浦憲治

 「いやぁ、ハシャいだ…」と放心状態の大森、気を取り直して後半戦へ突入。M-14「気まぐれジョニー」、ジョニー・サンダースとお揃いのギターを携え、彼らの中でも硬派なミディアム・ナンバーは、演奏を重ねる毎にクールな中にも凄みと気迫が増す一方だ。一転、ここからが疾風怒涛のロックンロール連投開始だ。M-15「I wanna be your rock’n roll star」、M-16「ロマンチックブギー」、M-17「狼、走る」、M-18「ズリぃな」と息もつかせぬ攻めのパフォーマンスで一気に畳みかけ、月に吠える。の本領発揮と言わんばかりの疾走感に会場のボルテージは最高潮に。一気呵成の爆走の後、「みんなに内緒にしてたけど、今のが最後の曲でした!」と大森が叫び聴衆が面食らう中、本編終了となった。

撮影=三浦憲治

撮影=三浦憲治

 「ただいま!」の一言と共にメンバーが再登場しアンコールへ。大森が軽妙なボックス・ステップと共にスライド・ホイッスルを茶目っ気を交えて披露しながらEn-1「夢の中」、痛快なスカ・ナンバーが再びフロアを縦ノリに揺らす。そしてメンバー各々よりこのライブへの感謝を述べるMCの後、「オヤジの小言みたいな曲です」とオーラスを飾るのはEn-2「オールドでヤングなロックンロール」、このバンドを象徴するにふさわしいタイトルを冠したフォーキー・ロックは、彼らが着実に積み重ねてきた年月と、今なお転がり続ける彼らの音楽への熱い想いが塊となって聴衆の心に全身全霊で投げ掛けていく。最後に大森が歌詞にちなんで「皆さんのおかげで”生きた心地”ができました!」の言葉を観客に向け、大団円で幕を閉じた。

撮影=三浦憲治

撮影=三浦憲治

 以前の彼らから溢れ出ていた“ロックの初期衝動”から、新たなフェーズへの一歩を感じさせた5周年ライブ。“I wanna be your rock’n roll star”と歌う彼らが、ロックに焦がれた少年の頃からの憧れの場所で、れっきとしたロックンロール・スターになった日、と言っても過言ではないだろう。“役者がやっている音楽”というフィルターは、彼らのステージを目の当たりにすれば何の意味もない。この先、彼らはどんな場所、どんな景色の中でロックンロール・スターであり続けるだろうか。ミドルエイジの星、月に吠える。は、まだまだ天井知らずの快進撃を見せてくれそうだ。

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