LOVE PSYCHEDELICOが5月26日に、神奈川・LANDMARK HALLで全国18か所20公演の全国ツアー『LOVE PSYCHEDELICO Premium Acoustic Live “TWO OF US”Tour 2019』の幕を開けた。配信アルバムおよびBlu-rayでリリースされたアコースティック作品『“TWO OF US”Acoustic Session Recording at VICTOR STUDIO 302』からの楽曲を中心に、アコースティックギターだけでなく、マンドリンやリズムボックスなど様々な楽器を駆使しながら、たった二人でステージを展開。「Last Smile」や「Your Song」など代表曲もオリジナルとは違ったアレンジで演奏して、音楽ファンをうならせた。※ネタバレあり【取材=榑林史章】

名曲を躍動感溢れるアコースティック演奏で

KUMI(撮影=Yosuke Torii)

 LOVE PSYCHEDELICOがツアーを行うのは2年ぶりで、2人だけでツアーを回ることと、2014年から東京を中心に限定で行われていたアコースティックライブをツアーとして行うのも、今回が初めてとのこと。「KUMIさんはまだ出産して間もないし、アコースティックで2〜3本ならいいよねって、最初は話していて。気がついたら、全20本になっていました」と、本ツアーを開催することになった経緯を、笑いながら説明したNAOKI(G)。

 「まずはこの曲を聴いてください」というKUMI(Vo)の言葉をきっかけに、アルバム『LOVE YOUR LOVE』(2017)に収録の「1 2 3」でライブは始まった。アコースティックギターでカントリー調のリズムを奏で、そのキラキラとした美しい響きと共に、KUMIの明るさのある歌声が会場に広がる。観客は、一気にアコースティックサウンドの世界へと引き込まれていった。

 「Last Smile」では、タイトルを言っただけで歓声が上がった。寂しげな音色のアコギが、しっとりとしたムードの中に響き渡る。曲が本来持っている寂しげで渇いた雰囲気が、よりフィーチャリングされたアレンジだ。言葉を畳みかけるように歌うKUMIのボーカルが、スモーキーさを醸し出し、どこかダークな雰囲気のライティングも楽曲の世界観を引き立てた。

 KUMIのアコギとNAOKIのエレアコによって、ブルージーな雰囲気で聴かせた「裸の王様」。重さのある雰囲気の楽曲の中に前向きなメロディが広がる様子は、ロンドンの曇り空に光が差し込んでいくような雰囲気だ。NAOKIのギターソロも聴きどころで、チョーキングを駆使した叙情的なフレーズを奏でるギターソロに大きな歓声と拍手が沸き起こった。

 終盤には「みなさんと私たちを繋いでくれた、きっかけになった曲かもしれません」と、紹介して「Your Song」を披露すると、会場には大きな手拍子が広がる。KUMIが「カモン!」と呼びかけると、目の前で繰り広げられる躍動感のある演奏に感化されたように、観客もサビや合いの手を一緒に歌ってステージと客席が一つになった。

この日のためにスピーカーを製作

NAOKI(撮影=Yosuke Torii)

 この日はアコースティックギターだけでなく、マンドリンやブズーキ、ラップスティールといった、あまり馴染みのない民族楽器も使用された。二人による解説も楽しく、曲によっては「この曲はダドガドチューニングというチューニング方法を使っていて、レッド・ツェッペリンの『カシミール』という曲を弾いている時に思いついたんです」など、楽曲にまつわるエピソードでも楽しませてくれた。民族楽器の音色はとてもエキゾチックで、古い洋館がたくさん残る異国情緒漂う横浜という土地にもぴったりだ。観客もLOVE PSYCHEDELICOの音楽のベースになっている、60〜70年代のサイケデリックな時代へと思いを馳せながら、極上のサウンドに酔いしれた。

 また中盤には、リズムボックスも登場した。ローランドの「リズムアレンジャーTR-66」というマニア垂涎のビンテージの機材で、NAOKIがオークションで落札したとのこと。「でも5分以上使っていると、テンポが変わってしまうんだよね」と、アナログ機材ならではの不便さに文句を言いながら、表情は嬉しそうなNAOKI。アナログ機材の良さを熟知している大人の音楽マニアの観客も、「うんうん。分かるよ」といった様子で、リズムボックスを調整する二人をニコニコしながら見守っていた。

「どのくらい?」「このくらいがいいかな?」など、2人で相談しながらテンポを決めている様子は、スタジオでのレコーディングはきっとこんな感じなんじゃないかと想像させてくれた。最新の作品『“TWO OF US”Acoustic Session Recording at VICTOR STUDIO 302』も、「このツアーのための練習をやっている時に、どうせならこのまま録っちゃわない? というノリでレコーディングしたものだった」と話す。アドリブ満載で展開されていくステージは、まさしくスタジオセッションで、次に何が出てくるか分からない“生感”が、実にワクワクさせてくれた。

 こだわりは楽器だけではない。ステージに並ぶスピーカー14台もそうで、この日のためにNAOKI自らが設計・開発に携わったと言う。「最新の映画館の日本一の所よりも、スペックは上です。フルで音を出したら、隣のランドマークタワーから苦情がくるくらいのハイスペックです」と、ドヤ顔のNAOKI。このスピーカーからは、開演前からローリング・ストーンズやマーク・ボラン、デヴィッド・ボウイなどの洋楽が大音量で流れ、それらの楽曲もNAOKIがセレクトしたそう。実は会場に入った瞬間から、二人のもてなしが始まっていたのだった。

 既存の楽曲を単にアコースティックギターで演奏するのではなく、アコースティックで聴くことに重点を置いてアレンジを再構築したライブ。その演奏を最高の状態で楽しんでもらうために、スピーカーまで作ってしまったバイタリティには驚きだ。このライブを例えるなら、新鮮な刺身をより美味しくいただくために、炙ったり〆たり漬けにするなど、いくつもの手間を加えて提供される、江戸前寿司みたいなものかもしれない。

 このツアーは9月まで開催される。親しみやすさがありながら、実に贅沢なことこの上ない極上の音楽空間を体験して欲しい。

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