SING LIKE TALKING「人も時代も常にアップデートされていく」変わらぬ音楽への情熱
INTERVIEW

SING LIKE TALKING「人も時代も常にアップデートされていく」変わらぬ音楽への情熱


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年05月29日

読了時間:約16分

音楽自体の心地良さは音とボーカルのみで表現したい

――「Spiral」の歌詞は全て日本語で書かれていて、でもタイトルは英語というところが面白いなと感じました。

 まず、音楽自体の心地良さは音とボーカルのみで表現したいと思い、その上でメッセージを骨太にしっかり伝えたかったので、全部日本語で書いて欲しいと僕から千章にお願いしました。限りない絶望からの希望というところで、音感メインのフレージングで軽快に収まりたくなかったので。原作を読んだ時になぜ「Spiral」かというのが大きなポイントになっていると感じました。単純に螺旋という意味だけではなくて、その螺旋から抜け出せないとしても、最後に希望ということを歌うにしても、その過程に複雑に巡るSpiralは、タイトルとしても深さを伝えてくれると思いました。六道輪廻じゃないですけど、いずれそのスパイラルから抜け出せるんだということを象徴するためと、でも「簡単には抜け出せないよ」ということもあるかもしれません。

――竹善さんの中では脱出することは不可能に近いイメージもあるんですね。

 100人いたら99人は抜け出せないのが現実です。中小企業がこれだけ潰れていく世の中じゃないですか? でも、ドラマもそうですが、現実でも彼らは生き残るために知性と愛情とチームワーク、全てを使い切って戦っていくわけです。最初、「わかりやすくサブタイトルを付けようか」とも話したんですけど、いらないという判断になりました。歌詞を聴いてもらってわかってもらえれば良いかなと。あとはドラマのタイトルが『スパイラル~町工場の奇跡~』だから「Spiral」だと思った人も、それはそれでいいんじゃないかなと思いました。それで入ってきても、最後には意図が伝わるんじゃないかなと思っています。

――人によって刺さるワードが必ずあるなと感じました。

 千章は「歌詞はそれで良い」といつも言っていますね。千章は昔から1年に何十冊と本を読んでいるんですけど、歌詞は文章とは違うもので、音に乗ってその中で2つ3つでも印象に残れば、そこから全体を捉えて行くものだと話しています。僕らもそうやって音楽を聴いてきたので、同意するところです。歌はそれで良いと思うんです。

――それで腑に落ちたところがあったのですが、頂いた歌詞にスペースがないんです。普通はAメロやBメロのところで改行されているのが通常なのですが、節はあっても全部繋がっているのは、藤田さんのこだわりなんですね。

 そうなんです。今回ディレクターから「歌詞の改行どうします?」と聞かれたんですけど、「今回はないです」と困らせていましたから(笑)。「Spiral」はAメロ、Bメロといった普通のポップスの作り方から逸脱しているんです。何となくメロディが盛り上がっていってサビに行くという感じなので、一つの塊として捉えて欲しい、そういうイメージで聴いて欲しいというのが、千章の中であったみたいです。僕はそこまでのこだわりはなかったんですけどね。改行した方が見やすいんじゃないのって(笑)。

――最初聴いた時に洋楽的アプローチだなとは感じました。

 洋楽は漢字もなくてアルファベットの世界だけで構築しているので、改行したりしなかったり、ある単語だけ改行したりとかするので、その影響はあるんでしょうね。

――竹善さんはこういうものを歌われる時はどのような気持ちで臨まれるんですか。

 僕は基本的には「ここからサビだ」とかそういったことは考えて歌わないです。流れで歌っていくので、セクションがハッキリしている曲だったとしてもあまり意識はしないです。千章の歌詞の表現は、今回はひと塊りのような見せ方ですけど、頭の中で僕は全曲いつもこんな感じなんです。

――そうだったんですね。さて、今回レコーディングで新しい試みはありましたか。

 近年はミックスダウンをイギリスのグラスゴーにいるカラム・マルコムにお願いしていました。でも、今回初めて自分たちで全部やったんです。というのも、いつもはデータのやり取りでミックスしてもらっていたんですけど、今回は細かいところまでイメージが出来上がっていたので、それを詰めるには僕らもイギリスに行かなきゃいけないなと思ったんです。でもそれは現実的ではなくて。その時に千章のレコーディング技術のスキルが、とても上がっているということを、今回のリズムを録っている時に感じていたので、千章を中心として日本のエンジニアとミックスしても面白いんじゃないかなと思ったんです。

――もしかして、マイクを立てるところからですか。

佐藤竹善

 そうです。ドラムのマイクは10本以上立てていましたね。それもあって、ドラムとベースにはすごくこだわりました。音に重厚感が出ないと「Spiral」の世界観にはならないと思って、音に関しては僕からのリクエストでした。これからは曲によっては自分たちでやる事もあると思います。もちろんカラムの個性も好きなので、これからもやってもらいます。6月12日にリリースされる映像『SING LIKE TALKING 30th Anniversary Live Amusement Pocket “FESTIVE”Live at 東京国際フォーラム 9.29.2018』は彼の手によるものですから。

――また可能性が広がってこらからも楽しみです。さて、リリース後はライブもあります。

 6月9日にAwesome City Clubと『Soundcore by ANKER × Universal Music Special Live』というライブをします。彼らは1stの頃から僕がファンなんです。今のシティポップと呼ばれるサウンドを作っている人たちが好きなんですよ。4年ぐらい前に対談をしたことがあるんですけど、世代は違えど音に対しての想いとか共通する事も多くて、凄く面白かった。その中で今またSuchmosやNulbarich、小袋(成彬)くんとか出てきて、そういう人達と同じ時間軸を共有することで、感じられる何かがあったら良いなといつも思っています。

――今の若い方の音楽は竹善さんから見てどのように映っていますか。

 非常にセンスが良いですよね。

――ということは未来は明るいですね。

 少なくともアーティストに関しては明るいです。業界自体がそれに対応出来て行くのかどうかという不安はありますけど、そこも世代交代していきます。サブスクやDAWもお手軽になると、ビジネス事情でアーティストが振り回される時代はもっと減ってくると思います。自由に好きなことをやれる、昔はニッチなことをするのが大変な時代でしたけど、今はもう関係ないので、結果的には良くなって行くと思います。

――とにかくテクノロジーの進化が凄いですよね。

 その経過途中でみんなメゲないように頑張って欲しいですね。僕らの世代に関してはファンに支えられている事に、あぐらをかいたら、成長はないのではと常に意識しています。なので、歳を取っても頑張って前線にいるということと、常に若い人達の音楽が素晴らしいと思える感覚を自分の中で共有していないと「その後ろを追いかけたい」といった環境になっていかないと思います。レコード会社でも映画でもテレビ、ラジオでも若い人たちが、いずれ責任ある立場で、様々な現場でモノづくりをしていくように、人も時代も常にアップデートされていくので、だからこそ「いいものを作る」という概念を、より高い次元に見据えたいですね。

――そう考えて頂けていることが嬉しいです。

 僕らもそうしてもらっていましたからね。当時、異端と言われていたスタッフの方が一生懸命僕らを支えてくれて、時代がある時ひっくり返るみたいなね。それはドラマの『スパイラル~町工場の奇跡~』と一緒ですよ(笑)。

(おわり)

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