歌詞制作ではお客さんの顔が浮かぶようになってきた

NakamuraEmi

――さて、歌詞の細かいところを掘り下げていきたいと思います。あまりサビとかそういう感覚で制作されていないと以前にも仰っていたと思いますが、サビにあたる<神様が与えた>という言葉が出てきた経緯はどんなところだったのでしょうか。

 今作は女性をテーマにした『Vol.6』と繋がっていて、「女の友情」や「いつかお母さんになれたら 」という曲と似ているところもあって、女性の難しさやめんどくささとか、「何でこうなるんだろう?」と思った答えが母性だったんです。ドラマもそうだったんですけど、母性というところに結びつくことが自分の中の解決として一つありました。女性として生まれてくることは、自分では選べないけど、父や母から生まれてきた私は女性で、それは「女性としてどう生きるの?」という神様が与えてくれたものだと思ったからなんです。

――男性か女性、どちらに生まれてくるかはわかりませんから、確かに神様という言葉が出てきたのも自然ですね。

 大きな話になってしまうんですけど(笑)。自分もその奇跡のひとつとして生まれてきたんだなと。

――全てが奇跡的ですよね。歌詞の中で<美徳>という言葉も出てきていて、個人的に最近あまり見ない言葉だなと感じました。Emiさんの中で言葉というのは、今どのように感じていますか。

 どんどん新しい言葉も生まれてくる中で、正しい言葉というのを意識して書いているところはあります。自分も誤字脱字も多いのであれなんですけど、「ら抜き言葉」とかにならないように気をつけたり。でも、若い方達がこれが正解なんだと思ってもらえるような、昔からある文法というものを使おうと気をつけています。あと、歌詞の場合、実際に歌う時と歌詞の表記を変えることがあります。例えば歌う時は敢えて「ら抜き言葉」にして、歌詞ではちゃんと「ら」を入れたりとかしています。

――そこはわかった上での敢えてですね。最近、歌詞の書き方とか変化した部分はありますか。

 ライブで私の歌を聴いて泣いてくれるお客さんがいます。それもあって、自分の事を歌詞で書いていても、どこかお客さんの顔が浮かぶようになってきたというのがあります。「あの人に伝わるようにするにはどうしたらいいのか」と考えたりするようになったので、自分だけという殻からは少し出れるようになったのかなと感じています。人に頼ることが出来るようになったのも前作から続いていて、また今作でもそうやって、色んな人に頼りながら出来たなと思っています。

――それは大きな変化だと思います。あと、流石だなと思ったのが、サビの母音が“あ”で構成されているところなんです。こうする事で音に広がりが出ると聞いたことがあって、Emiさんも意図的にそれを選んだのかなと。

 そうなんですね。全然気にしてませんでした。そういえば最近歌っていて、「バカか私は」とか歌いやすいなと感じていて、あ行はお行が多い曲よりも歌いやすいというのは思っていました。でも、たぶん私は歌いづらいと思ったとしても、言葉の意味を優先して選んでしまうタイプだと思います。

――内容優先なんですね。また面白いなと思ったのが、冒頭で<この人は私を幸せにはしてくれない>と歌っていて、最後に<私を幸せにできるのは 世にも恐ろしいことに ややこしい私です>と回答を出しているのが興味深かったです。その<ややこしい私>とは?

 自分自身は頑張ってやっているつもりだったりするけど、目の前にいる人のせいにしてしまうこともいっぱいあると思います。この人たちのせいじゃないということは、自分のなかで答えは出ていて、ドラマを見たときにわかっていてもやっぱり周りのせいにしてしまって…。目の前に現れている人も自分なんだなとわかっていても、毎日頑張ったり、素敵な女性になるために色んなことを我慢したり、その我慢が美しいと思ってしまったり、それを一人でやっていくうちに、どんどん面倒くさい自分になっていってしまって。もう、素直に「それは無理」と言えてしまえれば良いんですけど。

――頑張っている自分を美化してしまう。

 自分と戦い過ぎてややこしくなっていってしまっているというものなんです。年齢を重ねていけばいくほど、色んな事がわかる、わかっているからどんどんややこしくなっていっているんだなと感じた中で出てきた言葉でした。

――ちなみにEmiさんは「それは無理」と言えますか?

 そういう風になれたら良いなと思ってはいるんですけど、やっぱり空気を読んでしまいますね(笑)。自分を隠してしまうことは良いわけではないし、バシッと言えたら良いんですけど、特に仕事だとそれが全てプラスに働くわけでもないので難しいです。歳をとると上手く誤魔化していってしまうんですけど、誤魔化さずに生きていけたら格好いいなとは思っています。

――社会で生きていくための永遠のテーマですよね。さて、令和に入りましたけど、Emiさんは時代というものは意識されていましたか。

 それが全然気にしていなかったんです。ちょうど平成最後の日にライブをやらせて頂く機会があって、その後メンバーみんなで話したんですけど、平成に変わる時はバタバタしていたけど、切り替わるということを準備するというのは初めての事じゃないですか。それもあって改めて平成を振り返ってみて、戦争がなかった時代だったと思うと、凄く平和な時代を生きてきたからこそ、自分たちがやりたい仕事が出来ているとライブを締めくくったり、そして、令和最初のライブをやった時にすごく幸せな時代にいさせてもらっているんだなと思いました。

――そのタイミングで活動していく中で、意識するようになってしまったんですね。

 そうなんです。切り替わる大事な時期に私のライブに来てくださったりして、「令和一発目だから岐阜まで来ちゃったよ」といった声を聞くと、時代が切り替わる生活の一部に、自分の音楽があると思うとすごく光栄なことだなと思いました。すごく嬉しかったです。

――新しい一歩を踏み出せますよね。気が早いですけど、新時代に突入したことで、Emiさんも新しいアルバムへの構想も少しずつ出てきたりしてますか。

 う〜ん、アルバムというよりは、今自分が生み出せるモノは何なのかなと、今の生活を見ながら考えていて、そのなかで言葉集めをしたりしています。「ばけもの」は『Vol.6』が発売される前に制作に取り掛かっていたこともあり、女性というテーマを引き継いでいたので、次にどんなものが出てくるのか楽しみです。まずは今のツアーを1本1本頑張りたいと思います。

(おわり)

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