子供でもない、大人でもない。等身大で描いた曲を、彼女は同世代の人たちに寄り添うかのように優しい音色を立てて歌う。16歳のシンガーソングライター、原田珠々華。2018年に解散したアイドルグループ・アイドルネッサンスのメンバーだった。「アイドルグループをやってもいつかは卒業する。そこに儚さを感じて…」。そう思い決めたシンガーソングライターの道。当初は不安もあった。しかし今は自信をもって歌っている。若い世代に寄り添う音楽を目指しているという彼女の思いを聞いた。【取材・撮影=木村陽仁】

いつかは卒業…そこに儚さ

原田珠々華

原田珠々華

 「私も含めて若い人たちは、周りと比べてしまい自己嫌悪になっていると思うんです。でもそれは周りには分からない悩み。そういう人たちと思いを共有したい。皆同じだよ、大丈夫だよと伝えたい。寄り添いたい。そうした思いを曲にも込めたい」

 原田珠々華、16歳。アイドルグループとして活動していた彼女は今、シンガーソングライターとして活動する。

 会議室の一室、白色のテーブルに手を置き、静かに質問に答える。時折笑みを浮かべる。本人曰く社交的な方ではない。ただ、表情には見せないが、言葉の端々にしっかりとした芯を感じる。今の自分が何をするべきかを常に考え、自問自答している。そうして作られる等身大の曲には静かな力がある。

 「アイドルネッサンスは歌を大事にしているグループでした。解散で希望は失って…」

 2018年2月に解散したアイドルネッサンス。それまで候補生だった原田は2016年に正式加入した。当時、中学2年生だった。しかし、わずか2年でその活動を終えることになった。再びアイドル グループで活動するという道もあったはずだ。しかし、彼女はシンガーソングライターの道を選んだ。

 「アイドルグループをやってもいつかは卒業する。そこに儚さを感じて…」

 小学6年生の時にギターに触れた。本格的に始めたのは中学3年生の時だった。アイドルネッサンス時代にはSNSを通じて弾き語りを披露したこともあった。グループが解散した年の6月、TOWER RECORDS初の所属アーティストとして活動を再開した。アコースティックを弾き語ることが本業になった。「やればやるほど難しさを覚えて…」。当時は苦しみもあった。

 「アイドルは決してメンタルは強くないですよ」

 アイドル時代、彼女を支えたのはファン、そしてメンバーだった。ひとりで戦うことに不安もある。

 「ひとりになったことで寂しさもありました。ひとりでやって気が付くのは、メンバーの存在がパフォーマンスにも繋がっていたんだということ。見られているものは全部自分への評価にもなりますし、だから、もっと頑張らないといけないと自分を追い込んでいます。だけど正直、苦しい」

 しかし、そうした葛藤はシンガーソングライターには必要な体験だ。

 「苦しい感情に対して、ネガティブには捉えていないです。むしろそういう感情がなければ曲は作れないと思っています。ネガティブな要素もポジティブになれる。一言で変われる。マイナスの言葉を使ったらメジャーコードを使用したり。最初はネガティブだったけど書き出していったら未来へのポジティブな曲になっていることもあります」

 彼女にとって曲作りは、自分の考えを整理するためでもあるという。

 「歌詞そのものは計算して書いていなくて、思ったことをありのままに書いていったら考えがまとまっていて、嫌なことがあったとしても、曲になったら前向きなものになっています。たぶん曲を作る作業で消化しているんだと思います」

アイドルグループとして活動していた面影はなく

原田珠々華

 ギターを弾き語るその声、その姿にアイドルグループとして活動していた面影はない。しかし、色眼鏡で見られることもある。しかし、彼女は毅然としている。

 「私の耳には入ってこないけど、そういう人はいると思う。でも根本的にやっている音楽は一緒で、見せ方が音楽なのか、それとも自分自身も売り込んでいくのかの違い。どう捉えてもらうか、 受け取り方は自由だと思います」

 彼女をサポートするのは 、元The Cigavettesのメンバーで、現在はくるりや銀杏BOYZのサポートギタリストとして活躍する山本幹宗氏だ。音楽プロデューサーとして、彼女が作った曲に彩を加えている。

 最近は曲の作り方を変えた。これまでは歌詞を作り終えてからメロディを作る、いわゆる“詞先”だった。今はメロディと共に歌詞が出てくる。

 「その方が効率は良いし、うまく作れる。色んな方の曲を聴いてインプットして、自分なりに落とし込んでいるから、自然と出てくるのだと思います」

 そうしたなか、4月24日にミニアルバム『はじめての青』をリリースした。周囲の評価はすこぶる高い。

 収録の7曲全てを自身が作詞作曲した。彼女の音楽家としてのスタートを暗示させる「ハジマリのオト」で始まる同作品は、子供でもない大人でもない特別な感情を歌詞に乗せた曲で彩られている。

 目まぐるしく変化する青春時代。その時の流れは作品にも表れている。4曲目「今年の夏休みは君とデートに行きたい」は最初に作った曲。「シンガーソングライターアイドルという新たなジャンルを作りたいと思っていたので、アイドル要素が強い曲になっています」。

 歌詞の一部を引用する。

<今年の夏休みは 君とデートに行きたい>
<近くのデパートでも映画でも>
<君とならなんだって楽しめる>

 甘酸っぱい香りがする。

 それと対照的なのは6曲目「聞いてよ」だ。「最近作った曲で、心の底が表れています。この曲が出来たことは私にとって大きなことでした。これまで作ったなかで、聴いていくうちに嫌いになる曲もあって。しばらくして客観的にみたら嫌になっているものもあって。でもこの曲は時が経っても変わらずに好きです」。

 歌詞はこうだ。

<私の声を聞いてよ>
<私の歌を聞いてよ>
<すぐ叶う夢ならいらないから>

 彼女の心のうちが現れているようだ。

勇気づけさせてあげたい

原田珠々華

 16歳の彼女。「幅広い世代に伝えたい」という気持ちはある。しかし、強く願うのは「同世代に聴いてほしい」。

 「私もそうだけど、暗い感情を持っていると思うので、勇気づけさせてあげたい」

 そうした思いが反映されてか、彼女の歌声は感情をむき出しに歌うスタイルとは異なり、寄り添うような優しさがある。

 「自分と違うものはなかなか受け入れられないと思う。それは若い人たちだけじゃなくて、大人の方もなかにはいると思う。でも、皆同じだよ、大丈夫だよ、と伝えたい。寄り添いたい」

 歩み始めた当時は不安もあった。自信を持って「シンガーソングライター」とも言えなかった。でも今では胸を張れる。

 「友達からは凄いねと言ってくれて。始めた頃はシンガーソングライターに自信がなくて、そう名乗ることが恥ずかしくて隠してきたけど、最近になって自信を持てる音楽をやっているので、はっきりと言える。私はシンガーソングライターなのって。周りからも良いねと言ってくれます」

 そんな彼女の憧れは星野源。そして、夢はバンド編成でライブをすること。「バンドが好きなのでいつかバンドでできれば。でも今を大事にしたい。1曲1曲を大事に積み重ねていきたい」。

 解散して失った希望は、再び輝きだしている。若い世代と歩幅を合わせてともに歩く原田珠々華。今、注目のシンガーソングライターだ。

(おわり)

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