ギタリストの本田毅が、自身初のソロアルバム『Effectric Guitar』を発表した。1987年にPERSONZのギタリストとしてメジャーデビュー、以後他アーティストのサポート、プロデュースをおこない、現在もギタリストとして活発な活動を続けている。エフェクターを駆使した個性的なギタープレーは、多くの後進ロックギタリストに多大な影響を与え続けている。そしてそのスタイルを生かしたソロステージを2016年に初めて実施、以降積極的なツアーなどを実施しさらにその世界観を広げ、今回のソロアルバムリリースへと至った。今回はアルバムのリリースツアーを控えた時点での本田に、自身の持つギター観、ギタリストの理想像などとともに、ソロアルバムリリースや制作の経緯をたずねてみた。【取材=桂 伸也/撮影=ヨコマ キミヨ】

“いつかはソロアルバムを”なんて思いはなかった

本田毅

本田毅

――本田さんのソロとしての活動は、2016年におこなわれたライブが最初とうかがっていますが、そのころからソロでやりたいという思いが芽生え始めたのでしょうか? それとも以前より“いつかはソロをやりたい”と、機会をうかがっていたのでしょうか?

 “いつかは…”みたいな思いはありませんでした。僕はどちらかというとバッキングギタリストだと思っていたし、ソロのメロディーだけで音楽を作る自信は正直、あまりなかったんです。だからソロ活動をやりたいという欲求は、それほどなかったです。それぞれ自分のバンドやサポートの活動に集中してアイデアを注ぎ込んでいましたし。

――確かに本田さんはPERSONZのメンバーでもあり、fringe tritoneや、7月に久々のライブをおこなうGITANEもあり、さらにサポート活動と、どちらかというとバンドやセッションでのプレーがメインであるイメージがあります。

 だからそれほど一人で目立とうとは…周りではバンドをやりながらも、ソロを結構出している人は多くいて、大概の方はみんな巧くて、本当のソロイストだと思える人が多い印象だけど、僕はそれよりもバンドなどの活動でずっと欲求も満足されていたし、特にそんなソロでの活動に向けての思いは、特になかったんです。

――その周りのギタリストがリリースしているソロアルバムについて、ご自身はどのような印象を持たれていたのでしょう?

 ソロアルバムを出される人の印象は2つあって、一つはギターのソロイスト。すごくテクニックがあって巧い人。単純にいえばギターの速弾きができたり、すごいスケールで弾けたりという。またもう一つのイメージは、ギターを弾く一方で自分も歌える方、ギターを弾きながら歌える方。僕はそういった要素は両方ともないので、そういうことはできないな、というのが当初の思いでした。

――ではどんなきっかけで今回、ソロでの活動に意識が向くことになったのでしょうか?

 2016年、最初のソロライブをおこなう以前に、神保町で楽器展イベントがあって、そこに出演させていただいたのがきっかけでした。そのときは1週間ほどの出演だったんですが、せっかく1週間やって、ギターとか楽器を展示してという日程だったから、ちょっとだけ演奏もしました。そこで、ちょっとマニアックなインストの曲を作ってプレーしたら、それが結構評判が良くて。自分でも手ごたえを感じたんです。その後に最初のライブをおこなったライブハウスを紹介していただいて。現場には事前に自分で見に行って、ちょうど大きさも自分でやりたいイメージに近かったので、すぐその場で予定を押さえてもらいました。

――ではそのタイミングで?

 “ソロをやろう”という気構えに変わりました。それからライブまでに、とりあえずワンステージができるくらいの曲を書き出して作りました。今回のアルバムのタイトルにもある『Effectric Guitar』という名前も、そこで思い付きました。

――今回、アルバムをリリースしたタイミングはいかがでしょう?

 ライブをやってきた中では、幸いこのタイミングで良かったのかな、とも思ってもいます。最初のライブから1年、2年と、いろんなところでライブハウスでもやって、その間に曲もできて、そこからこのアルバムができ上がってきたので。

 あまり余力が無い状態でアルバムを出すこともできたかもしれないけど、ライブを重ねたことでライブのイメージを同じ打ち込みに反映させて、結構グルーブさせたりとか、そんなライブならではのイメージが、今回のアルバムの表現にはあるんです。その意味でこの時期、少し場数を踏んだという段階でアルバムを発表することができたのは、良かったと思いました。

――ご自身のキャリアの中で考えるといかがでしょう?

 遅いでしょうね、きっと(笑)。皆さんにはよく言われます。でも僕にとってはそれでも今で良かったと思う。生きているうちにやれて良かったなと(笑)

――逆に、年齢やキャリアも関係なく、できることもどんどん増えている喜びもある気がします。

 確かに。またソロを始めたきっかけの大きなものとしてはもう一つあるのですが、2016年は氷室京介さんが活動休止をされた年でもありました。氷室さんは年齢が一つか二つ上で、ご自身のコンディションが納得できなくなったということで活動を止められたということでしたが、休止前の最後のライブは僕も見たけど、ライブを見ていてもそんなことは感じられなかったし、まだまだやれるんじゃないか、と思ったんです。

――氷室さんのライブを同じくご覧になった方は、おそらく皆そう思われたでしょうね。

 でも、だからこそというか。僕はこの歳で全然まだまだやれるから頑張らなきゃいけない、とそのときに思ったんです。それも大きかったと思います。

――それをきっかけに、新しいモチベーションができたと?

 そうですね。やれるうちにやれることはやらないとイカンな、と。

本田毅

本田毅

――ここまでギタリストとして長く活動を続けらえていることへの思いもおうかがいできればと思います。音楽、楽器というものへの興味は、長くやっているとなかなか維持するのも難しくもあると思います。現在の本田さんの中で、ギターとはどのような位置づけのものとされているのでしょうか?

 その意味では、やっぱりギターが好きなんだと思います。最初は趣味から始まったと思うし、今でもやっぱり好きだから“仕事だけど嫌じゃない”。弾いていることは楽しくて、気が付くとすごく時間が経っているんですよね。夢中になってやっている。だから今ギターを弾くことは仕事だけど”これをやるのは嫌だな”と思う時間は、あまりないし。

――本田さんのギタースタイルとしては、エフェクターを駆使してのプレーというのも特徴であり、機材面への興味も人並外れている印象があります。そういった面でも影響していることがあるとも思われますね。

 そうですね。だから逆にそういった興味のおかげで、ギターへの興味も維持できているということも、あるかもしれません。どんどん新しいもの、自分が知らないものって、時を経ることに出てくる。それにすごく興味があるんです。どんな音がするんだろう? って。

 またそのときにそれを手に入れたら、もしかすると自分ができなかったこと、ダメだった壁を突き破れるかもしれない、武器になるかもしれない。そう思うと、それを使ってみたいと思うし。それに出会えることはすごく嬉しいんです。もちろん使いこなせない場合もあるんですけどね。でもそんな力を借りるというか、そういう出会いをうまく生かせている、ということもあるのではないかと思います。

――本田さんのスタイルの特徴としてエフェクターという存在がある一方で、同じエフェクターを使用すれば、誰でも同じような音は出せるのではないか? という考えもあるかと思います。しかしその前提がありながら、エフェクターが本田さんの独自のギタースタイルに大きく起因しているというのは、非常に興味深く思います。エフェクターへの探求心というものが、プレースタイルにも影響しているのでしょうか?

 そうだと思います。たとえばギター一本、同じ楽器を誰が弾いても同じ音がするわけでもなく、人それぞれで弦の揺らせ方の癖とか、そういう差が結構出る楽器なんです。確かにエフェクターという機材を入れたときには、同じ音、同じ音が出るようになるでしょう。ツマミの位置が同じなら、工業製品としてはそのはずなんです。でもやっぱり使う人が違うから、音は変わるんですね。

 たとえばタッチの強さ、ピッキングの強さでも音は変わるし、同じツマミの位置でも変わるし。あと僕の場合は“このエフェクターはどこまでやれるのかな?”ということを探求する時間が結構長くて“ツマミを10にしたらどう?”“これくらいだったらこうなる?”“こういう弾き方をすると、また変わる”ということを探って、この一つのものがやれることを、何パターンか考えるんです。

 そして人によっては多分、エフェクター1個で”これだけでいいや”と一つの設定で満足する人もいると思うけど、僕は最低でも3つから4つは“たとえばこのときは、こんな音がする”という試行をするんです。だからおのずとその組み合わせは広がってくる。だから同じエフェクターを使うでも、人によってその手数が多い、技が多い人と、そうじゃないという違いが出る感じではないかな、と。

本田毅

本田毅

――テクニカルなギタリストがメチャメチャ練習に時間を割いているのと同等に、本田さんとしては…。

 僕はエフェクターのツマミをいじっている時間のほうが長いですね(笑)。あとはエフェクターをつなぐ場所を変えたりもやっています。順番によって結構音も変わるし。そういうことを試していました。特にアマチュアからプロになったばかりの、PERSONZの初期のころはエフェクターを並び替えてはああだこうだ、ってやっていました、その頃はまだエフェクターがそれほど沢山買えなかったので、買ったものを一生懸命“こいつで、なんとかいろんな音が出るように…”って(笑)

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