3ピースロックバンドのSaucy Dogが4月30日、東京・日比谷野外音楽堂でワンマンライブ「YAON de WAOOON in Tokyo」をおこなった。Saucy Dogは2013年に石原慎也(Vo、Gt)を中心に結成され、2016年に秋澤和貴(Ba)、せとゆいか(Dr、Cho)が加入し現在のメンバーとなった。2018年10月~12月にかけておこなった『ワンダフルツアー2018』では全国25会場すべてが即日完売するなど今勢いのあるバンドだ。今公演は、4月13日に大阪城野外音楽堂でおこなったワンマン公演が即日ソールドアウトし、急遽会場の使用ができることになり追加公演となったこの日は新曲も2曲披露され、全18曲のエモーショナルな全力演奏は雨天というコンディションを味方に付けるような叙情的で、情熱的なステージとなりオーディエンスを魅了した。【取材=平吉賢治】

雨が似合うSaucy Dogの曲と歌声

石原慎也(撮影=白石達也)

 雨天に見舞われたこの日の野音だったが、約3000人の会場キャパシティーは隅々までオーディエンスで埋め尽くされ、現在のSaucy Dogの勢いを物語っているようだった。せとゆいかがMCで「Saucy Dogの曲と歌声は雨が似合う」と表現した通り、霧雨が舞う天候ではあったが、Saucy Dogの世界観を味わうにはむしろ好都合のコンディションだったのかもしれない。

 笑顔でステージに表れたSaucy Dogは、石原の「日比谷~!」というシャウトを皮切りに「真昼の月」「ナイトクロージング」と勢い良く剥き出しの3ピースサウンドを響かせた。エモく叙情的で、青春の群像をサウンド化するようなSaucy Dogのアンサンブルは雨の隙間を縫うように、水滴に音を染み込ませるように、各楽曲の世界観を会場中に染み渡らせていた。

秋澤和貴(撮影=白石達也)

 テレキャスターを強く掻きむしるように、ときに優しく撫でるように演奏する石原、しばしばドラムセットに身体ごと寄せてボトムラインを刻む秋澤、終始笑顔でハツラツとビートを刻むせとゆいかのバンド・アンサンブルは、3ピースならではのストレートな裸のグルーヴを生んでいた。4つ打ちの低音が響き渡る「ジオラマ」まで、意気揚々と一挙3曲をたたみかけた。

 「今日ここに立てたことが最高に幸せで、みんなが観てくれていることが最高に幸せ。雨が降っていたからこそめっちゃ良かったと思ってもらえるようなライブをしに来ました!」。そのようにMCで語ったせとゆいかは、野音という聖地とオーディエンスに対し、満面の笑みで感謝の意を伝えていた。

 Saucy Dogの楽曲と雨、そして客席側に放たれた無数のシャボン玉とのマッチングはえも言えぬ美しさを演出していた「あとの話」。水滴に乱反射する色とりどりの照明と、“雨が降っていたからこそ”というシチュエーションを最大に活用したこの日のステージは、Saucy Dogの楽曲に寄り添った幽玄で夢うつつなロマンチシズムに溢れていた。そんな幻想的な空間のなかで映えるリアルな詞とのコントラストはSaucy Dogの魅力を味わうにはとても贅沢な空間だった。

 「マザーロード」「Wake」と続いた中盤には新曲も披露。ブルーのライティングが輝くなかでの石原のギターソロは、夜に差しかかるタイミングの薄暗い空色を青い閃光で突き刺すようだった。石原の左足での2カウントで”ドン”と突入した「いつか」では緩急・エモーショナルと、聴衆の情念を包み込むような楽曲展開でSaucy Dogワールドをつくり上げ、会場は満場一致の一体感を示していた。しっとりとした音の拍と感傷的な言葉を重ねる石原の歌は「コンタクトケース」の世界観を幻想的なライブとして醸す。

平成最後の野音ステージに“グッバイ”

せとゆいか(撮影=白石達也)

 石原はアコースティックギター、秋澤はエレクトリックギター、せとゆいかは鍵盤という編成でアコースティックバージョンで2曲を演奏。せとゆいかは、自身が作詞作曲をした「サラダデイズ」のシークレット・トラック「へっぽこまん」をキュートな声で歌い上げ、会場をほっこりとさせた。ちなみに、せとゆいかは自身のTwitter上でも歌声をしばしば披露している。石原は「世界の果て」をのびやかなボーカルで歌唱し、ビートレスなアンサンブルでもその歌声を全方位に通らせ、聴衆を魅了した。

 「今まで言われて一番悔しかった言葉は…」と告げて入る「煙」。<私達ね もう大人だからね 好きなだけじゃ一緒にいられないの>という詞が胸を刺すようだった。ストロボ・フラッシュを焚きつけ、「メトロノウム」「バンドワゴンに乗って」と、サウンド・ボーカルともにボルテージは最高潮に。憂いのファルセット混じりのボーカルで「ゴーストバスター」を歌い切り、本編を終了。

 アンコールでは新曲を更にもう1曲披露。最終曲「グッバイ」では秋澤とせとゆいかのリズミックな演奏のなか、石原はひとつ一つの言葉を丁寧に伝えるよう、情熱的に歌い切り、平成最後の野音のステージは幕を閉じた。新たな時代をエモーショナルに突き進むSaucy Dogの今後の活躍に期待が寄せられる。

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