俳優の堤真一主演、A.B.C-Zの橋本良亮共演の舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』が4月20日から、東京・赤坂のTBS赤坂ACTシアターで上演される。本作は劇作家のトム・ストッパード原作の舞台作品で、オーケストラを従えた特徴的な演出が注目を集めている。今回はその舞台で主演を務める堤に稽古入りする前に取材する機会を得た。舞台への意気込み、そして音楽について語ってもらった。【取材=桂 伸也/撮影=木村陽仁】

 本作は、政治犯として精神病院に入れられた男と、自分には引き連れているオーケストラがあると妄想する精神病患者という2人の病院での出来事を、彼らを取り巻く精神病院の医師、家族らとともに描いたストーリー。タイトルの『良い子はみんなご褒美がもらえる』(英題:Every Good Boy Deserves Favour)は音楽の五線譜の、横線の音を覚えるための、英語の語呂合わせとして知られる言葉から由来している。(一番下からE(ミ)、G(ソ)、B(シ)、D(レ)、F(ファ)となり、英題の頭文字と一致する)。また本作の音楽は、2月28日に逝去した音楽家のアンドレ・プレヴィンさんが担当しており、舞台では35人のオーケストラが、役者陣とともに物語を展開する。

 堤は、誹謗罪でつかまった政治犯の男・アレクサンドル役、橋本が自分はオーケストラを連れているという妄想に囚われた男・イワノフ役を演じる。その他にも小手伸也、シム・ウンギョン、外山誠二、斉藤由貴らが共演として名を連ねている。

キャスト

 近年はドラマ、映画にと立て続けに注目作品で主演を務め、日本を代表する俳優の一人として精力的に活動を展開している堤だが、彼がこのキャリアをスタートさせたのは、まさに「舞台」。以来、年間1~3本の舞台作品に積極的に出演している。本作は2016年に出演した『アルカディア』以来、2度目のストッパード作品出演となる。

2度目のストッパード作品でも「新たな作品」として、まっさらな気持ちで取り組む。要注意はオーケストラとの共演

堤真一

堤真一

――この作品出演のオファーを受けたときのお気持ちと、台本を読まれたときの印象をおうかがいできますか?

 最初にお話をいただいたときに「オーケストラと一緒…」と聞き、てっきりミュージカルだと思ってしまいました。即座に「ミュージカルは無理無理! 何を勘違いして、俺にミュージカルなんて…」と思ってしまったんです。でもオーケストラは入っているけど歌わないから、と言われて、初めて台本を読み始めました。

 ト書きに書かれているオーケストラの演奏と、役者の芝居がリンクしていく部分に、「これは面白そうだ」と感じました。全体的には「ん? 何? これはどういうこと?」と台本だけではわからないことが多くて、確かに面白い戯曲なんですが、これが芝居として立ち上がると、どう見えるんだろう、と最初はまったく想像がつかなかったですね。『アルカディア』も台本を読んだ当初は同じ感覚だったので、これはきっと稽古を通して徐々に見えてくるのではないか、と思っています。

――ストーリーは一見シンプルに見えて、実はちょっと難解な感じもありますよね。

 そうなんです。僕の役は、不当に政治犯として拘束される役です。その中に、演劇的な要素や可能性が凝縮されていると感じ、これはやってみる価値があると思いました。

――ストッパード作品に今回は2度目の出演ということですから“前回こういう感じだったから、この手が使える”とか、経験したことが生きるのでは、みたいなところはあるのでしょうか?

 それは一切無いです、同じ作家でも作品によって違うので。以前ストッパード作品を経験していることは、まったく関係ないですね。

――でも2作品も携わると「この人の作品には、こういう癖があるな」「特徴があるな」というポイントを印象に感じたり、そういうことを、台本を読まれた時点で感じたことはありませんでしたか?

 同じ作家でも作品自体も役柄も違うわけですし、相似性とか関係性は今は感じていません。まして、まだ稽古に入る前ですから。

――では今、これから稽古に入る気持ちとしては、新たな一作品にかかわる、まっさらな状態という感じですか。

 もちろん、そうです。たとえばシェイクスピアだからこうやればいいとか公式があるわけではないですし、同じ作品でも演出家や共演者が違えば全然手触りも異なるんです。稽古を通して、演出家がどのような作り方を提示してくるかで、さらに変わってきますから。海外の演出家さんの場合は、ディスカッションを重ねる方が多いので、そこでも違ってくると思います。

――あくまですべてが重なっていて、初めて内容が見えてくる感じなんでしょうかね。

 そうですね。今は、一つ一つのシーンを丁寧に進めて成立させていくことに集中していけばいいのかな、と思っています。ただ、とにかく今ビビっているのはオーケストラ(笑)。だってやったことないですし…ミュージカルをやっている皆さんには違和感はないんでしょうけど、それを背中に背負って舞台をやるって…まだ想像できないんですよ。

 プレッシャーと捉えるのではなく、助けになってくれると思えるまで、稽古でしっかりと作り込んでいかなければ、と思っています。おそらくオーケストラが合流する稽古は、相当後半だと思うので、そのころには。

――タイトルにある「良い子」というキーワードには、テーマ的にも少し難しい意味が含まれている感じもあります。堤さんご自身は「良い子」というのはどのようなものだと思いますか?

 みんな「良い子」であろうとしがちですよね。「悪い子」とは言われたくない気持ちは、誰しもあります。また、この作品の舞台となる国の社会体制では「良い子」でいないと命にも関わってくるわけですし、なおさらです。もし自分があの体制下に生まれていたらどうなるんだろう、と想像したりもします。

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