俳優の福山翔大が主演を務める映画『JK☆ROCK』が4月6日に全国公開された。本作は、高校時代に結成したバンドの解散を機にくすぶった生活を送っていた一人の青年が、初心者女子高生バンドへの指導をきっかけに自身の胸の内にある情熱を取り戻していくストーリー。福山はロックバンド、シーナ&ロケッツの誕生の物語を描いた福岡発地域ドラマ『You May Dream』(NHK)で、バンドのギタリストである鮎川誠役を担当、初めてのエレキギター経験と感じさせないギタープレー、パフォーマンスで注目を浴びた。そんな福山に、今回はストーリーの印象や撮影に向けて考えた演技アプローチなどを、自身の映画や音楽に対する思いなどとともに語ってもらった。【取材=桂 伸也/撮影=大西 基】

 同作は、2人の「JOE」を中心に絶大な人気を誇ったロックバンドJoKersが突然の解散、これをきっかけに、音楽を捨ててくすぶっていた、一人の「JOE」である主人公が初心者女子高生バンドを指導することになり、彼女たちの日ひたむきな姿を通して過去のわだかまりと向き合い、音楽への情熱を取り戻していく青春ストーリー。本作でメガホンを取ったのは、テレビドラマ、映画と幅広く手掛ける六車俊治監督。キャストにはJoKersの面々として、主人公の海江田丈役に福山、もう一人の「JOE」こと香月丞役を2009年に第22回ジュノンスーパーボーイコンテストでファイナリストに選ばれた山本涼介、ベースの東海林晴信役に元BOYS AND MENの小林亮太、ドラムの神保昴役に舞台を中心に活躍する熊谷魁人と、注目の若手陣が担当する。

 また、丈が指導する女子高生バンドを、実際にメジャーデビューを果たしているガールズバンドDROP DOLLのチヒロ、ユイナ、ユキノが担当、DROP DOLLは主題歌「シークレットボイス」を映画に提供している。他にも吉本実憂や金井勇太、橋本マナミら実力派の役者に加え、西村まさ彦、本田博太郎、吹越満、高島礼子らベテラン陣も登場、さらに映画『ドロップ』(2009年)以来の映画出演となる湘南乃風の若旦那と、個性豊かな面々が脇を固めている。

 2010年にCM出演でデビューを飾った福山は、テレビドラマでは『みんな!エスパーだよ!』(テレビ東京)、『学校のカイダン』(日本テレビ)、『闇金ウシジマくん Season3』(MBS、TBS)と、話題作に出演。2013年からは舞台「銀河英雄伝説」に登場、さらに映画では「青空エール」『土竜の唄 香港狂騒曲』(2016年)、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017年)に出演。2019年も2月22日公開の映画『翔んで埼玉』や『ジャンクション29』、3月2日公開の『五郎の新世界』など、続々と出演作が公開し、その端正なルックスと演技力で年を経る毎に活躍の幅を広げており、今作は初の主演作となる。

「あの作品をやらずにいきなり『JK☆ROCK』という可能性は多分なかった」前作ドラマの経験が生きた本作

――脚本を読まれたとき、ストーリーについてどのような感想を持たれましたか?

 まず思ったのが、これは原作もない話なので、何もない状態からどう物語を作っていこうかという点で、自由に構築できる作品だなという印象でした。僕のやり様によっては、いかようにも、どんなジャンルの作品にも変わる、と。

――音楽というかかわりではいかがでしょうか? 福山さんは以前、ドラマ『You May Dream』に出演された際にも、シーナ&ロケッツの鮎川誠さんの役を演じられた経験があり、2作ほど音楽にかかわる作品に出演される格好となりました。それをご自身ではどのように感じましたか?

 前作は、鮎川さんの役をやったことによって、確実にギターというものが自分の中で身近なものになった、という感覚が第一にありました。だから、その作品をやらずにいきなり『JK☆ROCK』という可能性は、僕の中には多分なかった、むしろあの作品があったからこそ、今回の出演はあったと思っています。

 ただ2つの作品への向き合い方はそれぞれ違っていて、前作は鮎川さんという役を借りてギターを弾いていたのに対し、今回は自由な、オリジナルなありのままで挑戦しなければいけない、向き合わなければいけないというポイントがあり、また違う刺激はありました。

――まわりの共演者には、今回DROP DOLLのメンバーや若旦那さんと、ミュージシャンの方もおられて、その印象も特別なのではという感じもしました。

 若旦那さんもそうですけど、DROP DOLLのみんなは演技に向けた角度が全く違う印象がありました。お互い音楽というツールでは同じかもしれないですけど、やっぱり若旦那さん、DROP DOLLそれぞれの音楽は違うわけで。DROP DOLLのみんなはお芝居の経験がまだないという、本当に無垢で真っ白の形で、真っ向から向き合ってくれる、いわば女優タイプ。

 対して若旦那さんは、それこそ場数でいうといろんな修羅場を潜り抜けてこられた大先輩でもありますし。普段若旦那さんがやられている湘南乃風というアーティストの一面、その色、部分がお芝居から伝わってくることもありました。その一方で現場にはアーティストとして入られるのではなく、ちゃんとお芝居を作って、役として現場にこられているということも、現場のたたずまい、台本の読み方とかからすごく感じました。

 主演って、どんな立場なんだろう? というのが初めてなので、実はよくわからなかったですけど、こんなふうにいろんな方と一緒にお芝居ができるというのも、一つ主演の醍醐味なのかなと感じました。

――刺激的な現場ですね。よく映像の監督に、ミュージシャンを役者として映画に起用することについておうかがいすると、“すごく魅力的だ”とおっしゃられる方にこれまで何人かお会いしたことがありました。福山さんから見られるといかがでしょうか? 特に今回、DROP DOLLのチヒロさんは福山さんと真っ向から対峙するような感じでした。劇中では結構熱い役を演じられていましたが、共演シーンでは福山さん的にも刺激を受けられたのではないかと思いました

 そうですね。特に雨降らしのシーン、僕が車に乗って、それをチヒロちゃんが両手を広げて止めるシーンがありますが、そこは僕の中では、今回自分がやったシーンの中でも一番印象に残っているものでした。技術とかではなく人間のブレみたいなものが、チヒロちゃんからメチャメチャあふれ出てきて。僕は密室空間にいて、チヒロちゃんのほうは雨に打たれて、というその景色も胸に来るものがありましたし、すごく魅力的でしたね。

――そういったところでは、“やられた!”と思うような、衝撃を受けるような感覚もあったのでしょうか?

 いや~お芝居で、“勝った”“負けた”ということを、最近は特に感じなくなっているので。“爪痕を残す”という言葉がありますが、多分自分のことだけを考えて“爪痕を残そう”とするのは、全然魅力的に映っていないんじゃないか、と思うんです。僕もよくやってしまうことではあるんですが、たとえば演技の前に“ここはこういう感じで、こういう目くばせで、目線を置いておけば、画にはこう映る”みたいな逆算をして…

――“何が何でも、自分の思惑をシーンに残してやれ!”みたいな?(笑)

 そう! そうなんです!(笑)。でもそんなスケベな芝居は(笑)、最近は意識してなるべくやらないようにしているんですが、その意味でチヒロちゃんからは、そんなスケベ心は一切感じられなくて、多分“自分がどう映っているのか?”とか、考える冷静さなんて持てないくらい雨に打たれ続けていたし、すごく素敵だと思いました。だから“やられた”というよりは“(素敵な演技を見せて)頂いた”という感じでした。

――それは、まさしく共演の醍醐味を味わった瞬間でしたね。今回、監督は“これまでやってきた中で一番楽しい現場だった”とおっしゃっていたそうですが、福山さんご自身も”楽しい”と思われた瞬間はありましたか?

 楽しいというか、贅沢だと思いました。美術監督が福沢勝広さんで、この方は高倉健さん主演の『鉄道員(ぽっぽや)』で初美術監督を飾り、アカデミー賞も受賞されている本当に素晴らしい美術さん。カメラマンも小林元さんという、『クライマーズ・ハイ』という作品でアカデミー賞の撮影賞を取った、プロフェッショナルな方だったし。

 今まで主演ではない作品に参加しているときは、なかなかスタッフさんの仕事ぶりなんかを見る余裕は正直なくて、自分のことで精いっぱい。まあ今回もそうでしたけど、一方でスタッフさんの仕事ぶりを1カ月丸まる見られたので、本当に贅沢な時間だったと思います。


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