今年10月21日にデビュー10周年を迎える神戸出身の3ピースピアノバンドのWEAVERが3月31日、東京・マイナビBLITZ⾚坂で東名阪ツアー『WEAVER 14th TOUR 2019「I’m Calling You~流星前夜~」』のツアーファイナルをおこなった。“流星コーリングプロジェクト“と題された今回のプロジェクトは、河邉徹が書き下ろした小説『流星コーリング』にWEAVERの3人が映画のサントラのように楽曲を制作していく音と文字の物語。小説の世界観を音と一緒に届けることで、相乗効果でより立体感のあるライブとなった。3月6日にリリースされた同名アルバム『流星コーリング』の楽曲を中心に、「カーテンコール」など全18曲を披露。ツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

音と映像と光で紡いだ『流星コーリング』

杉本雄治(撮影=Yuto Fukada)

 3月も今日で終了し、1年の1/4が過ぎ、時の流れを感じながらのマイナビBLITZ⾚坂。すでに多くのオーディエンスによってフロアは隙間もないほど埋めつくされていた。

 開演時刻になり、静寂に包まれた会場に鈴虫の音が響く。情緒あふれる趣のある導入。その虫の音が徐々に小さくなっていくと「Overture~I'm Calling You~」をSEに奥野翔太(Bass & Chorus)、河邉徹(Drum & Chorus)がステージに登場。続いて、杉本雄治(Piano & Vocal)が鍵盤にスタンバイ。青い光が幻想的な空間を作り出し、ステージに引き込まれるような感覚を与えてくれた「流れ星の声」で幕は開けた。3人の洗練された透明感のあるサウンドに、杉本の凛とした、どこまでも真っ直ぐで伸びやかな歌声が響き渡る。

 ステージのスクリーンに時計が映し出され「最後の夜と流星」へ。力強さを感じさせるエネルギッシュなナンバー。サビではオーディエンスも手を振り上げ、3人のサウンドに応えていく。大阪芸術大学のアートサイエンス学科の生徒が制作した映像とサウンドが融合し、世界観を際立たせていく演出も見どころ。

 今回のライブは河邉が書き下ろした小説『流星コーリング』の一節が、声優の角田雄二郎と花澤香菜の声で朗読され進んでいく。そこに生演奏を加え演出するというWEAVERにとって新しい試み。それはストーリーをさらに後押しするよう。ここで過去曲から「Shine」、「66番目の汽車に乗って」を届け、また違った角度から『流星コーリング』を彩った。

 そして、透き通ったピアノの音色が美しく響いた「Interlude I」から「栞」へ。アルバムではHYの仲宗根泉とのデュエットナンバーだが、杉本がしっとりと一人で情感を込め歌い上げる。また違った趣をライブで聴かせてくれた。

 続いては6拍子のストリングスが印象的なバラードナンバー「Nighty Night」。心に安らぎを与えてくれるような優しい温もりのある音に身を委ね、静かに耳を傾ける。ざわめきを感じさせる「Interlude II」から「Loop the night」へと流れ込む。徐々に熱を帯びていくサウンドは「Nighty Night」で安らいだ身体に、再び熱いものを注ぎ込んでいく

 「夢じゃないこの世界」から「透明少女」へ。<一人じゃもう生きていけない>この言葉が印象的に響く壮大なナンバーは、この物語のクライマックスを感じさせた。喜びと悲しみ、両方が揃ってその存在価値がある。片方だけでは成り立たない、表裏一体の感情を歌に乗せ、3人はステージを後にした。

ここからずっと一緒に前に進んでいけたら

奥野翔太(撮影=Yuto Fukada)

 着替えた3人が再びステージに登場。杉本は訪れたオーディエンスに感謝を告げる。この“流星コーリングプロジェクト“について説明。杉本は「河邉がこの小説を書いてくれたから、このライブやアルバムが出来ました」と語ると、河邉は「僕たちが伝えたいこと、やりたいことを詰め込んだのがこの『流星コーリング』とライブなので、皆さんに楽しんでもらえたら嬉しい」と想いを述べた。

 奥野のスラップ奏法が印象的なセッションから「だから僕は僕を手放す」でライブは後半戦へ突入。ラテンのリズムを取り入れ、情熱的なナンバーで一気にボルテージは最高潮まで高まった。「皆さんの最高の声を聞かせてください!」と、杉本の声に続いて盛大なシンガロングが鳴り響いた「Free will」。オーディエンスのクラップも楽曲一体となりライブならではの臨場感をさらに高めていく。

 河邉のドラムロールにクラップで盛り上げる。杉本は「もっと聞かせて!」と煽り過去最高に長いイントロとなった「Shall we dance」で、体も心も弾ませ楽しみ「くちづけDiamond」へ。杉本のポップで鮮烈なピアノワーク、6弦ベースを巧みに操り多彩なフレーズで彩る奥野、躍動感あふれる河邉のドラミングと三位一体の演奏でフロアはヒートアップ。

 杉本は「ここからずっと一緒に前に進んでいけたら」と本編ラストは杉本の力強いピアノの打鍵で始まった「カーテンコール」。第2章の始まり、次のフェーズへの突入を予感させる1曲だ。<ここにいるよ>と存在を肯定させるような言葉、<運命に抗おう>と何があっても揺るがない決意を歌から感じさせ、本編を終了した。

WEAVERにしかない最強の武器を手に入れた

河邉徹(撮影=Yuto Fukada)

 アンコールを求める手拍子に3人がステージに。2018年はツアーをやらないと決めたこともあり、この約1年半振りのツアーファイナルに喜びを表す。そして、この『流星コーリング』をしっかりと完結させたいということと、10周年を祝う場所として10月22日に地元・神戸国際会館で、『WEAVER 10th Anniversary Live「最後の夜と流星~We're Calling You」』の開催を発表。

 2011年にも立ったことがある神戸国際会館への思いを語る杉本は「自分たちが沢山のライブをやっていく中で、初めてのことがたくさんあって、WEAVERでもっと色んな夢を叶えていきたいという思いを改めて見直して、進んでいけたら…」と、この場所を選んだと話した。

 昨年は「自分たちが思いつくことを全てチャレンジしよう」といテーマで動いていた1年だったという。「このままで進むわけにはいかなかった」と昨年はツアーを行わなかった理由を明かし、「自分たちが得意なものや、チャレンジすることでWEAVERに新しい風を吹かせられたら良いな」という思いで2018年を過ごしたという。「それがあったからこの作品が出来たし、15年、20年とやっていくことを見据えた中で、この作品ができていなかったらうまくは進めないんだろうなと言うことを感じています。3人の気持ちを一つにしてくれた大切な作品」とこの『流星コーリング』の重要性を語った。

 奥野は「3人で食事に行って腹を割って話しました。WEAVERの良さは河邉の作る詞の世界観や杉本のピアノとメロディが素敵な曲、そのトライアングルが魅力なんじゃないかというのはデビュー当時からずっと思っていて、これまでも色んなことに挑戦してきたけど、さらに3人で力を合わせてやっていこうとなりました。メンバーに小説が書けるバンドというのも珍しい、それによって音楽が2倍、3倍にもなるし、音楽があるからこそ小説が奥深くなったり、その相乗効果はWEAVERにしかないもの、WEAVERにしかない最強の武器を手に入れたなと感じています」

 河邉は「自分が書いた物語が元になって『こんなことになるんだ』と僕自身もすごく嬉しかった。自分の書いた物語を読んでくれて、音楽を書いてくれるメンバーがいる小説家というのは、なかなかいないと思う。僕は世界で一番幸せな小説家じゃないかなと思います。今回一番伝えたかったメッセージがあります。それは人生を生きていくなかで幸せや喜びだけではなく、痛みや悲しみというものも訪れてしまうわけで、でもその両方を抱いて前に進むことができるということを伝えたかった」と、作品に込められたメッセージを語った。

 それぞれの思いを語り、アルバムに収録された曲でまだ披露していなかった「I would die for you」を最後に届けた。繊細で儚い音が会場を包み込むように鳴り響き、このライブのエピローグとして感動的な余韻を残してくれた。7月からベストアルバム「ID 2」を引っさげて始まる全国ツアーへのプロローグとなった『WEAVER 14th TOUR 2019「I’m Calling You~流星前夜~」』。10月の神戸国際会館でこの『流星コーリング』はどのような結末を迎えるのか楽しみになった一夜であった。

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