姉妹ユニットのチャラン・ポ・ランタンが3月6日、約1年4カ月ぶりとなるオリジナルアルバム『ドロン・ド・ロンド』を発売した。ブラジル、アマゾンの奥地で未確認民族が発見されたというニュースから着想を得たという今作。原点に立ち返って制作されたという。2009年の活動開始から今年10年を迎える彼女たち。今回のインタビューでは10年を経て感じた彼女たちの変化や今作の制作エピソードなどについて聞いた。【取材=小池直也/撮影=冨田味我】

自分たちでしかやれないことがある

小春

――今回のアルバムタイトルも面白いですね。

もも 次に作るアルバムは小春ちゃんの作る音楽を今まで以上に、出たまま詰め込みたいなと思っていたんです。この人が作る世界観や音楽性がチャラン・ポ・ランタンであると私は思っていて。そういう気持ちで制作が始まりました。それと少し前に「アマゾン地帯で未確認民族が発見された」というニュースを見たんです。そのドローンで撮影されていた映像が私たちにとって興味深かったですね。「まだ発見されてない民族がいるんだ」と。

小春 こんなに様々な技術が発展しているのに、まだ発見されてない人間がいるんだと不思議でした。

もも でも発見された側からすると、逆に「あなたたちのこと知らないよ」って感じなんだろうね、と話してたんです。チャラン・ポ・ランタンも「独特な世界観ですね」「どういうコンセプトで音楽をやってるんですか?」「どういうジャンルだと思いますか?」とか言われたりします。でも私たちからすると、これがポップスというか、一番ナチュラルに出てくる音楽なんです。これでチャラン・ポ・ランタンとして、今まで活動してきましたから。それでドローンの映像を見ながら「その未確認民族って私たちなんじゃないか?」というイメージで今作のビジュアルを思いつきました。このアルバムをきっかけに私たちの存在を発見してもらおう、というのもテーマです。こういう民族もいるんだよと(笑)。

――小春さんとしてはいかがですか?

小春 ここ数年の作品のなかでは確かに一番そのままを出した感触があります。なので、曲に対して達成感がどれもないんです。ひとつ前のアルバムくらいまでは結構悩んで制作して、すがすがしい気持ちではあったんですけど。今回は5分くらいでできてしまった曲もあります。

もも 「脱走」なんてある日突然送られてきて。アレンジとかも「普通にできました」みたいな感じでした。ナチュラルに作る音楽がこれなんだ(笑)と改めて思いましたね。

小春 インディーズの1枚目の感覚と似ているというか、できた曲をアルバムにした感じなのかもしれません。「もっと考えようよ」という若気の至りみたいなところもある作品とも言えそうです。「チャラン・ポ・ランタンらしさって、小春がストレートに作る曲だよね」と言ってくれるのは私以外の人たちなんですよ。妹だったり、スタッフだったり、お客さんだったり。「これがチャラン・ポ・ランタンらしいんだ」と10年経って思えたところはあります。

 “らしさ”については、自分たちでは理解しているつもりだったんです。「姉妹である」「私が曲を書いて、妹が歌う」「独特なビジュアル」だったり。だから、その辺を守りつつ活動しているつもりだったんです。私たちは満足できるキャパシティが広いと思うんですよ。「こういう音楽じゃないと納得いかない」という風にも思わないですし。案外私たちってアコーディオン弾いて、歌を歌えば結構楽しいので(笑)。

もも 確かに、何でもいいと言えば何でもいい(笑)。

――活動自体はのびのびされていた様に思いましたが。

小春 そうです。だから今までも全然楽しかったんですよ。不満もありませんでした。でも、よくも悪くも色々できてしまうということは「チャラン・ポ・ランタンってこういうバンドだよ」ということを紹介する障害になるということも分かったんです。我々はもちろんマルチに色々できるんですけど、それが裏目に出たこともあったなと。

 歌い方も色々やってみたけど「はたして、これがチャラン・ポ・ランタンだと気づいてもらえるのだろうか?」というところまで一瞬の間行ってしまったんです。アレンジも打ち込みばかりでアコーディオンが全然ない、というものも作った時に「これなら他の人にお願いしても良いのかもしれない」と思って。だったら他の人の畑にまでわざわざ入るより、自分たちでしかやれないことがあるなと感じました。

 『ドロン・ド・ロンド』みたいな音楽が自分のナチュラルな作品なんだから、ポップスに溶け込む様なことはしなくて良かったんですよ。以前は新しく聴いてもらう人向けにわかりやすく、8ビートとかポップなコード進行を取り入れたら、新しい音楽ができるんじゃないかなと考えていました。それは私たちにとっても新しいし、お客さんにとっても聴きやすいはずなんです。でもコアな人や、私たちを前から聴いていた人には、Jポップに溶け込んでしまった様に聴こえるみたいで。

――なるほど。

小春 アルバムの宣伝の時期になって「聞きどころは?」と聞かれても、自分たちの得意ではない引き出しを使ったものだから、そういうポイントもそんなに出てこなかったんです。「多分…面白いですよ」みたいな、あやふやな答えしかできなかった。新しいものができたことをアピールはするんですけど、これが私たちの今とびきりの音楽というより「実験してみました」というものだった気がしていましたね。そういうものは、自分たちの一番得意なものではなかったので。

もも 誰かに寄り添って作っていたつもりが、誰に向けたものにもなっていなかった。

小春 それはそれで色々と勉強になったんですけど、ちょっと不思議な気持ちになりましたね。新しいとは思っていたんですが、誰かががっつり受け取ってくれたかと言えば、そうでもなく。みんなが求めているものを考えるよりも「今これが好きなんですよ」ということを逆に発信していかないといけないなと感じました。誰かに好かれたくてやっていたのかもしれません。


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