ポップオペラという唯一無二のスタイルを持つシンガーの藤澤ノリマサ。ポップスの歌唱法とクラシックオペラのベルカント唱法を使い分け、バリエーション豊かな歌声で多くの人を魅了し続けている。昨年はデビュー10周年を迎え、プロデューサーの武部聡志とともにカバーアルバム『ポップオペラ名曲アルバム』をリリース。歌とピアノのみというミニマムな編成で歌声をより際立たせ、藤澤の魅力が十二分に堪能出来る一作となった。現在は3月9日の大阪・サンケイホールブリーゼを皮切りに、4月30日の東京国際フォーラムまで全国ツアー『10th anniversary 藤澤ノリマサ CONCERT TOUR2019~威風堂々~』を行なっている。インタビューでは、藤澤にこの10年間を振り返ってもらい、自身にとっての歌や音楽はどういうものなのか話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

突発性難聴になって姿勢が変わった

藤澤ノリマサ

――プロフィールを拝見させて頂いて、落語などお好きみたいですね。

 林家木久扇さんの落語を息抜きで良く聞いています。ステージに立つ前にすごく緊張するので、本番前に聞いたりもします。というのも、本番前になると緊張からか手がすごく冷たくなるんです。スタッフやメイクさんに手を触ってもらって手の冷たさを確認してもらって、冷たければ冷たいほど緊張しているんですけど、その日のライブはすごく良いんです。過度の緊張は良くないんですけど、しないのもダメでバランスが重要です。

――9日からツアー『10th anniversary 藤澤ノリマサ CONCERT TOUR2019~威風堂々~』が始まりますが、今の緊張感はいかがですか。(※取材日はツアー開催前)

 先日、最終リハが終わったのですが、本番もそうなんですけど、高揚していて寝れなくなるんです。ライブがある日はピークを本番の時間に持って行くように調整します。声は目が覚めてから3時間ぐらいしないと起きて来ないので、起きてから徐々に盛り上げていかないといけなくて。テンションとメンタルがすごく大事になってきます。

――徐々に上げていくんですね。さて、昨年はデビュー10周年を迎えましたが、改めてこの10年間はいかがでしたか。

 すごく感慨深いものがあります。デビューの前からなんですけど、僕はスタッフに恵まれていると思います。さらに、藤澤ノリマサを応援してくださるファンの皆様がこの10年間、付いてきて下さっている。一期一会、一回一回の出会いがすごく財産になりましたし、出会いの大切さを痛感した10年です。

――デビューからの10年間で印象的だったことやターニングポイントになった出来事をあげるとしたら?

 過去のツアー中に声が出なくなってしまったことがありました。どんどん声が擦れてきて…。でも、ショーは中断出来ないという危機的状況でした。その時は、ファンの皆様が立ち上がってくれて、サビを合唱してくれたんです。それがすごく嬉しくて印象的でした。

 あと今は大丈夫なのですが、突発性難聴にもなってしまったこともありました。おそらくイヤモニをしていたことが関係しているんじゃないかとは思うんですけど、いつも片耳だけで音をモニターしていたので、左側だけが突発性難聴になってしまったんです。

――なぜ片耳だけでモニターされていたのですか。

 イヤモニは遮音性が高くて、お客さんの声など楽器と僕の音以外がダイレクトに聞こえ辛くなるので、ライブ感が薄れてしまうんです。それもあって片耳は外してやっていました。僕は絶対音感があって鍵盤を鳴らせば音がわかるんですけど、それがいつしか濁って聞こえるようになってしまったんです。そこから、イヤモニをやめてスピーカーからモニターすることに切り替えました。

――昔ながらの手法ですね。

 そうです。ポール・マッカートニーがモニタースピーカーで東京ドームでやっているのを観て、イヤモニじゃなくても出来るんだと改めて思ったんです。ドームだからスピーカーの数は凄かったんですけど(笑)。それからPAさんと僕とのモニターへの追求する姿勢が変わったので、ターニングポイントになると思います。あと、トニー・ベネットのドキュメンタリーを観ていて、確証はないんですけど、モニタースピーカーすら使っていない感じでした。その空間で感じられる音で歌っていたのにも、感銘を受けました。

――さて、藤澤さんは作曲もやられていますが、この10年間で楽曲制作の変化もありましたか。

 ありました。僕はすごくアナログ人間で、曲もボイスレコーダーに録音するぐらいでした。ディレクターさんにコンピュータを使用したDTM環境を構築して頂いて、快適にプリプロが出来るようにしてもらいました。なので、ドラムやストリングスなど自分でアレンジもするようになりました。

――それは大きな変化ですね。

 そうなんです。でも、アレンジのプロではないので、あくまでイメージを伝えるためのものなんです。今までスマホのボイスメモだったので、「この時代にすごい録り方してるね」なんて周りから言われたり(笑)。

――武部(聡志)さんともボイスメモでやり取りを?

 ボイスメモで送っていました。「いつもこんなやり方なの?」と、武部さんは面白がってくれてました。武部さんはアーティストに寄り添って下さるんです。その向き合い方がアーティスト毎に違うんです。武部さんと出会った時からカバーをやりたいとずっと話していました。藤澤ノリマサという名前を世の中に認知してもらうにはカバーをする事によって、声を知ってもらうということなんじゃないか、という話をして。アーティスト毎に青写真があるとしたら、それが僕にはカバーだったんです。7年ぐらい前からその話をしていたので、昨年『ポップオペラ名曲アルバム』でそれを形にする事が出来ました。

――そのアルバムも聴かせて頂いて、誰もが知っている名曲なんですけど、すごく新鮮に聴こえました。それは藤澤さんの歌唱法のおかげなんですけど、曲によっては1人で歌っているとは思えないじゃないですか。

 デビュー当時は「何人組なんですか」とよく問い合わせがありました(笑)。あと、武部さんのキャリアの中でもワンピアノ、ワンボーカルのアルバムは初めてだそうです。

――武部さんにとっても新鮮な制作だったんですね。

 武部さんはすごくこだわりがあって、僕の声の良さを際立たせるにはピアノしか要らないと仰って下さって。例えばバイオリンを入れたいと思って入れたら、「絶対他も入れたくなるでしょ?」と武部さんに言われたので、僕は「入れたくなります」と答えたら、「じゃあ入れない」と(笑)。

――確かにひとつ入れたら他も入れたくなっちゃいますよね。

 そうなんです。今回のツアーで披露する新曲を作っていた時に、シンプルに作ろうと思っていたんですけど、結局いろいろ入れたくなってしまうんです。最初はシンプルイズベストにナーバスになった部分もあったのですが、このアルバムを作って武部さんの言わんとしていることがすごく分かりました。

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