レゲエアーティストの寿君が18日、配信シングル「大どんでん返し」をリリースした。このシングルは彼にとって2019年初の音源だ。長いインディーズ時代を経て、昨年レゲエ界から飛び出し、メジャーの世界に戦場を移した寿君。EPとアルバムのリリース、全国ツアーの成功と快進撃を続ける、彼の次の一手にはどの様な意図があるのだろうか。今後の展望や、1月におこなった小学校での講演についても含めてインタビュー。【取材=小池直也/撮影=冨田味我】

新しいフィールドに来たことを再確認

――ツイッターで「今日は朝活だ」とつぶやいてらっしゃいましたね。

 最近朝活は多いですね。朝からのラジオに出させてもらったり、早起きすること増えました。でも歌うのは夜なので、うまく生活リズムを調節しないとヤバいなという感じです。週末深夜のライブに体を合わせるためには木曜、金曜が肝ですから(笑)。

――ニューシングルは新年早々「大どんでん返し」ということなのですが。

 制作は先にメロディを出して、それに当てはめる言葉をああでもない、こうでもないとやっていきました。組んではバラし、組んではバラし。今回も5、6曲できるくらい考えましたね。「ここを活かしたいから、ここはやっぱり変えよう」とか、最後の最後までリリックは考えました。今回もマネージャーや事務所の社長や、DJの友達の意見も聞いて。

 最初は「Music is my road」という曲にしようと思っていたんですよ。サビの最後もそれで歌おうとしていました。でも、何かなあと。これだって思えなかったんですよ。他の人にももっと「あー寿わかるわ」という共感を得たかったですし。そんな時友達と話していたら「まさにどんでん返しってことですよね?」と言われたんです。その時に「お!」みたいな(笑)。それで「このテーマでいこう」と決めました。

 僕はインディーズの時代も結構長かったですけど、もっと自分の思い描いた通りにいくと思ってたんです。若気の至りというか。もちろん、だんだんと自分の目標は叶えていきました。でも、僕は武道館やドームツアーに憧れを持っている。そういう大きい夢はおぼろげなままだったんです。やっぱりメジャーというフィールドで、色々な意見や知識を得ながら、緻密に考えていかないとだめなんだなと。それを歌にした、この曲をきっかけに大どんでん返ししたいです。おぼえげな夢も確実なものにしていきたいと思って作りました。

寿君

寿君

――でもデビュー後の作品も「大どんでん返し」なものだったと思うのですが。

 そのつもりではもちろん作ってきましたよ。今まではダンスホールレゲエというものに特化して音楽を作っていたんです。そういうつもりで「一人じゃない」も「あー夏休み」も作りましたし、アルバム『ニューレベ』を出しました。それで全国ツアーも5カ所周らせて頂いた時に、TBS『ひるおび!』のエンディングを聴いて来てくれたお客さんがいたんです。「全くレゲエとかわからないんですか?」と聞いたら、全くわからなくて。湘南乃風の名前は知ってるけど、あまり知らない。ただ「一人じゃない」を聴いて来ましたと。あとは「コンビニで『あー夏休み』がかかってて、それをShazam(携帯でそこで流れている楽曲が何かを認識する携帯アプリ)で知りました」という人もいましたね。

 そういう人が会場に集まってくれていたので、今までとは会場に来る人や年齢層も変わりました。家族連れで来る人や、年配の方もいて。僕が常識としてやっていたレゲエの文化も、そういう人の前でやるとポカンとされてしまうんですよね(笑)。その人たちのために、マニアックな演出はせずに丁寧に歌って、刺さるところに刺さないといけない。「3コーラス目のこの歌詞が好き」という人もいます。今まではそこを端折って、次の曲のビートをつなげたら盛り上がったりしたんですけど、その人から見たら「何で途中で曲終わったんだろう?」ということになってしまいますよね。そういうことを深く考えさせられました。

 なのでツアーのステージングは、しっかりフル尺で曲をやって、楽曲のピッチやコード進行にすごいこだわりました。それによって「新しいフィールドに来た」ということを再確認できましたね。今までやってきたレゲエの作法が間違っていたとは絶対思いませんが、最後に笑いたいなと想いが「大どんでん返し」に入っています。

――コード進行を考えたステージングと言いますと?

 テクニック的な話になりますけどね。インディーズの頃のライブは2時間半とか3時間とかやっちゃってたんです。友達もたくさん出演してくれて、でも先輩を先に出すわけにはいかないじゃないですか。だから同世代や、フックしてあげたい後輩を先に出したり。そういう、ある意味で違うところに気を遣っていました。でも今はケツ上がりで「もう少し見たかった」というところで終わる様に、最後はメジャーコードでハイテンポな「ENDLESS SUMMER」という曲で締める、という流れを心がけています。

 序盤はメジャーコードでノリやすい「SPECIAL THANX」でやったり、中盤はマイナーコードでゆったりできる様な「Touch inna Jamaica」という曲でレゲエを伝えたり。途中でバラードとかもはさんで、徐々に上げていって「あー夏休み」で持っていく、みたいな。

――「大どんでん返し」は結構ポップですよね。

 「あー夏休み」の時もお世話になった、NAOKI-Tさんがビートを作ってくれました。彼は僕が出したフロウ(リズム)にすごい反応してくれるんです。「もっとこうしたら」と意見もくれるし、ウマがすごい合うんですよ。なのでまたやりたいな、という気持ちがすごく強くて。最初に頂いたビートは結構ロックなテイストが含まれていたんですけど、ストリングスや足回り(リズムやベース)をクラブミュージックに寄せてもらいました。ロックな感じにしたままならもっとポップになったと思いますけど、自分の体から生まれてくるフロウを大事に残したかったんです。

 4文字や5文字で韻を踏むのが僕の得意なやり方なんですけど、そこに特化してしまうと言いたいことも限られてくるじゃないですか。それよりも「伝えるべきことを伝える」ということを重視しました。そうすれば『ひるおび』で聴いてくれる様になったファンの方ももっと響いてくれるはずだし、そういう人がもっと増えるかなと思いますし。活動の幅も広げていきたいと思っていたこともあって、こういうサウンドになりました。

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