スリーピースバンドの真空ホロウが3月20日、アルバム『たやすくハッピーエンドなんかにするな』をリリース。2012年にメジャーデビュー。15年に2人が脱退、そこから松本明人(Vo/Gt)1人で真空ホロウの活動を続け、16年に高原未奈(Ba/Cho)、17年にMIZUKI(Dr/Cho)が加入。今作は現在の3人になってから初のアルバムで、Instagramフォロワー10万人を持つ人気SNS漫画家ごめん氏とのコラボレーションで出来上がった作品。今作について松本明人は「女性に伝わる言葉、音がテーマ」と話し、以前とは違った表現で歌いあげた。今作の制作背景について聞くとともに、真空ホロウの変化について3人に話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

目標はNHKに出演!?

――3人から1人、そして2人、再び3人での活動になった真空ホロウですが、バンドというところでの意識に変化が?

松本明人 バンドというものに対しての向き合い方が根本から変わった気がしています。やっている方向性は以前とは別物なんです。新しいものとして捉えています。

松本明人

高原未奈 私は2人だった頃の前作『いっそやみさえうけいれて』と、3人になった今では全然違う感覚があります。MIZUKIちゃんが入った事による変化もそうですし、以前とはコラボする方との関わり方も変化したと感じています。

高原未奈

――メンバーもそうですけど、関わる人がどんどん増えていっていますよね。

松本明人 ドラクエみたいに増えていってますね(笑)。

――群青劇のようになっていっている感覚もあります。MIZUKIさんは今の真空ホロウに入った思いは?

MIZUKI ドラクエじゃないですけど、一緒に戦いたいなと思って。

MIZUKI

松本明人 みんな口々にこのプロジェクトで、方向性を定めて大きくなろうというのがあります。3人とも向いている方向が一緒なんです。

――方向性というところで、現在目指していることは?

松本明人 この『たやすくハッピーエンドなんかにするな』という作品を出した事での目標はNHKに出ることです。最初は僕らの曲が『NHK みんなのうた』で流れたら嬉しいなというのがありました。そこからNHKというものに執着するようになりました。昔からよくNHKを観ていて、憧れがありました。忘れていた時期もあったんですけど、ふとその思いが蘇って、今は明確にNHKに出たいというのがあります。紅白(歌合戦)というのも大きな目標です。

――その中で今作はSNS漫画家のごめんさんとコラボされていますが、その経緯は?

松本明人 僕が女性の心を歌いたいとなった時に、歌や曲の力だけではなくて視覚の力を借りたいと考えて、僕がネットで絵師さんを探しました。その中で見つけたのがごめんさんでした。すでに出来ていた「おんなごころ」という曲のリリックビデオのリンクと一緒に「感銘を受けました」とメールさせて頂きました。

――高原さんとMIZUKIさんの加入時もメールでアプローチされたのでしょうか。

松本明人 僭越ながらオーディションを開かせてもらいまして、その時に高原さんは他の方と比べて良い意味で主張がなかったんです。歌をひき立ててくれるベースだったので、それでもう帰る時には決めていました。

高原未奈 オーディションの時はテクニックを見せようという気は全くなかったです。もともと真空ホロウの曲がすごく好きだったので、完全に暗譜して、エフェクターの切り替えも練習して臨んだのを覚えています。確かその時はワンマンまで1カ月切っていたので、「ある程度仕込んでおかないと」と思いました。私はその時の合わせた感触で、もうこのままライブが出来るんじゃないかと思えました。

――お互いに感じるものがあったんですね。MIZUKIさんもオーディションで?

MIZUKI 私は真空ホロウのサポートで鍵盤を弾いている西村奈央さんと一緒に仕事をしたことがあって、その西村さんから「真空ホロウがドラムを探しているよ」と話を聞いて、紹介してもらいました。

松本明人 僕がMIZUKIちゃんを選んだ理由の一つに、負けん気があるというところもありました。高原さん2人で活動していた時に気持ちの面で学んだことが沢山ありました。紹介してくれた西村さんから、MIZUKIちゃんは一回挫折をしていると聞いていました。そこから這い上がって生まれ変わって活動しているから、今の僕に合うかもしれないと。

――MIZUKIさんの挫折というのは?

MIZUKI 札幌にいた時代に演奏について「全然叩けてない」、「歌いにくい」とめちゃくちゃダメ出しをされて…。そこで大泣きして東京に来たんです。それを見返したいという気持ちもあって、まだまだ頑張らないとなと思っています。

――今の演奏をお聴きした感じでは、そんな時代があった事に驚きです。さて、今作は女性の気持ちをアウトプットするというところで、皆さんでどのような話をされて、制作に臨まれたのでしょうか。

松本明人 「おんなごころ」が完成したのが2年ぐらい前なんですけど、そこから女性に伝わる言葉、音をテーマで行こうと作詞家の矢作綾加さんと、サウンドプロデューサーの高慶 CO-K 卓史さん、ごめんさん、スタッフと話し合って決めました。音に関しても歪みの後に残るディレイやリバーブの耳障りな部分やリズムの世話しさ緩急にもこだわりました。「おんなごころ」のアレンジを手伝って頂いた戸田(有里子)さんが、女性と男性の気持ちを表現するのに弦楽器を変えるということを教えて頂いて。男性の時はチェロで表現することがインストがメインのクラシックではあるみたいなんです。

――楽器でもそういった住み分けがあるんですね。その中で矢作さんに歌詞を書いてもらいましたが、その歌詞を読んでどのような思いが生まれましたか?

松本明人 僕は女性の気持ちがわかると自負していたんですけど、歌詞を読ませて頂いてやっぱり難しいなと思いました(笑)。でも、女性だけではなく男性にも伝わるものがあるので、すんなり入れました。僕は主人公を演じているんですけど、それもあって簡単に入ることができたんです。

高原未奈 歌詞もそうですし、サウンドにも共通して出ていたことが郷愁感でした。心の穴とその郷愁感というものが同じなんじゃないかなと。その満たされない何かを歌詞にもサウンドにも2人は提示してくれたので、私もそれを感じながら弾こうと思いました。聴いている人も寂しい気持ちになると思うんですけど、それを共有することでその穴が埋まっていくのではないかなと感じました。

――MIZUKIさんはどのようなことを意識してドラムに落とし込みましたか。

MIZUKI 私は気持ちです。エモーショナルな部分でついて行こうと思って叩きました。ライブで同じ曲でも怒っていたり、切なかったり歌の響かせ方がいつも違うんですけど、私はその歌に合わせて叩いているので、レコーディングでも同じような感覚で叩きました。

松本明人 感情移入し過ぎて、たまに顔芸で叩いてますから(笑)。

MIZUKI 入りすぎてバラード系やシリアスな曲の時に表情がけっこう変わるので、そこは見ないで欲しいなあ(笑)。

――そう言われると見たくなってしまいますけど(笑)。今作もごめんさんの描いた作品とのコラボで、今までよりも絵や映像と音楽の親和性はより高まっていますよね?

松本明人 そうですね。音も絵も同じだと思うんですけど、今どこでも聴けたり、観たり出来るじゃないですか?  何でも安っぽく見えてしまっている感覚もあります。今は色んなものが散漫していて、誰も基準がないように思えるんです。なので、僕らがやりたいことの方向性を定めた方が説得力が出るんじゃないかなと思いました。

――今作もコンセプトがしっかりとあり、わかりやすさも感じられます。その中でタイトルの「たやすくハッピーエンドなんかにするな」はどのように付けたのですか。

松本明人 もともとタイトルは文章にしようと思っていました。ごめんさんが持ってきた中に「ハッピーエンド」という言葉がありました。そこから、ごめんさんと矢作さんの言葉の中からみんなで選んで、ハッピーエンドを使って文章にしました。前作『いっそやみさえうけいれて』からの流れを組んでいるところもあるんですけど。

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