昨年デビュー20周年を迎えたシンガーソングライターのaikoが3月10日、マリンメッセ福岡でアリーナツアー『aiko Live Tour「Love Like Pop vol.21』のツアーファイナルをおこなった。ツアーは1月26日から大阪城ホールを皮切りに全国6公演をおこなうというもの。繊細さとパワフルさの両方を兼ね備えたパフォーマンスと、新旧織り交ぜたセットリストで多くのファンを魅了。「ロージー」など披露した、さいたまスーパーアリーナ公演初日となった2月9日の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

しっかりと束縛したいと思います

ライブのもよう

 この日の関東地方は雪が降り、各所で積雪もみられた。暦の上では春だというのに、まだまだ寒い日が身に染みるなか、会場の外には多くのファンが入場ゲートに向かう姿が見える。会場に入るとステージから長く伸びる花道。ここを全力で駆け抜けるaikoの姿が容易に想像でき、会場は老若男女、幅広い年齢層のオーディエンスの期待感で満ちていた。

 開演時刻になり高揚感を煽るVTRがステージ前方に下がる巨大なスクリーンに投影。その美しい映像は現実世界から引き離してくれるような感覚を与えてくれるオープニングだ。そのスクリーンの幕が落ちると、そこには佇むaikoの姿。届けられたのは「熱」。叙情的な歌声がホールに響き渡る。その歌声に手を合わせ見とれているオーディエンスも見られた。このしっとりとした始まりが適度な緊張感を生み出し、アップチューン「ハナガサイタ」とのコントラストをより一層強くしていた。会場はこの日配られたザイロバンド(※リストバンド型ライト)によるカラフルな光で埋め尽くされ、幻想的な空間を作り上げていた。

 ブラス隊によるゴージャスなサウンドが心躍らせ、オーディエンスもクラップでもり立てた「遊園地」、続いて「透明ドロップ」を歌い上げここで本日初MC。aikoは「寒かったろうに」とこの雪の中、足を運んでくれたオーディエンスに労いの言葉を掛ける。aikoはザイロバンドのことを“束縛バンド”と呼んでいるようで、「しっかりと束縛したいと思います」と、このステージへの意気込みをのぞかせた。

 リズミックに伸びやかな声で楽しませた「お薬」から代表曲のひとつ「ボーイフレンド」へ。会場が一体となったクラップもシンガロングも前半戦のハイライトとも言える盛り上がりを見せた。元気よく花道を走る姿は、カンフル剤のような効果を観ているものに与えてくれる。

 続いて、美しく紡がれるピアノの旋律。3拍子のミディアムナンバー「もっと」を届けた。力強さと儚さという相反する表情を打ち出した歌声。その絶妙なバランス感覚で楽曲の世界へ深くいざなってくれる。aikoは「全6公演、噛み締めてライブをやりたい」と告げると、オーディエンスと会話をするかのようにトークをするaiko。このアットホームな空間も彼女のライブの醍醐味だ。目立った声には「なになに?」と聞き返し、決してスルーすることなく、丁寧に受け答えする姿がそこにはあった。

 「白い道」、「あなたと握手」に続いて披露された「密かなさよならの仕方」。イナタいギターサウンドが、ブリティッシュ・ロックを抱負とさせるロックチューンだ。真紅に染まるステージ、天井から釣り下げられたLEDスクリーンには雨が降りしきり、その雨は次第に砂嵐のようなノイズへと変化していく。

みんなが呼んでくれれば、すぐに行くよ

aiko(撮影=岡田貴之)

 ここから、花道の中央に設置されたセンターステージへ、サポートメンバーとともに移動。ステージにはミニマムなバンドセットが組まれており、アコースティックバージョンで「明日の歌」を歌唱。続いては、昨年他界した漫画家のさくらももことaikoは交友があり、その中で生まれたという楽曲「ドレミ」。この曲はもし自分が小学生の時にちびまる子ちゃんと友達だったらという空想を描いたナンバー。心の琴線に触れるようなサウンドに、ライティングもサクラ色で包まれる中、aikoは情感を込め歌い上げていく。

 aikoによるピアノの弾き語りでスタートした「あたしの向こう」はバンドサウンドへとドラマチックに展開し、花道の最先端でパフォーマンス。そして、aikoのステージで恒例の「男子」「女子」のコール&レスポンスは、より一層一体感を強めてくれる。銀テープが盛大に放たれ、キラキラと美しい光景が目の前に広がった「ストロー」は、笑顔で軽快にステップを踏むaikoの姿が印象的。

 「ひまわりになったら」では、ステージ後方のスクリーンに過去のライブ映像が投影され、懐かしい映像に目を奪われながら、“最新のaiko”の歌声を堪能。続いて、畳み掛けるシャッフルビートがボルテージを最高潮まで高めてくれた「夢見る隙間」。アグレッシブで華やかなパフォーマンスに盛大な歓声を送るオーディエンス。そして、「次が最後の曲です」という言葉に、全力の「え~」という終わりを惜しむ声が響き渡る。その声にaikoは「みんなが呼んでくれれば、すぐに行くよ」と嬉しい言葉を投げかけ、久しぶりの披露となったメジャー通算8枚目のシングル「ロージー」。隅々まで届けと張り裂けそうなテンションの高い歌声。エンディングで見せた圧巻のロングトーンは心震わせるものがあった。

みんなも好きなことは続けてほしい

aiko(撮影=岡田貴之)

 アンコールは「ナキ・ムシ」、「あした」、「花火」など初期の楽曲を含む10曲をメドレーで披露。バラエティに富んだ選曲で大いに会場を沸かせた。

 aikoは「みんなと過ごせたから20周年を迎えることが出来たんやなと思っています。これからも続けられるまで頑張って続けていきます。アカンとなったらみんなに言います。永遠はたぶんないと思う。でも、悲しい話をしているわけではなくて、楽しいことってきっと終りが来るから楽しいんだと思います。みんなも好きなことは続けてほしいな。嫌なこともあると思うけど、その先に楽しいことが来ると思うねんな。私も頑張るので、みんなも一生懸命頑張って、息を抜きながら楽しいものをいっぱい見て、好きなことを続けてください」と語った。

 「アンコールも頑張って歌いたいと思います。皆さん宜しくお願いします」と投げかけ届けたのは「彼の落書き」。“ロックモード”のaikoを全面に打ち出し、お立ち台に足を掛け歌い上げ、「最後まで楽しんで帰ってね!」と盛り上がり必至のナンバー「be master of life」を投下。花道に座り込んでのシャウトが会場に轟く。バンドメンバー紹介を兼ねてのソロ回しからのブレイク。大歓声が響くなか、aikoはイヤモニを外しダイレクトにオーディエンスの声を受け止め、ラストのサビを全霊でパフォーマンスし、さいたまスーパーアリーナ初日の公演は大団円を迎えた。

 アリーナというスケールの大きな会場にも、小さなライブハウスだとしてもaikoのパフォーマンスの力強さは変わらない。どんな場所でも人を感動させる力がある。それはきっと、強さも弱さもステージでさらけ出すその姿に、みんなが共感、共鳴するからではないか。それがよりお互いの絆を強くしているのではと感じた。aikoが最後に残した「ライブを最初から最後までやっても夢みたいでした。家に帰って洗濯をするのが嫌です…。みんなのせいですよ!」と、嬉しそうな姿が印象的だった。

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