AAAや三代目J SOUL BROTHERSなど日本の音楽シーンでダンス&ボーカルグループは高い人気を誇る。Perfumeなどの振付を担当するELEVENPLAY主宰の演出振付家MIKIKOは星野源の「恋」の“恋ダンス”の振付で日本中にその名を轟かせた。さらにリアーナのバックダンサーを務める菅原小春など、世界を股に掛ける日本人ダンサーも多い。そんななか、米・ロサンゼルスで本選がおこなわれる超大型ダンスコンテスト『World Of Dance』のジュニア部門で2年連続優勝(2016年・2017年)、さらに昨年は『NBC World of Dance』準優勝を手にしたダンスグループFabulous Sistersをご存知だろうか。ヒップホップのスタイルを中心にした海外勢に対し、流行にとらわれない自由な発想のパフォーマンスは高く評価された。福島と東京から集められたメンバーを統率するのは振付家のRuuだ。彼女が世界で戦うことを決めた理由とは。最近振付を担当した、12人組のグローバルガールズグループIZ*ONEの「ご機嫌サヨナラ」についても含め、彼女に話を聞いた。【取材・撮影=小池直也】

スタイルがかぶらないからやりたい放題

――私はRuuさんとFabulous Sistersのことを『World of Dance』で知りました。そもそも、なぜあのコンテストに出場を?

 もともとYoutubeでは見ていて、面白いなと思ってはいました。日本にも『Legend Tokyo』というコレオグラファー(振付師)のコンテストがあって、それには18歳くらいから挑戦し始めて、5年間ずっと出ていたんです。でも1回も優勝できなかったんですよ。全部「審査員賞」とかで…。それが仕事につながったことはもちろんあるんですけど、5回目の時に「これで終わりにする」と決めていました。でも結局優勝できなかったので「やっぱり私は日本ではダメだな」と(笑)。

 自分の作品に自信がありましたし、評価されないのが悔しかったんです。前々から「もしかして自分の感性は日本より海外の方がウケるのでは?」と考えてもいて。日本特有ですが、海外で結果を残したら、国内での評価も変わるじゃないですか。ただアメリカのコンテストは少しハードルが高い感じがありましたね。やっている人も全然いなかったですし。当時は実際どのくらいの予算で、どれくらい練習して行けばいいのかということもわからなかった。だから簡単に決められなかったんです。

 でも5回目で優勝できなかったのをきっかけに決心できました。運よく半年後に『World of Dance』の日本予選があったので、シフトチェンジしましたね。自分の周りで一緒に戦い続けてくれた生徒とチームを作りまだ見た事のない景色を見たいと思いました。

――『World of Dance』では2016年から2連覇、2018年の『NBC World of Dance』も部門準優勝という結果を残していて、すごいですね。

 壮絶でしたが本当に楽しかったですよ(笑)。全てが変わりましたね。この3年で私個人はかなりの変化があって、メンバーも海外に呼んでいただく回数がかなり増えました。先輩方は「突き抜けたなー」と言ってくださったり。逆に同年代の友達は減ったかもしれません(笑)。

――個人的にFabulous Sistersの動画で一番好きなのは、Sam Sparroの「Black and Gold」を題材にしたパフォーマンスでした。あの作品の制作について教えてください。

 私もあの作品が一番好きです。自分の頭の中にあった「Black and Gold」の世界観をやっと形にできたんじゃないかなと思います。「あ、いいじゃん!」みたいに、その場のノリでパッと決める事もあれば、1つの動きをああでもない、こうでもないと何時間も悩むこともあります。でも作るスピードは誰よりも早いと思います。例えば衣裳とかが決まったら、私が最初に全部着たりとかするんですよ。メンバーが着る前に(笑)。特にあの作品では、マントをどう使えるかを考えていました。これをこう被ったら、とか面白い点をたくさん見つけ出して、当てはめていく感じ。15秒や20秒に1回、面白い技とか、見栄えのある構成を絶対入れるんです。そのなかの1つがエンディングの衣裳をかぶるところでした。

 作品で最初に決めるのは音楽。曲はあの本番の5日前くらいに決まったんですよ。あの番組は選曲がすごく厳しいんです。100曲出して1曲通るか、通らないかみたいな。やっぱり有名な曲じゃないと、それが視聴率に関係してくるので。勝ち上がるほど厳しくなって、みんなのある程度知ってるキャッチーな曲でしか許可してもらえないんです。インスト(歌なし曲)やコアな曲は絶対使えない。それでいくつかの候補のなかから「Black and Gold」になりました。

 曲が決まったら、その日か次の日にリミックスする部屋で音源を編集してもらいました。その場で「テンポはこうしたい」「リズムはこうしたい」と話して、1分から1分半くらいに編集してもらいます。その後もメールとかでやりとりしながら、2日くらいかけて曲が完成。そこから振り入れをしたり、ステージングの打ち合わせをしたり。それでギリギリ、カメラリハーサル、本番という流れです。海外だといつもこういう感じですね。事前に準備したのは、番組で1個目に披露した作品だけでした。

――先ほどの「Black and Gold」のエンディングは6/8拍子で、ダンサーが6:6の陣形で1拍につき1人しゃがみます。あれは圧巻でした。どのような練習を?

 あれは「せーの、123、223、323、423」と声を出しながら、みんな練習していました。何回もビデオに撮って、合わせていったんです。あの本番が一番きれいに決まったと思いますよ。練習は本当に地味ですから(笑)。なので帰国してから、チームを抜けたり、ダンスを辞めてしまった子もいます。あの時のメンバーはもう半分くらいしか残っていないかもしれません。やっぱり大変なんですよ。「もっと自由に楽しく踊りたい」と言いだす子もいたりして。でも世界の舞台や、海外で踊れる事ってそんな簡単なことじゃないですから。

――動画のコメント欄では「Fabulous Sistersは手を早く動かしているだけ」「彼女たちは個性的だ」「ありがちなヒップホップじゃないから新しい」など議論が巻き起こっていました。

 そうですね。コメントは見たりしますが、あまり興味がありません。気にしないし、そこまで深く見たりしないです。でも何かコメントしてくれることがありがたいです。日本だといいとか悪いとかもそこまで言ってくれないので。私たちがちょっと異質だというのは、ラッキーですよ。何しても被らないじゃないですか(笑)。「あのチームとコンセプト被ったらどうしよう」という不安がないのは、楽ですね。私みたいなスタイルは日本人でも全然いないですが、海外だとやりたい放題。

 私自身、もともとヒップホップとかもやってきて、自分の体じゃ無理だなと感じていました。ヒップホップ人口もいっぱいいて、そこで勝ち上がるのも難しいですし、筋肉もたくさん付いてしまいます。あと女の子のお母さんは、子どもにきれいで素敵なダンスをしてもらいたいんじゃないかなって思うんです。女の子に生まれたからには、女の子を最大に活かせるダンスをしていきたい。

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