ピース・又吉直樹と元チャットモンチー・橋本絵莉子がMCを務める、BSスカパーの番組『スズコウ★ナイト3』が、3月4日・18日の2回にわたり前後編で放送される。ミュージシャンをゲストに酒を嗜みながらトークする番組。今回は、忘れらんねえよ・柴田隆浩、元andymori・現ALの小山田壮平、田辺マモルをゲストに、ミュージシャン同士ならではの音楽談議で盛り上がった。橋本にとってはチャットモンチー完結後初の仕事。「緊張した」という彼女は弾き語りで新曲も初披露。「刺激になりました」という橋本は今後の音楽活動について「ぼちぼちやっていきたい」と意欲をみせるなど、実りのある収録となった。【取材=木村陽仁】

○柴田隆浩・小山田壮平・田辺マモル、収録後インタビュー
○又吉直樹×橋本絵莉子、収録後インタビュー
○収録中の写真

収録レポート

 寒さ厳しい1月末。舞台は東京・蒲田のスズコウ。午後5時半過ぎに始まった収録は気が付けば同10時半をまわっていた。アットホームな雰囲気が漂う座敷に、馴染みのある音楽仲間。酒を口で転がせば、会話も弾む。まったりとした空気感のなかで気任せに弾き語れば、聴く方も涙もポロり。そんな光景が今回は広がっていた。

 大のチャットモンチーファンと言う柴田。チャットモンチーのトリビュート盤にも参加しているが、対峙して話すのはこの日が初めて。そわそわした様子の柴田は「チャットモンチーがきっかけでバンドを始めました。もう好き過ぎて…知られたくなかったし、会えなかった」とこれまでは敢えて会うのを避けていたということを明かせば、橋本は「大好きだと仰ってくださって、でも一向に姿を現さなくて」と笑み。その柴田は「憧れのスターだから。この収録を終えたらしばらく姿を消します」と照れていた。

柴田隆浩

柴田隆浩

 その柴田が「とても尊敬している」と称えたのは小山田。チャットとはandymori時代に対バンしたことがあるそうで、この日は旧交を温めるように当時を振り返った。チャットに助けられたことを語った小山田は「あの時のことは一生忘れない」と橋本に感謝の言葉を送っていた。

 一方、酒席にカバンを持って登場したのは田辺。現在は育児に専念し活動は休止。音楽活動からは身を引いているといい、こうして公の場に登場するのは10年ぶり。そんな田辺の楽曲をこれまで触れてこなかったという又吉は、この収録に臨むに当たって聴いたそうで「とてもかっこいい」、柴田も「凄く優しい」と称えた。一方、田辺を以前から知る小山田は「ずっと好きで歌詞がいい」とし、収録前も田辺の楽曲を聴いていたそうだ。

小山田壮平

小山田壮平

 「かっこいい」という称賛の声を浴びる田辺だが、着ていた服のフードがひっくり返っていて突っ込まれる場面も。苦笑いを浮かべるその表情からは人柄の良さが滲み出ていた。田辺は「(最後に)アルバムを出したのが2009年。子どもが出来てその世話に追われて気づけば長い月日が経っていて。(番組の)オファーが来た時はドッキリかと思った」と笑み。又吉が「番組Pが好きでオファーしたそうです」というエピソードを明かせば「自分のファンは全国で100人もいないぐらい」。謙遜する田辺に又吉は「そのうち2人はここいますよ」と笑いを交えながら称えていた。

 乾杯を済ませた5人は酒を飲み交わしながら肴をつつき、トークを弾ませていく。序盤は田辺の育児論を軸に進んだ。橋本は田辺に「子育て中は曲を作りたいと思いましたか?」と質問。柴田も「そういう生活(子育て)の中で音楽はどういう風に出てくるのだろ?」と興味津々。その話のながれで田辺は挨拶代わりに「プレイボーイのうた」を弾き語った。曲名とは真逆の男の切ない願望が滲み出た哀愁が漂う歌。歌い終えた田辺は「ガクガクです…」と緊張の色をみせたが、周囲は「良かった」と賛辞を送った。

田辺マモル

田辺マモル

 その後、チャットモンチー完結の秘話に触れた。「やり切った」という橋本は完結後、「高校生からやっているから(音楽自体を)やめてもいいかなと」と思ったという。しかし、友人の結婚式で改めて音楽が好きだということを再認識。「喜ばせたいと思って一人でスタジオに入って用意して。これまで皆が用意してくれたから。(作った曲を)一人の人に向かってやることが嬉しくて。何も違和感なくスルスルとできたから好きなのかなって」と回顧した。

 それをきっかけに話題は「音楽を辞めようと思ったことがあったか」。「やめようと思ったことがない。無気力になるけど、結局戻る」という小山田。深くうなずく柴田は「自分を輝かせる手段は音楽しかない。俺は格好良くなくて自分に自信がないけど、音楽は格好良くなれる。女性に対しても無能だし、人見知りだけど歌には救われる」と語った。

橋本絵莉子

橋本絵莉子

 その流れから橋本が弾き語りでNOKKOの「ナチュラル」をカバーした。奥深さと透き通りながらも力強い歌声は健在。又吉は「凄い素敵です」、柴田は「神様です」とその歌声に酔った。そんな橋本は「デビュー前の出囃子に使っていた曲で、家で片づけをしていたら8センチのCDが出てきて“SE”と書いてあって。懐かしいなと思って」と当時の淡い思い出に身を寄せた。

 それぞれの過去が明かされる中で、柴田はチャットモンチーの音楽を聴いて「見ていて美しいなと。俺のなりたい音楽だった」とバンドを始めた経緯を紹介。そして、感情むき出しに「この高鳴りをなんと呼ぶ」を歌った。小山田や橋本が音楽をはじめるきっかけとなったエピソードも語られた。

又吉直樹

又吉直樹

 話題は「ミュージシャンになっていなかったら」。そのなかで小山田は「投げKISSをあげるよ」を歌った。アコギを指で弾く。滑らかな歌声は歌詞にある<大丈夫ですよ><問題ないですよ>という言葉を際立たせていた。優しく柔らかみのある歌声は少年の純朴さが滲み出ていた。

 酒や肴、そして弾き語りは更にトークは弾ませる。歌詞を書くきっかけや作り方、音楽論までに及んだ。そのなかで田辺は「僕がやっているのは歌ではあるけど音楽ではないかもしれないです。ジャンルとしてはフォークだけどスタイルはパンクに近いかも」と思いを明かした。

柴田隆浩、小山田壮平、田辺マモル

柴田隆浩、小山田壮平、田辺マモル

 また又吉も、環境によって人や作品は変わるという趣旨を、芸人を引き合いに「凄く面白くても急にう無くなってしまうことがある。20代になって社会人になったらウケなくなる。変な羽が生えてきて…そんなとき方向性を変える。なかにはバケモンも出てくる。いろいろな環境でそうなる。音楽もそうだと思う」と語った。

 後半になって緊張がほぐれてきたメンバー。トークは様々な方向に流れた。そのなか田辺の歌に涙を流す又吉の姿もあった。更に橋本は喉を壊した際のエピソードも。また、4人の意外な繋がりも見えた。この日最終的に歌った楽曲は16曲にもおよんだ。実際の放送ではどの部分が使われるか不明だが、トークや弾き語り、普段見られない貴重な内容となった。なお、収録後には記者による取材にも応じた。その内容は次の通り。

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