挑戦だった「雨のように泣いてやれ」

――3曲目の「女の友情」も「いつかお母さんになれたら」同様にテーマが興味深いです。

 母性に満ち溢れている生き物だから、人の事が気になってしまうし、そこの感度が高いからか、悪口にも繋がってしまうのかなと思います。でも、親友になってしまったら家族のように愛情を降り注げるんです。それは歳を重ねれば重ねるほど感じます。今、自分が親友に支えてもらっているというのも大きいんですけど。

――ライナーノーツに書いてある、「赤い糸なんかじゃなくてへその緒みたいな強い女の友情」という表現が良いですね。へその緒のインパクトがすごいなと(笑)。

 これ、ライナーノーツを書いている時になんでこの言葉を歌詞に入れなかったんだろうと思いました(笑)。すごく良い言葉じゃないかと。

――いずれどこかで使って下さい(笑)。あと、気になったのが<チャチャチャチャ>という擬音なのですが、これは何をイメージされたのですか。

 自然と出て来てしまったフレーズなんです。おそらく歌詞が深刻だし、女性の嫌な部分を書いてしまったから、「まあ、いいじゃん」みたいな感じで出てきてしまって。スタッフさんからも「このチャチャチャが懐かしい感じがして良いよね」と言ってくれて(笑)。

――これが入っているかいないかで、曲の印象がだいぶ変わるなと思いました。例えば歌詞には表記されていないですけど、「いつかお母さんになれたら」で聴ける<ラララ>とかも自然と出てきて?

 そうです。それはシンガーソングライターのエゴと言いますか、ここでビブラートとかフェイクをしてとかそういうのが昔ありました。その中で自然とラララとか言っちゃっていて(笑)。言わないバージョンも録ってみるんですけど、やっぱりこの<ラララ>はいるなと思って。そこの駆け引きはしっかりやるようにはしています。

――<ラララ>ひとつでもこだわりが詰まっているんですね。さて、今回リード曲には「雨のように泣いてやれ」なのですが、この曲をイチ押しした理由とは? どの曲がリードになってもおかしくないと思いました。

 いつもそうなんですけど、どの曲をリードにしようとか考えずに作っていて、全部出来てからすごく悩むんです。たぶん今までだったら「バカか私は」や「女の友情」がリードになっていたと思います。でも、「雨のように泣いてやれ」は、初めて打ち込みを取り入れていたり、自分の中であまりなかった曲調だなと思いました。なかったというところでは「甘っちょろい私が目に染みて」もそうで、自分の中で今までとは違う2曲でした。

 その中で「雨のように泣いてやれ」は昔のヒップホップのような要素もあり、女性というところに腹を括って、一周回ってさらけ出したから「心にHIPHOPを」をというテーマで制作していったので、そこに通じるのがこの曲なのかなと思いました。アルバムには聴きやすい曲はたくさんあると思うんですけど、耳に引っかかる曲というところでリード曲にしてみようとなりました。

――テーマに密接した楽曲だったんですね。そして、昨年はEmiさんが雨女だというのも認めざるをえなくて...。

 去年のツアーはほぼ雨で、夏フェスでも『RISING SUN (ROCK FESTIVAL)』が一番ドシゃ降りで。それでも、お客さんは泣いたり笑ったりして聴いていてくれたのが、凄く嬉しくて。そこから人が泣ける機会を作れるということはすごいことかもしれないと思いました。

――逆に雨が降ったことによって気づきがあったんですね。この曲のMVも楽しみです。さて、6曲目の「痛ぇ」の歌詞に出てくる<ピストル>は竹原ピストルさんのことだったんですね。

 そうなんです。いつ聴いても音楽で泣かされたり、自分も頑張っているつもりなんだけど、ピストルさんの佇まいを見ていると足りないんだなと思わされて、悔しい思いになるんですけど(笑)。生き様や人柄が凄くでる音楽なんだなと。

――生き様や人柄が出るような音楽って良いですよね。

NakamuraEmi

 そうじゃないと自分じゃなくても良いのかなと思っていて、自分らしい生き方で音楽を作りたいなと思っています。

――今作の中で一番自分らしさが出たなと思う曲はどれだと思いますか。

 「甘っちょろい私が目に染みて」です。この曲は昔の自分が出て来たような気がしていて、頑張れ頑張れ、しっかりしなさいという曲を書き続けたなかで、自分の言葉なんだけど小説みたいな、ある意味自分っぽくなくて直接的じゃないからか、感情が入っていって、「いいじゃんいいじゃん」と自分を認められたのが、初めてでした。この曲は私を救ってくれる曲だなと今思っています。自分らしいというか、また一つ大事な曲が出来たなと感じています。

――この曲はヴィンテージのリボンマイクで録っていることもあり、質感が他の曲とも違いますよね。凄く曲と合っています。

 この年代のマイクで録るということはあまりないらしく、1曲全部このマイクで録ることはエンジニアの兼重さんにとってもチャレンジだったみたいです。でも、私は「新聞」の時にも少しだけ使ったこともあり、あの音が大好きだったので「やってみたい!」と思いました。他の曲は絵にすると顔がハッキリしているんですけど、この曲だけ遠目で表情がよく分からない絵なんです。それもあってこのリボンマイクの音がイメージにすごく合っていると思います。

――その声の雰囲気も感じてもらえたら楽しいですね。さて、今年もツアーがありますが、どんな1年にしたいですか。

 前作よりも良いアルバムが出来たと今は思っているので、それを生き物としてライブで出すのが楽しみですし、それがVol.7、次の作品に注ぎ込むことになるのかなと思っています。大きな目標というよりは今出来ることを一つひとつしっかりとやっていきたいです。

(おわり)

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