音楽って、ワンフレーズでその時の状況が全部蘇る、それってすごいなと思う

――視点を変えて、音楽についておうかがいしていきたいと思います。本作は音楽をYAS-KAZさんが担当されたというところもありますが、何かエコーの効いた重厚なサウンドに、一時期流行った“イヤミス”的な雰囲気を感じました(笑)。全体的に、音楽の影響もかなり強く感じられましたし。

 イヤミスですか、なるほど(笑)。まあ映画にとって音楽って、すごく大事なものだと思うんです。やっぱり音楽をわかっていらっしゃる監督は、素晴らしいですし。リズムというのか好みというのか…後で出来上がった作品を見返して“え?”と思う時もあります。芝居をやっていた時と、全然イメージが違ったりした時に。

 今回は何かすごく日本の歴史なものを感じる一方で、無国籍な感じもすごくするし。サントラは出ないのかな、とか期待しちゃうんですけど(笑)。僕はエミール・クストリッツァという監督のジプシー的な音楽が好きで、『ジプシーのとき』という映画も撮ってらっしゃったんですが、昔はよくサントラなんかを買って聴いていたりしたんですけど。

――劇中の音楽は、どちらかというと効果音的な使われ方をしている印象がありましたね。確かに永瀬さんがお話しされたように、いろんな映画監督さんや俳優さんにおうかがいした話では「音楽が映画の中で果たしている役割は、大きい」と考えられる方も多いようです。

 そうだと思いますね。

永瀬正敏

永瀬正敏

――一方で、音楽という接点については、永瀬さんも昔歌われてシングルなんかも出されたこともあったかと思いますが…。

 そんなことありましたっけ?(笑)。でもそれより僕は、中学の頃はアマチュアバンドを組んでたりしていて、そっちの方が自分としては音楽に接した印象というのは強いですね。映画より音楽の方を先に好きになったし。

――近年は、役者として働かれているということもあり、音楽というものに対してどのような印象がありますか?単純に音楽だけを楽しんで聴くために聴かれているというよりは、雰囲気を作るための音楽というところに気持ちが動いているという感じなのでしょう?

 いや、やっぱり直接的というか、“音楽”をストレートに感じることの方が多いですね。例えば僕は、役者の友達よりミュージシャンの友達が多くて、中でも一番仲がいいのは中村達也(元BLANKEY JET CITY)くん。ずっと地方ロケとかに行っていると、達也くんの産み出す“音”が自分で足りなくなってくるのがわかります(笑)。だから“そろそろ達也くんの音をいれなきゃ”とメールしたりしますけど(笑)

――興味深いエピソードですね(笑)。では普段、音楽だけを聴かれるという機会も多いと?

 そうですね、好きなんで。音楽って、ワンフレーズでその時の状況が全部蘇るし、それって僕はすごいなと思うんです。映画はいろんなことの積み重ねで出来上がって、それを能動的に“よし、見るぞ!”と思うことで、ようやく何かコミュニケイトが取れるけど、音楽は例えば自然に街を歩いていて聴こえてくるだけで、何かを感じたりとか昔のことを思い出したりするというところもあるし、そういった部分からもやっぱり音楽って偉大だなとすごく思ったりするんです。なのでミュージシャンというかアーティストというのはすごく尊敬する存在です、僕にとっては。

――そういう感覚を得る意味でも、普段は、自分でも意識しない感じでぱっと音楽をかけたり、そういう感覚で音楽と接せられているのでしょうか?

 そうですね。僕の中学の時の神様はイギー・ポップだったりとか、ジョー・ストラマーだったり、セックス・ピストルズだったりするんですが、そういうものをは今でもよく聴きますね。

――最近の新しいもので何か刺激になったようなところって、ありますか?

 新しい人たちの音楽も刺激をもらっています、米津玄師さんの「Lemon」という曲がありますが、歌詞が今の僕にはきちゃう歌詞なんです。僕も去年不意に母や大切な方々を突然亡くしていて、その死がすごくリンクしたりすることがあって、ちょっと聴き入ったりとかすることがあります。

――永瀬さんは、音楽というものに対して、どのようなものを求められているのでしょうか? 永瀬さんにとって音楽とはどのようなものなのかと。

 求めるというかまあ切っても切れないもので、心の温度を上げてもらえるもの、じゃないでしょうか。アッパーになる元気をもらうこともあるし、自分を見つめるきっかけになることでもあるし。何があってもギター1本と声だけ、楽器1台だけでも音楽は作っていけるので、僕はとても尊敬しています、音楽というものを。

永瀬正敏

永瀬正敏

(おわり)

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