武道館に集まってくれた人への恩返し

日本武道館でのライブの模様

――今回のアルバムの根底には、どんな気持ちがありますか?

 2018年11月に武道館公演をやったことが、大きかったと思います。デビューから1年ちょっとで武道館でやることが決まり、それから武道館に向けてひたすら邁進した1年だったので、振り返ったときにたくさんのいろんな想いがあるなと思って、この想いを作品にしたいと思いました。今回のアルバムは前作から1年経っていないタームでのリリースでペースが早いんですけど、武道館で感じたものと武道館が終わってから感じたものを、フレッシュなまましっかり詰め込みたいと思いました。

 曲を作ることはいつでもできるけど、日々もっとこうしたほうがいいとか、ああしたほうがいいとか、僕は自分の楽曲に対して自問自答を繰り返す人間なので、「よしこれだ」と決まったらすぐ発表しないと、また何カ月か経ったときに、「もっとこうしよう」と曲が変わってしまうんです。だから、自分がまだフレッシュに思っているうちにパッケージしちゃわなきゃ、もったいないと言うか。

――料理を冷めないうちに早く食べて欲しいみたいな。

 そういう感じもあります(笑)。忘れないうちに自分の中で消化していくと言うか。武道館前から作っていた曲も多いですけど、終わってからすごいスピードで細部を仕上げていきました。

――武道館で感じたことは?

 無心で走ってきて、それをみんながしっかり観てくれて。武道館を埋め尽くすだけの人が、僕たちの音を求めて来てくれていると実感できた日だった。ここまでやってきて良かったと思ったのと同時に、これを失いたくないとも心から思いました。だからこそ、さらにビジョンを大きく持って、もっともっとNulbarichを広げていくことで、武道館に集まってくれた人への恩返しにもなるんじゃないかと思ったし。「プロミュージシャンって、こういうことだな!」っていうことを、ちゃんと感じさせてもらえた感じですね(笑)。

 僕たちが2年間何をやってきたかと言うと、フルスウィングで楽しんできただけで、その音楽を楽しむためにはどうするかだけを考えてやってきた。じゃあ今年も来年も、1~2年目と同じように、余計なことを考えず音楽に集中できる環境で、なおかつみんなも楽しめるものをちゃんとやらなきゃなって。ちゃんとふざけなきゃなって思いました(笑)。

――今回のアルバムにはタイアップ曲も多数収録しています。CMで流れていたり、ドラマや映画に使われたりしますが、そういうメディアから流れてくる自分たちの曲は、どんな風に聴こえますか?

 テレビで流れるのは、自分の中ではまだ慣れてなくて。テレビから自分たちの曲が流れるのを聴くと、まだどこか恥ずかしいですね。もちろんすごく嬉しいから観ていたいけど、恥ずかしいからボリュームを下げちゃうんです。でも僕たちの音楽を選んでくれた人たちがいるということは、すごく嬉しいことです。

――CMの曲などは、書き下ろしですか?

 メロディやリリックを日々溜めていて。CMのお話をいただいて、イメージやコンセプトをうかがって、日々溜めていた引き出しから種を拾っていって、それを組み上げて曲になっていく形です。

 完全に何にもなく観た印象だけで書いたのは、映画『台北暮色』のエンディングテーマ「Silent Wonderland」で、これはまず作品を観て、その感想文みたいな感じで書きました。映画に対して僕が持ったイメージやこう思ったというところが、上手いこと対外的にもその映画を捉えた歌詞になっていて、自分でもすごく良かったなと思います。それ以外のタイアップ曲は、先方のイメージに近い曲がすでにあったので、それをよりタイアップ先のイメージに合うように詰めていく形でしたね。

――映画やドラマのテーマソングを手がけたことで、また新しいファンが増えていますね。

 「Sweet and Sour」はドラマ『デザイナー 渋井直人の休日』のエンディングテーマで、初めてのドラマの曲だったので、「どうなるんだろう?」と、最初は不安もありましたけどね。

 でもこれは、けっこう奇跡的だったと言うか。原作のマンガがあって、お話をいただく前から好きで読んでいた作品だったんです。サブカルチャーの情報もしっかり入っていて面白くて、作品の世界観と自分の表現したいものが、感覚的な部分ですごく近く感じていたんですね。だからお話をいただいて引き出しを開けたら、ドラマに合ったワードやメロディがすでにたくさんあったので、それほど苦労することなく作れました。

――先方は、JQさんが原作のマンガを読んでいたことを知っていたんですか?

 いえ、そういう情報は得ていなかったみたいです。だから本当に偶然と言うか、奇跡的と言うか。主人公の考え方とか生き方とか、ちょっと上手くいかない感じとか、それでも楽しく生きて行くような感じは、すごく自分に近いなって思っていました。その部分でも、このドラマのエンディングテーマをやらせてもらえて、すごく良かったなって思っています。

――タイトルの「Sweet and Sour」や、歌詞に出てくる“Painと笑み”とか、常に両極が存在しているのも特徴ですね。

 そういう全部をひっくるめて、自分の人生をどう楽しむかが大事だと思っています。ありきたりのことだけど、当たり前を素直に歌えた曲じゃないかって思います。

――乾いたギターの音色が、その人生に色を与えてくれている感じ。

 そうですね。コード進行は王道のゴスペルのコード進行なんですけど、この曲のマインドは、デビュー当時の自分たちにすごく近いものがあって。世の中はそんなに簡単なものじゃないよねっていうことが分かった上で、しっかり「次は俺らの番だ」って言っている。期待と不安の両方を持ってドーンという感じ(笑)。初期の「HOME TOWN」という曲も「NEW ERA」もそういう曲でした。「いろいろあるけど、とりあえず肩肘張らずに行こうよ」って言っている感じがあって。この曲を書いている時は、自然とデビュー当時のマインドに戻れていました。

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