平成最後の紅白となった『第69回NHK紅白歌合戦』。そのリハーサルを取材していく中で、私が非常に印象的に感じたのが、郷ひろみのパフォーマンスだった。それは彼の歌った歌、そして披露したパフォーマンスが“昭和、平成を象徴した”ものという印象を感じさせていたことにあった。

 郷が歌ったのは、彼のヒット曲の中の一つ、「GOLDFINGER'99~GO!GO!2018~」。その演出は、NHKホールの入り口よりお笑いユニットのものまねJAPANらたくさんのパフォーマーに囲まれながら階段を降り、ロビー、ホールへと歌いながら移動してくという派手なもの。郷とともに登場したパフォーマー達のいでたちは、サッカー日本代表に野球選手、さらにスピードスケート選手、女子高生、などといったそれぞれバラエティに富んだもの。『第69回NHK紅白歌合戦』は“平成”を、そして2018年を振り返るという意向が感じられるものだったが、その意味では郷のパフォーマンスはこの意向、平成を強く象徴していたようにも思えた。また、同時にその混沌とした組み合わせには、80~90年代の昭和の音楽を感じさせるところもあった。

 80年代に大きな人気を博した音楽番組『ザ・ベストテン』(TBS系)は、その週のシングルレコードセールスランキングを告げる中でアーティストが登場、その歌を披露するといった番組構成を見せていたが、その歌のセットは、近年の歌番組で見られる適度なオブジェとフロアのみ、というシンプルなものと比較すると、派手でかつ視聴者が見た瞬間に「えっ!?」と驚くような混沌としたものも多かったが、どのステージの衝撃も強烈なものがあった一方で、実は明確なコンセプトを持っていた。昭和より平成という時代の流れの中、このイメージは大きなインパクトを持った要素の一つであったとも思われる。

 例えば今でも、この曲のサビの<A CHI CHI A CHI 燃えてるんだろうか>などといった歌詞が流れると、気分が上がってくる人も少なくないだろう。それはこの曲の詞自体が何らかの熱い恋物語的なストーリーを表しながらも、実はそういった意味合いを超越しているからではないか。情熱的であること、アクティブであること、そんな意向がこの曲には感じられた。その結果、ステージでは先述のカオスながら「平成を振り返る」というコンセプトを持った演出も、曲をさらに盛り上げた。

 「GOLDFINGER'99」は郷のオリジナルではなく、同年に歌手のリッキー・マーティンがリリースした「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」(Livin' la Vida Loca)のメロディに日本語の歌詞をつけ、歌ったものだ。しかし現在日本では郷の曲、そして郷の代表曲と認識している人の方が多いのではないだろうか。そんな楽曲を、99年より19年、郷は変わらぬ情熱で歌い続けている。ふと、以前のインタビューで若いアーティストが「時代を象徴するアーティストになりたい」と自身の願いを語っていたことを思い出しながら、郷がこの歌を昭和、平成の“時代を象徴する歌”とし、自身も“時代を象徴するアーティスト”となった、と感じた。

 若いアーティストが果たして今後どのように平成、そして次の年号の時代に対して“時代を象徴するアーティスト”になっていくのかは、想像もつかないところではあるが、いつかこの日に感じた感覚を、若い人たちに同様に感じてみたい、そう思ったひと時だった。【桂 伸也】

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