昨年11月14日にニューアルバ厶をリリースした4人組バンド、alcott。彼らは、最新アルバム発売に先駆けて昨年3月から4カ月連続でシングルを配信リリースした。

 この作品は作家や映像製作会社との“異色のコラボレーション”として話題をさらい、alcottの名を更に広い層へと拡散するきっかけにもなった。

 昨今、alcott以外にも作家や漫画家など、異業種のアーティストとのコラボレーションをおこなうロックバンドが増えている。音楽の新たな魅力を引き出しその世界観を豊かに彩る、“ロックバンド×異業種コラボレーション”を紹介しよう。

alcott×カツセマサヒコ×isai Inc.

 先述のalcottが3月より4カ月連続でリリースした配信シングル群、『LOVE LETTERS』。『告白記』『春へ』『予報外れのラブソング』『小火』の4曲を中心とした構成で、ひとつの恋が始まり、終わりゆくさまを情感豊かに描きあげているこの作品。その世界観を、小説と映像という、音楽とは全く別の形で表現したのがこのプロジェクトだ。

 小説を手がけたのは、ツイッターでのリリカルな妄想ツイートで支持を集める、人気ライターのカツセマサヒコ。映像は映像制作会社isai Inc.が担当している。

 カツセが4曲の収録楽曲をイメージした4編の小説を執筆し、その小説を映像化した短編映画をisai Inc.が作成。映画本編の上映会なども開催された。

 楽曲によって短編映画のように色合いを変える、alcottの甘酸っぱい世界観を、カツセが得意とする繊細な文章で「音楽」から「物語」へと昇華している。更にそれが映像になることで、より生々しく心揺さぶる作品に。「楽曲」「文章」「映像」というすべての要素が完璧なバランスで融合しているコラボレーションだ。

緑黄色社会×沖田円

 作家・沖田円の著作『きみに届け。はじまりの歌』の作中の歌詞を、4人組バンド・緑黄色社会の長屋晴子(Vo/Gt)が書き下ろした。後に曲がつけられ、『リトルシンガー』というタイトルで緑黄色社会の楽曲にもなったこのコラボレーションの誕生のきっかけは、沖田がかねてより緑黄色社会のファンだったというものだ。

 沖田の熱烈な想いが生み出したこのコラボレーションのもととなった小説は、女子高生である主人公が、一度捨てなければならなくなった夢をもう一度自分の力で手繰り寄せるまでの成長の過程を描いた青春物語。

 今要注目の若手作家である沖田の描き出す主人公の熱い感情に、平均年齢20歳である緑黄色社会の瑞々しさが絶妙にマッチしているのが印象的だ。楽曲にも小説にも、唯一無二の若さと“熱”が爽やかにあふれている。

the peggies×小山健

 アニメ主題歌に起用されたことでも話題をさらった、3人組バンドthe peggiesのシングル『君のせい』。このシングルの通常盤ジャケットイラストを、『ツキイチ!生理ちゃん』『お父さんクエスト』などで知られるマンガ家の小山健が描き下ろしている。

 実は1stシングル『ドリーミージャーニー』、2ndシングル『BABY!』と続けてのコラボレーションである、the peggiesと小山健。すべてのジャケットが小山の描き下ろしによる、メンバーや楽曲をイメージしたキャラクターが活躍する漫画仕立てになっている。

 インターネットで老若男女問わず幅広い層から支持を得ている小山の、素朴で可愛らしく飾らない絵柄が、the peggiesのポップで肩から力の抜けた世界観とマッチ。可愛いけれど媚びない、彼女たちの楽曲の雰囲気を絶妙に引き立てる役割を担っている。

THE BACK HORN×住野よる

 4人組ロックバンド・THE BACK HORNが、映画化もされた『君の膵臓を食べたい』で一躍注目を集めた作家・住野よると今年コラボレーションした。

 THE BACK HORNが今年リリースした楽曲『ハナレバナレ』を軸としたこのコラボレーションは、メンバーと住野が作品のコンセプト作りの段階から意見を交わし合い、ひとつの作品を合作するように進められているのが特徴。現在、週刊新潮とTHE BACK HORNの公式サイト内にて、住野による小説『この気持ちもいつか忘れる』も連載中だ。

 住野が以前からTHE BACK HORNのファンであり、メンバー宛てに著作を送ったことがきっかけとなり、今回のコラボレーションが実現した。

 住野のみならず、今まで数多くのクリエイターに影響を与え、熱い支持を集めているTHE BACK HORN。今年結成20周年を迎えてもなお衰えることを知らない彼らの詩情や音楽への情熱が、今最も注目を集める若手作家である住野とどのような化学反応を起こすのか。小説はまだ連載中なだけに、更に今後に注目したくなるコラボレーションだ。

 音楽は元来、音と歌詞にしか情報を入れ込めないコンテンツだ。リスナーはそこから数多くの情報を感じ取り、物語を想像したり心を揺さぶられたりする。

 しかし、そんな音楽にクリエイターとのコラボレーションによって視覚情報や物語など、様々なアプローチによる追加情報が加えられたなら、その世界観を更に鮮明に、鮮烈に表現することができるだろう。

 クリエイターの方もミュージシャンから影響を受け、今までにはなかったような表現を生み出せるかもしれない。

 話題の“ロックバンド×異業種”コラボレーションは、ロックバンドにとってもクリエイターにとっても、そして双方のファンにとっても嬉しい魅力溢れる企画であるといえるだろう。今後も熱い想いを抱えたロックバンドとクリエイターが、あっと驚くようなコラボレーションを見せてくれるのが楽しみだ。【五十嵐 文章】

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