<エンタメ界の30代 Vol.19>
 変革期を迎えているエンターテインメント業界。テレビ最盛期やミリオンヒットが続出した時代に青春を過ごした30代は今まさに、その最前線で活躍している。彼らは今何を考えているのか、どう時代の変化に立ち向かっているのか。リレー形式でインタビューする本企画は、エンタメ業界で働く大手事務所マネージャーが同世代で活躍するキーマンに話を聞き、それぞれの背景や想いに迫っている。今回は、『白猫プロジェクト』『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ(以下、黒猫のウィズ)』などの大ヒット作品を生み出し、スマートフォン向けゲームアプリを展開している株式会社コロプラ マーケティング本部 ライセンスビジネス部 アライアンスグループ マネージャー『岩田星人』氏。会社設立10年を迎え、ゲームだけではなく、さまざまなコラボ企画やイベントを展開。最近では、『モンスターストライク』と『白猫プロジェクト』のコラボ企画も話題になった。様々なコラボやタイアップ企画、イベントなどを取り仕切る仕掛人『岩田星人』氏に迫った。【企画・取材・文=山本圭介(SunMusic)/撮影=松尾模糊】

『人生このままではだめだと思った』

 コロプラの歴史は2003年に代表取締役の馬場功淳が個人で位置情報ゲーム「コロニーな生活」を開始したところからはじまる。その後、2008年に株式会社コロプラが設立され、世界初の位置ゲー特化型プラットフォームの提供を展開。2011年にはスマートフォン特化型ゲームの開発をいち早く着手し、2013年に『黒猫のウィズ』、2014年に本格3DアクションRPG『白猫プロジェクト』をはじめ、数々のヒット作を生み出してきた。また、話題のコラボ企画などを数多く展開し、最近では、XFLAG(TM) スタジオが提供する人気スマートフォンアプリ『モンスターストライク(R)』と『白猫プロジェクト』のコラボ企画「モンスターストライクプロジェクト」をスタートし、まさかのコラボに多くの反響を呼んだ。

 そんな『コロプラ』が展開する様々なコラボや企業タイアップなどを企画・交渉をおこなっているのが『岩田星人』氏率いるアライアンスグループ

 他社との「交渉」が重要な立場にありながら、岩田氏は過去、他人とのコミュニケーション能力が極端に低く、営業先のドアも叩けないほどだった。そんな彼が「自分自身」を変えるために、転職先として選んだ場所が「テーマパーク」。

 「このままでは、人生が終わると思いました」

 2年間「テーマパーク」で働いた経験が彼自身を大きく変えた。

 たくさんのコラボ依頼が舞い込み、ゲームプロデューサーとの社内交渉から企業との交渉までを取り仕切る岩田氏が歩んできた道。そして、ファンミーティングで感じたこととは――。

あゆみ、そしてスマホゲームの未来

――学生時代に熱中していたエンタメコンテンツは何ですか?

 1つはやっぱり「ゲーム」ですね。学校から帰ったらゲーム、夏休みもひたすらゲームをやっていました(笑)あとは「音楽」。中学3年生から楽器を始めて、ベースを演奏していました。当時『L'Arc〜en〜Ciel』『LUNA SEA』『GLAY』が大好きで、コピーバンドをしながら小さなライブハウスでライブもやっていたんですよ。

――将来は音楽関係を目指していた?

 そうですね。音楽関係の仕事をしたかったので、音楽の専門学校に行きました。そこで、コンサートPAやレコーディングの勉強をして、将来は「レコーディングスタジオ」に勤めたかったんです。でも当時、昔は10名ほどでやっていた仕事もパソコン1つで出来る時代になって、僕がやりたかった仕事の求人が全くなかったんです。それでも音楽関係に進みたくて、最初は音楽機材メーカーに就職しました。

――そこではどんなお仕事を?

 楽器の周辺機器や機材を作っている会社だったので、新商品の紹介や販売スペースの確保など、営業部署で働いていました。でも当時、僕は全く「コミュニケーション能力」がなくて、営業先の門を叩くことが出来なかったんです。営業なのに、相手と全然話せなかった。もう全く営業に向いていなかったですね。だから仕事が全然うまくいかなくて、1年弱くらいで辞めてしまいました。

――人と話すのが苦手だった?

 そうですね。当時、自分自身に「危機感」を強く感じていて、このままでは人生終わってしまうと本気で思っていました。だからそんな自分を変えたくて「テーマパーク」で働くことに決めたんです。「テーマパーク」は世界一のサービス業。そこで働けば自分自身を変えることができるかもしれない。自分の人生を変えなきゃいけない。本気でそう思ったんです。

――そこでの経験は大きかったですか?

 大きかったですね。一番大きかったのは、「演じる」ということ。プライベートでどんなに辛いことや嫌なことがあっても、表に出たら「1人の俳優」。オン、オフを切り替えて、表に立ったらもう一人の自分を演じる。そうすることで、お客様を目の前にしても、自然に話したり喜ばせることが出来るようになりました。何をしたらこの人は喜んでくれるのか、楽しんでくれるのか。どう期待に応えられるのか。お客様を喜ばせたら、「楽しかったよ、ありがとう」「おもしろいね」とそのフィードバックが必ず返って来て、モチベーションになるんですよね。日々、考えながら、お客様とコミュニケーションをとっていました。2年間働きましたが、本当に成長できたと思います。その時の経験が、今の仕事においても確実に生かされていますね。

――そこから色んな仕事を経験された?

 そうですね。接客に自信がついて、その後、アパレル社員に転職して「スーツ」の販売をしました。その店舗では売り上げ1位を取ることも出来たんですよ。その後、映画や音楽の販促DVDの制作会社で営業をやり、モバイル広告を扱う会社でも働きました。その会社では、アプリの新規事業立ち上げにも携わり、プロデューサーとして「デコメ」や「ジャパニーズKawaiiカルチャー」のコンテンツアプリの企画や、ゲーム部門に異動してプロデューサーをやっていました。既に世の中にリリースされていたゲームを引き継いだ後、新作を自分で考えて作る事も行っていました。好きな「ゲーム」を仕事として関われたのは、この時が初めてでしたね。

――元々、「ゲーム」が大好きだったのが大きかったですか?

 そうですね。新作ゲームを考えるときも、自分の人生体験や、今までの面白かった要素、ポイントをうまく踏襲できるので、そういった意味ではすごく役立ちました。ゲームのプロデューサーをやっている時は、自分の「好き」を仕事にしている。それを毎日感じていましたね。

岩田星人氏

岩田星人氏

――そこから「コロプラ」に転職されて、今はどんなお仕事を?

 僕のチームのミッションとしては、テレビなどを見てもらうメディアなどへの集客(※テレビなどを見てもらうこと)や露出を通じて、自社のコンテンツの価値向上をおこなうこと。いわゆる、ライセンスビジネスの窓口として、自社や他社のブランド、IP(知的財産)を活用した企画、交渉を行っています。例えば、弊社のゲーム『白猫プロジェクト』『黒猫のウィズ』などのIPを使って、企業とのタイアップやリアルイベント、ゲームミュージックのコンサートなどを企画。もう一つが、他社のIPや漫画、アニメキャラクターをゲームに取り入れて、ゲームの中でコラボをやったりもします。そういった「ライセンスイン」の企画も、交渉、実施までを全て取り仕切っています。コラボの提案や企画など、面白い話が舞い込んで来たら、プロデューサーやマーケティングのトップと交渉して進めていくこともありますし、ゲームの主題歌タイアップなどでは、有名な音楽プロデューサーの方と相談しながらアーティストの方をアサインするような事もあります。新作ゲームの企画や協業、ライセンスアウトビジネスの営業など、様々な案件の「交渉人」として、本当に多くの方とお会いしていますね。

――コラボの依頼は多いですか?

 そうですね。でも以前は専門の窓口がなかったので他社とコラボする機会はほとんどなかったんです。でも「専門部署」が立ち上がり、ここ最近は問合せも増えて、こちらから持ち掛けることもありますし、機密情報もあるので水面下で進めることも多いですね。ただ「インパクト」や「話題性」も必要ですが、一番大事なのはユーザーさまのニーズをしっかり捉える事。そこを無視して進めることはありません。

――社内で議論することも多いですか?

 そうですね。『コロプラ』は、ゲームやエンタメコンテンツが好きな人の集まりで、おもしろいことを考えよう、生み出そうという人がたくさん集まっています。だから「企画」を話しやすいですし、通しやすいと思います。あとは、自分たちのタイトルにすごく自信を持っていて、愛がすごく強い。『白猫プロジェクト』でも僕がこういう企画どうですかと持って行っても「愛が足りない」「白猫はもっとこうだよ」って言われることもたまにあります(笑)

――これまでで印象に残っている仕事はありますか?

 色々なコラボ企画は「話題性」も「規模」も大きいので思い入れも強いのですが、今年実施した『白猫プロジェクト』のファンミーティングはとても印象に残っています。2、3年前は大きな会場を借りて、ステージトークがメインのイベントだったんです。でも今年は「ファン」と「白猫プロジェクトの関係者(中村AP等)」が触れ合えるくらいの小規模な会場で、全国5カ所、それぞれ150名のお客様を招待しました。このイベントの魅力は2つあって、1つはオフイベントならではのここでしか話せないような裏話を、弊社の「宣伝担当」や、公式Web番組に出演いただいているタレントさんたちから直接聞けること。開発秘話や、キャラクターのイラストなどをお見せするのは大好評でした。もう1つは、プレーヤー同士が繋がれること。オフラインイベントではやっているみたいですが、公式としては初めての試み。イベントの企画で、席が近い4人同士で一緒にゲームをプレイしてクリアしてもらい、クリア報酬として賞品をプレゼントしました。それがかなり盛り上がって、チーム内でTwitterアカウントの交換などが自発的に広がっていましたね。お客様の喜んでいる姿を直接見る事が出来たのは、本当に貴重な機会でした。

――チームのリーダーとして普段、岩田さんが意識していることはありますか?

 お客様の顔やリアクションを想像すること。それはすごく意識しています。IT、ウェブの業界だと目の前でお客様の反応は見えません。テーマパークで働いていた時、ダイレクトに返ってきたお客様の反応が嬉しくて、それが大きなモチベーションでした。イベントをプロデュースする時、お客様は喜んでくれるのか、面白いポイントはどこなのか、それは細かく意識していますね。

岩田星人氏

岩田星人氏

――スマホが普及して、ゲーム業界はどう変わっていくと思いますか。

 少し前までは、スマホの普及率に合わせてゲーム市場も右肩上がりだったんです。でも今、他社の発表ではトップラインがきている状況。少しサービスが溢れすぎていて、競争が激しいですよね。ただ僕が思うには、今後スマホでゲームをするというだけではなく「ブランド」「タイトル」としてファンになってもらい、長く愛してもらう。これがさらに重要な時代になってくると思います。弊社の『白猫プロジェクト』『黒猫のウィズ』も4〜5年が経ち、ファンミーティングやパシフィコ横浜での『魔法使いと黒猫のウィズ Live Concert 2018』を開催しました。これもゲームだけではない、新しい体験を提供すること。ゲームの面白さを知ってもらい、ゲーム以外での楽しみも体験してもらう。そして「ファン」になってもらう。それが今後、スマホゲームの世界では大事になってくると思います。コミカライズ化、小説化、アニメ化している会社も出て来ていますよね。

――メディアの露出も意識されてますか?

 お客様に新しいメッセージを伝える時にテレビCMは今でも強いチャネルになっています。そこは積極的に使っていきながら、「面白い事」があればどんどん仕掛けていきたいと思っています。先日、『モンスターストライク』と『白猫プロジェクト』のコラボを発表させて頂き、凄く反響がありました。競合を意識するのではなく、色んな会社とおもしろい取り組みをどんどんやっていきたいですよね。

――スマホゲームの未来は明るいですか?

 明るいと思っています。昔お世話になった会社の代表の言葉を借りますが、スマホは24時間、365日、半径30センチ以内にあるものですよね。ゲームのデバイスがすぐそばにあって、若年層も持つようになった。ゲームをやるチャンスを多くの人が持つようになったのは、ゲームに触れるチャンスを広げてくれますし、まだまだ伸びていくと思います。そういった意味でも『ポケモンGO』は凄かったですよね。ゲームをしたことがない人、初めてゲームに触れた人もたくさんいた中で、多くの人が『ポケモンGO』を楽しんだと思います。こういった新しい体験ができれば、この業界はもっと盛り上がっていく。あとは、すぐに面白さを共有出来る事も、今の時代は大きいですよね。

――これから挑戦したいことはありますか?

 リアルイベントやコラボ企画、VR体験など、ゲーム以外の新しい体験を提供したいと思っています。その「満足感」をお客様同士で共有してもらい、そこからゲームのタイトルを好きになってもらう。そんなサイクルをどんどん作っていきたいですね。あとは今までにない新しい形。「ゲーム以外の体験」と「お客様同士の繋がり」が生み出す新しい「価値」。それが生まれれば、どんどん「好き」が大きくなっていくと思います。

――最後に、仕事の活力、原動力を聞かせてください。

 自分のチームが企画したリアルイベントやゲームコラボ等で、お客様の喜ぶ顔や、楽しんでいる笑顔を見ること。それが僕の一つの原動力です。そしてもう一つ。僕の仕事は企画から交渉まで全てを取り仕切り、社内の全ての部署と連携していきます。リリースした後、お客様の反響を見ている「開発の人間」や「関わった社員」が喜んでいる。その姿も僕の原動力ですね。仕事をしていて、自分たちで考えたものが世の中に発信され、ブランドの価値が上がっていく。業績を左右するくらいのミッションがある中で、そんな経験ができるのは大きなやりがいでもありますし、醍醐味です。あと、僕にとって忘れられないエピソードがあるんです。ファンミーティングを開催した時『白猫プロジェクト』の思い出エピソードを書いてもらったんですが、その中で「白猫プロジェクトを通じて沢山の友達が出来ました」「ゲームがきっかけで仲良くない上司と仲良くなった」といったエピソードがあって、参加者の中にはご夫婦や婚約されたカップルも必ず数組いらっしゃいます。そういった人たちのエピソードや姿を見ていると、僕たちが発信しているエンタメは「人の人生を変えることができる」そんな仕事をやる事が出来て、僕は本当に幸せだと思います。その気持ちは、これからもずっと、大切にしていきたいですね。

岩田星人氏

岩田星人氏

 コミュニケーションが苦手だった岩田氏が「テーマパーク」での経験を得て、今は「喜び」「楽しさ」を伝える側になった。話題となるコラボやキャンペーンを企画していく中で、何よりも大切な「ファンの存在」の大きさを感じ、ファン同士の繋がりに喜びを感じた。「エンタメが人生を変える」そう話した岩田氏自身も、「テーマパーク」での経験で人生が変わった一人。「エンタメの力」を誰よりも信じ、誰かの人生を変えるために、今日も「交渉人」として走り回っている。


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