元まねきケチャの藤川千愛が12月22日、東京・渋谷WWWXでワンマン公演「藤川千愛ワンマンライブ~Starting Over Live 2018~」を開催。まねきケチャを9月24日に卒業、11月25日に東京カルチャーカルチャーでおこなったワンマンライブを皮切りに、ソロシンガーとして活動をスタートした。この日のステージでは、12月17日から3週連続でリリースしているデジタルシングル「勝手にひとりでドキドキすんなよ」など新曲や、山下達郎の「クリスマス・イブ」などの冬を感じさせるカバー曲を生バンドを従えて披露。藤川が「これからは自分らしさを持って前へ進みたい」とファンの前で宣言したその決意を感じさせる熱いステージとなった。【取材=長澤智典】

藤川千愛の新しい始まりの姿

藤川千愛(撮影=Jun Yokoyama)

 舞台の前には「ポリッドスクリーン」という、光を通し後ろの背景も鮮明に見える透過型の白いスクリーンを設置。ライブは、藤川がアコースティックギターを弾きながら歌う「勝手にひとりでドキドキすんなよ」から幕を開けた。3週連続デジタルシングル第1弾曲として配信になったばかりの歌を最初に持ってきたことは、まさにここから藤川千愛の新たな物語が始まることを宣言していくようだ。

 藤川の弾き語りの演奏にバンドの音が重なるにつれ、彼女の歌声も少しずつ熱を帯びていく。「勝手にひとりでドキドキすんなよ 私のこともちゃんとドキドキさせてよ」「ふたりでドキドキしなきゃ勿体ないよ」と藤川は、一緒に想いを分かち合いながら共に進んでいこうとファンたちに声をかけているようだった。

 彼女自身の気持ちが歌詞とシンクロするたびに、歌声が感情的に揺れていた。 舞台を覆ったスクリーンには、歌詞や心臓がドクドクと動く絵などが映し出されていく。あえて歌詞を…言葉を前に投影したのも、今の、そしてこれから先へ進むうえでの彼女自身の想いをしっかり伝えようとしてのこと。<あたしのことをもっと狂わせてほしいの>と歌いかける藤川。ファンたちも、彼女と一緒にドキドキを分かち合いたいと思っていたに違いない。

 続いて披露したのが、藤川が初めて作ったオリジナル曲で、デジタルシングル第2弾作として配信になったばかりの「夢なんかじゃ飯は喰えないと誰かのせいにして」。気持ちの内側から沸き上がる感情を力強くぶつけるように、彼女は<今日も私 誰かのせいにして ぬるま湯でじわじわと死んでいくの>とマイクを手に歌いだした。込み上げる想いを強さに変え、藤川千愛は気持ちを吐き出すように歌っていた。この曲でも、彼女の前に設置したスクリーンには、文字と、都会の喧騒の模様が映し出されていた。それが何を意味するか、想像はつくだろうから、その解釈は一人ひとりに委ねようか。

 「今日はアイドルを辞めて再出発をしていく日という想いを込め『Starting Over』というタイトルをつけました」と語った後に、藤川は「みんなとの距離を縮めたくて、敬語を使うのは辞めて、いつもの岡山弁でこれからは話します」と宣言。とはいえ、つい敬語を使ってしまうところが藤川らしさ。

クリスマスを意識したカバー曲コーナー

藤川千愛(撮影=Jun Yokoyama)

 ここからは、クリスマス直前という時期を意識した曲たちを集めたカバーコーナーへ。最初に、ワクワクとした冬の始まりを告げるように槙原敬之の「冬がはじまるよ」を歌唱。身体を優しく揺らし、ウキウキした気持ちを身体で感じるように歌う姿がチャーミングだ。少しずつ熱を帯びていく歌声と楽曲に合わせ、会場中の人たちも手拍子をしながら、彼女の気持ちに寄り添っていた。

 続いて披露したのが、山下達郎の「クリスマス・イブ」。切なさを抱いた歌声なのはもちろん、甘い香りも抱きつつ、楽曲を原曲以上に切ない表情へアレンジ。とくに終盤では、溜めを生かした歌声を魅力に、触れた人たちの心も歌の世界へしっとり浸らせていた。

 MCでは、小学校四年生までサンタクロースを信じていて、サンタさんからもらったとばかり思っていたクリスマスプレゼントが、実は祖母が用意していたものだったことを知らされ、それで現実を知った話などを語っていた。

 カバーコーナーの後半戦は、AIの「ハピネス」から。身体も歌声もスウィングするように軽やかに歌い、後半にはファンたちと声の掛け合いも披露。一緒にこの空間を楽しく味わおうと、藤川は笑顔で弾けていた。

 表情は一変、ピアノの演奏を背景に、想いを深く深く落とすよう藤川はback numberの「クリスマスソング」を歌いあげた。サビ終わりから重なり出した演奏が、楽曲へ、より哀愁な想いや音色を重ねてゆく。身体の内側から込み上がる想いを、藤川は気持ちを振り絞るように歌い続ける。その哀切な歌声に、いつしか心は魅入っていた。

 後半戦は、デジタルシングル第3弾曲であり、2019年1月から放送されるアニメ『盾の勇者の成り上がり』エンディングテーマ「きみの名前」から。アコギの音色に導かれるように、藤川が歌いだす。心の奥底からジワジワと染みだす想いを歌声に乗せて響かせ、サビでは<ほら キミの声が 僕を救うよ 何度も呼び覚ますよ>と、沸き上がる感情を強く届けるように歌う姿を見せていた。切なさと強さを記した歌詞に合わせ歌声の表情が変化していくところも、彼女自身が感情的なシンガーとしての要素を備えているから。

 「これからもみんなと一緒に歌い続けたいです」。最後に藤川は、新曲の「ライカ」を披露。気持ちを、前へ前へと力強く押しやる楽曲だ。曲調も激しさを伴って、藤川自身も激しく揺れる感情のままに雄々しく歌声をぶつけていた。これまで以上に躍動的で気持ちの揺れが激しく伝わる曲だ。その姿に、藤川のさらなる可能性も感じた。

 藤川は「まわりのせいにして、誰かのせいにして、弱い自分に甘えていました。でも、これからは自分らしさを持って前へ進みたい。みんなとなら、そうしていけると思います」と決意表明。アンコールでは、再び「夢なんかじゃ飯は喰えないと誰かのせいにして」を熱唱。ネガティブな感情も記した歌とはいえ、藤川千愛の歌声は、終始光と力強さを放っていた。自らの気持ちが輝きを放てば、影を背負った言葉さえも未来へ進むための自分を肯定する歌として響いていく。それを、アンコールで歌う藤川が教えてくれた。気持ちを突き上げる力強い歌声に、彼女の未来を感じた。2019年から、藤川がどんな物語を描き出すのか、その未来図を楽しみにしていようじゃないか。

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