3ピースバンドのThe Wisely Brothersが12月13日、東京・渋谷 O-nestで東名阪ツアー『Soft Power Tour』のファイナルをおこなった。11月14日にリリースされた「柔らかな」の発売を記念し、12月3日の名古屋を皮切りに大阪、東京と3公演をおこなうというもの。この日は新曲やアコースティックで「キキララ」、クラフト・ヒップホップアーティストのMomを招いて「グレン」などアンコール含め全17曲を演奏。「私たちの中で出来た「Soft Power」というのは、人のことを考える気持ちを持って、何かを作ることなのかなと思いました」と話したツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

スペシャルゲストにMomが登場

The Wisely Brothers(撮影=相原 舜 )

 会場にはモビールが吊るされ、可愛らしい楽しい空間。BGMは次第にフェードアウトし開演を告げる彼女たちのSEとしてお馴染み、Karen O&The Kidsの「All Is Love (Where The Wild Things Are)」へと切り替わる。その楽曲と観客の手拍子に導かれ3人がステージに登場。一呼吸おいて11月14日にリリースされた「柔らかな」でライブはスタート。シンプルなリズムは自然と聴くものの身体を揺らし、リバーブの掛かった真舘晴子(Gt、Vo)の艶やかなボーカルが会場を包み込んでいく。

 真舘は「一緒に楽しんで行きましょう」と投げかけ、ギアを1段上げアップチューン「庭をでて」を投下。序盤からメリハリのある流れで楽しませていく。MCではいつもと衣装の雰囲気が違うことを嬉しそうに告げるメンバー。トークはいつも通りの和み系で、なんとも微笑ましい時間がそこには流れていた。

 続いての「彼女のこと」では心地良いリズムの揺らぎが会場を満たし、続いて渡辺朱音(Dr.Cho)のドラムから「マリソン」へ。お酒が進む聴かせる系の楽曲、天井でゆっくりと回るミラーボールも夢見心地の空間を作り出し、オーディエンスもドリンク片手に、体を揺らし彼女たちが紡ぎ出す音楽を堪能していた。

真舘晴子(撮影=相原 舜 )


 
 部屋の片付いていないところに布をかけたり、過去や自分の嫌なところを隠すといった曲が出来たと、新曲を披露。大空をイメージさせるサウンドスケープに、The Wisely Brothersらしさを感じさせる歌詞の世界観が見事にマッチ。そして、和久利泉(Ba、Cho)と渡辺による爽やかなコーラスが印象的に真舘の声を包み込んでいた新曲「テーブル」、ノンストップでセッションしているかのような雰囲気でスタートした「アニエスベー」。さらに、彼女たちでしか出せないであろうグルーヴで会場を席巻した「おいで」と続けて披露。ゆっくりと歩いていたかと思えば、急に走り出すといった一癖あるアレンジも魅力的。

 ここで趣を変えアコースティックコーナーへ。このacoustic setの練習を公園でしていたというエピソードから「Thursday」を披露。渡辺はシェイカーでリズムを作り、ベースの和久利はブルースハープやグロッケンを演奏し楽曲を彩った。そして「キキララ」では渡辺のパーカッションの乾いたサウンドが、フルバンドとはまた違った躍動感と景色を見せてくれた。

 ここで、スペシャルゲストにクラフト・ヒップホップを体現するアーティスト・Momを呼び込み「グレン」をスペシャルバージョンで演奏。11月14日にリリースされた「柔らかな」のカップリングに収録されたRemixバージョンともまた少し違うニュアンス。Momはアンニュイさも感じさせるラップを投入し、クラフト・ヒップホップをThe Wisely Brothersのサウンドに注入。Momは途中でギターを手に取り、真舘とツインギターで印象的なリフでさらに楽曲を彩り、会場を盛り上げた。

人のことを考える気持ちを持って何かを作ること

和久利泉(撮影=相原 舜 )

 真舘はMomと「今度はみんなでご飯とかコーヒーでも飲みながら話したいね」と告ると、手紙を読むかのようなイントロが印象的な「The Letter」を届けた。エンディングでの印象的なテンポチェンジのセクションでは、その躍動感とリンクするかのように3人の楽しそうな姿。そして、ライブはラストスパートに突入。さらに昂揚させていこうといった意志をバンドから感じ、熱い演奏で届けた「メイプルカナダ」から「サウザンド・ビネガー 」と立て続けに演奏し観客を扇情した。

 ここで、今回のツアータイトルとなった「Soft Power」について真舘が説明。朱音の母親からの煮物と炊き込みごはんの差し入れの美味しさに感動。美味しく食べてもらいたいという人を想う心が、The Wisely Brothersの「Soft Power」に通じるものを感じたことを語った。「人の大切なものがわからないから、色々と傷つけあってしまうと思います。だけど、私たちの中で出来た「Soft Power」というのは、人のことを考える気持ちを持って、何かを作ることなのかなと思いました。それがあれば誰かが大切にしているものも、私達も大切に出来るかもしれないなと思いました。そんなバンドになりたいと『Soft Power』を通して思いました」と今の心情を述べた。

渡辺朱音(撮影=相原 舜 )

 そして、ラストは自分たちらしさ、特徴をこのツアーで再確認できたという初期のナンバーから「hetapi」を披露。指で奏でる温かみのあるギターサウンド、バスドラムとタムをメインに展開するドラム、その2人を接着させるかのようなベースと、メランコリックな世界観ながらも、彼女たちの繊細な音が耳に飛び込んでくる。眩い光に吸い込まれそうなライティングも相まって、幻想的な空間のなか本編を終了。

 観客の手拍子に再びステージに笑顔で登場すると、まずはグッズを紹介。想いを込めて制作したグッズの紹介にも力が入る。そこにも音楽と同じ熱量を感じさせた。そして「またいつか楽しい時間を一緒に過ごしましょう!」と最後にもう一曲。アンコールはソリッドな真舘のギターカッティングが光る新曲「hobby」を届けた。軽快なサウンドはキラキラとした空間を作りあげ、このツアーの幕締めには最高の一曲だった。3人は笑顔でステージを後にし、ライブは大団円を迎えた。

 約90分間、「Soft Power=人を想う心」を打ち出していたステージで、アコースティックあり、スペシャルゲストありとセットリストも秀逸で、何より3人の人柄の良さが溢れていた。このツアーで得た経験が2019年にはどのように反映するのか楽しみだ。

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