Maison book girlが去る11月25日、東京・日本橋三井ホールでワンマン公演「Solitude Hotel 6F hiru」と「Solitude Hotel 6F yoru」を開催。同公演は、最新アルバム『yume』を引っ提げたもので、昼と夜の2部制でおこなわれた。『yume』の収録曲やこれまでの楽曲まで幅広く披露したステージを展開し観客を魅了。昼の部となった「Solitude Hotel 6F hiru」の模様を以下にレポートする。【取材=長澤智典】

「Solitude Hotel」と名付けられた白い巨塔

(写真=稲垣謙一)

 日が暮れるその瞬間が好きだ。それまで蒼のカンバスへ白い配色を施していた絵に、次第に薄紅な差し色が加わるその時間の経過に、心が喜びと、心地好い微睡みを覚えていく。

 空を濁しだした赤い差し色は、いつしか蒼みがかったカンバスを朱色に埋めつくした。そこに生まれるのは、空間を歪ませる時の歪み。時の経過と共に空が真紅に染めあげられる。雄大な景観を描いたその絵は、触れた人たちの心を、歪んだ時の中に開いた扉の奥へと招きだす。

 蒼く澄んで生まれたはずの心が、朱の色を差すごとに紅く染まりだす。その紅は、気持ちを痛く騒がせる。乱れゆく心模様、歪む意識、騒ぐ感情…僕らは暮れゆく景色の中へ、心騒がす事件を求めていた。

 此処ではない異なる世界の中、心揺れるまま無邪気な姿で、音を相手に戯れる女性たちが居る。それは伝説の中の記憶なのか。それとも、現実を記録した噂なのか…。

 生を弄ぶように揺れる女性たちは、時の壁へ記された日付と時間に合わせ、真っ白な塔(ビル)と共に、僅かな時間、蜃気楼のように現れるという。

 時空の歪むその日に合わせ、人々は、時の歪みの中に現れる塔へと足を踏み入れようと、その入口となる広場へ集まってきた。そして、時の歪みの中から顔を覗かせる4人の少女たちの無邪気な招きに誘われたくて、心の手でその隙間を探っていた。

 Maison book girlが示した、時の扉が開く時間と、その空間。そのサインを受け取った大勢の人たちが、日本橋三井ホールに足を運び、歪む時空の隙間から覗かせる、その扉の開く瞬間を待ちわびていた。

 時の合図が訪れると共に、その空間は無機質な音を響かせながら時空を歪ませ、真っ白な扉をゆっくりと開いた。目の前へ姿を現したのは、4人の少女たちが音を介して戯れるという、「Solitude Hotel」と名付けられた白い巨塔。今宵の戯れは、大きな塔の中の6Fでおこなわれる。

 そこには、前回、4人が「Solitude Hotel」の5Fで戯れ、宴を描き出していたときの…いや、あの恍惚を導いた宴の幕が閉じるときに流れていた「GOOD NIGHT」の音色が満ちあふれ、その空間を支配していた。

 今宵の物語も、あの時の宴の余韻を引き継ぐ形を取りながら、また新たな少女たちの無垢で無邪気な戯れを、このフロアへ描き出すのだろうか。「Solitude Hotel」の6Fを埋めつくした人たちが、その期待に胸を馳せていた。

これまでの歩みを辿るようなステージ

(写真=稲垣謙一)

 闇に包まれた場内へ、鋭利な音を叩きつけるように。いや、その戦慄は優しさを抱きながらも鋭利さを隠すことなく、フロア中に耳を刺激する音を響かせた。流れだしたのは「sin morning」だ。

この日の4人は、一日の流れと、光と闇とを交錯させながら、現実と乖離してそうで、とても現実と密接に心を繋げあった物語を語り始めた。 新たな始まりを告げるように流れた「sin morning」は、ローレライの歌にも似た、夢の舞台を綴る物語の夢先案内のようにも響いていた。

 その期待を嬉しく騒がせるように流れた「end of Summer dream」。封印した過去の記憶を甦らせるように、その音色は、意識の扉をノックする。弾む音に抱かれながらも、心地好くまどろみの中へ溶けていく。音と意識が同化し、意識を惑わすその感覚のなんと気持ちの良いことか。

 心を騒がせる金属音の調べ。キンキンと鳴り響く音を背負い、走っては止まり、走っては止まることを繰り返す「rooms」を、同じく、気持ちを走らせるように歌う4人の歌声にせかされ、フロア中の人たちが前のめりな気持ちのまま、大きな部屋の中に広がりだした闇の中へ、その身を投じていった。

 先日、最新アルバム『yume』を発売したばかりとはいえ、この日のライブはMaison book girlは最新アルバムの楽曲たちを中心に…というよりも、これまでのMaison book girlの歩みを辿りながら、その中へ新しく生まれた表情を描き加える形で進められた。

 真っ白な衣装に身を包んだ天使のような彼女たち。その姿は、「Solitude Hotel」という名の真っ白な病棟の中、心揺れるままに。統一性を持った音色を軸に据えつつも、不均衡な音の調べを重ねながら色を変えていく多彩な楽曲たちへ心を騒がせ、感情の導くままに想いを歌に変え唱えてゆく、そんな病棟の中の無垢な少女たちのようにも見えていた。

 モノクロな心へきらめきを射すように歌い踊った、「ボーイミーツガール」。彼女たちは、時の流れの中を自由に行き交いながら、心踊るままに、心の中に映し出された想いや思い出を、歌声や楽曲を介し、触れた人たちの心へ胸騒がせ、想像を掻き立てる物語として映しだしていく。写真の中の少女の姿へ、有り日の想いを馳せるように歌う彼女たち。映写機の映し出す「ボーイミーツガール」という物語と、今は心地好くはしゃぎあっていたい。

夢の続き

(写真=稲垣謙一)

 相反する形や想いほど、じつは根底で結び合っている。騒ぐ気持ちを、絶望の中へ植えつけるように。汚れた心の景色の中へ白い光を差すように。何より、沈む色へ喜びを覚えるよう、Maison book girlは気持ちを憂いながらも開放する「cloudy irony」を。

 雨空から雪降る空へ移り変わる凍える景色の中から魂を解き放つように、「snow irony」を高らかに歌いだす。心騒ぐ感情。その心地好い痛みを、強くノックするように響く「film noir」。意識がどんどん光をまといながらも混濁していく。さぁ、もっともっと心を解き放て。4人の歌声が、次々と理性の鍵を壊し、心を自由に与えていく。そして、4人と一緒に背中に映えた白い羽根を羽ばたかせ、「Remove」と一緒にこの空間を越え、自由という名の空へ気持ちを飛ばしていけ!!

 歪む時空。その空間は、ふたたび無機質な音のジッパーで、扉ごと封印していく。暫しの沈黙…。その封印が解かれたとき、そこには黒い服に身を包んだ4人が佇んでいた。

 黒い闇に冒された空間の中、4人は、壊れそうな気持ちの均衡を保つように「狭い物語」を歌いだす。光と闇が錯綜する世界の中、4人の意識は、黒いカンバスに覆われた空間へ白い光の差し色を求めだした。

 その空間には、いつしか光と闇が交錯しあっていた。一筋の光をつかむように。濁った世界を夕立で一気に履き散らすように、4人は「言選り」を歌いながら想いを飛ばしていた。

 射し込む光、その先に彼女たちは出口を見いだした。闇の舞台へ放り投げられた観客たちも一緒に連れ出すように、Maison book girlは「十六歳」を歌いながら、微かに見える光の匂いをたぐりながら、黒い世界を彷徨い続けていた。

 さぁ、この空間に輝きを与えようか。騒ぐように跳ねる「karma」を歌いながら、4人は、この塔へ迷い込んだ人たちへ鈍いきらめきを注ぎだす。その誘いへ導かれ、乱れ、はしゃぐ感情。4人の歌い踊る姿に熱い視線を注ぎながらも、身体はうずうずとした衝動を携えながら、暴発寸前の気持ちのままに心を踊らせていた。

 いつしか乱れ騒ぐ感情のままに、彼女たちもまた、光射す出口へ向かって駆けだしていた。そして…。そこは、雨が降りながらも光も射し込む不思議な世界。終わりを告げるようで、また新たな始まりへの期待を抱かせる心地好い空間。4人は「おかえりさよなら」を歌いながら、大きく揺れる音楽のうねりの中、闇と光の手を心の中で結びながら、ふたたび心地好い眠りの中へ、その身を落としていった。

 物語の余韻を心地好く壊すように、Maison book girlはアンコールの始まりに「my cut」を投影。気持ちを熱く掻き乱す楽曲の登場に、それまで身体をうずうずさせていた観客たちが、一斉に声を荒らげ騒ぎだした。高ぶる熱、騒ぐ感情。誰もが嬉しく心を乱しながら、高揚導く楽曲の中へ飛び込み、ふたたび白い衣装を身にまとった4人と無邪気に戯れていた。

 ここまでに描き出した物語が、すべて夢だったと語るように。いや、夢と現実が交錯しあう物語だからこそ、そのメッセージを微睡む夢物語として受け止めるのか、それを明日へ繋がる現実の糧へ変えてゆくかの選択を示すように、Maison book girlは「夢」を届けてくれた。とても美しく、心地好い微睡みを与えていく楽曲だ。このまま4人と一緒に、優しい色の差す世界へ落ちていきたい。

 最後にMaison book girlは、それぞれに本を携え、「不思議な風船」を語りだした。その歌に示した想いこそ、この日のMaison book girlが伝えたかった想い。その答えは、それぞれの心に委ねようか。

 メンバーが去り、舞台上に映し出された真っ赤な夕陽の映像と、荒野に置かれた2つのベッド。僕らは、広大な景観の中で、ずっと不思議な夢に微睡み続けていたのだろうか…。その夢の続きは、12月16日にヒューリック東京でおこなわれる「Solitude Hotel 6F yume」へと繋がっていく。この物語は、また同じ階で綴られる。その続きの世界へ、またどっぷりと溺れたい。

VJ / レーザー / 特殊効果 / 演出:huez
OHP:ハラタアツシ
写真:稲垣謙一

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