10代の子を洗脳してやる

もっさ(撮影=村上順一)

——ところで『ONE!』の「こんがらがった」では「皆殺しのメロディ」(THE BLUE HEARTS)のタイトルが引用されるなど、アルバム全体で引用が多い様な印象がありました。

朝日 このバンドをやり始めて、ふたを開けたらなんか邦楽宣伝バンドみたいになっていました(笑)。「許せ!服部」の服部はUNICORNさんのアルバムからです。もともとUNICORNさんが大好きで、そのアルバムを一番よく聴いたんですよ。あとは「めっちゃかわいいうた」に<事変なら一番OSCAが好き>という歌詞があって、曲も「OSCA」みたいにテンポが速くなるんです。

 「タイフー!」はフジファブリックさんの「TAIFU」やはっぴぃえんどさんの「颱風」から来ています。フジファブリックさんの曲では台風って言葉は全然出てこないんですけど、はっぴぃえんどさんの方は「めっちゃ『台風』って言うな」と思ったんですよ。なので「台風」って連発させてみようと。リフやテンポ、ノリはアークティック・モンキーズの「Brianstorm」なんですけどね。誰にも気づいてもらえないので、最近は自分でしゃべっています(笑)。

 そもそも僕が聴いていたバンドがそういうことをしていたんですよ。昔のバンドの曲名とかを付けてたり。昔のバンドも、オリジナルアルバムにしれっとカバー入れたりするじゃないですか。だからジミ・ヘンドリクスの「Fire」もレッド・ホット・チリ・ペッパーズの曲だと思ったり、バディ・ホリーの「I Fought the Law」をザ・クラッシュの曲だと思っていたり、勘違いを結構していました。「この人たちは好きな音楽を宣伝したいからやっていたんだな」って音楽をやるようになってからなんとなく感じてます。

 くるりさんは昔の曲を完全にオマージュした曲をやったり、ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんはオアシスのギターソロをそのまま引用していたりして。音楽で音楽を伝えていくって面白いなと思ったんです。それをやっても「これが自分たちのバンドだ」「自分たちの音楽だ」って言い切る自身があったからやってたんだろうなと。「タイフー!」もオマージュではあるんですけど、他の人に同じ材料を渡しても絶対ネクライトーキーの「タイフー」は僕にしか作れない。そういう気持ちだけはちゃんと持っています。

 ネクライトーキーは10代の子とかも聴いてくれてると思うんですよ。せっかくそういう子たちが聴いてくれているなら、僕が10代の頃に聴いた音楽を詰め込んで洗脳してやろう、という遊び心みたいな感じです。でもどうせなら楽しみたいなと。次回作ではこんなにベタベタにはやらないかもしれませんけど。1stはそんな感じの曲が多いです。

——それで最初に洗脳されるのが、もっささんということですね?

もっさ この話は何回も聞いていて知ってはいるんです。でも最初に曲を持ってくる時は何にも言わないので。フジファブリックさんの「TAIFU」はわかりましたけど、アークティック・モンキーズだったり、他の曲のことは聞いてから「まじで?」って元ネタを聴いています。「言われてみれば、そうかも?」という感じで、その消化の仕方が上手いんですよね。自分のなかで自分のものとして出せる力があるのはすごいなと思います。

——確かに僕たちが今好きなメロディや和声とかの感覚って、過去の音楽から引き継がれてきた文脈の産物だと思います。それを繋いでいくのは大事ですよね。

朝日 さらに昔のバンドを聴いて「僕の好きなアーティストはこういう音楽を聴いてたのかな」と掘り下げて聴く習慣ができるとますます音楽って楽しいんです。タイムリーなところでいうと、映画『ボヘミアン・ラプソディ』のクイーンってロックだけじゃなくて、クラシック的な要素とかもあるじゃないですか。それをロックに入れたっていうすごさがあるなと思うんです。しかもメロディの美しさを残したまま、かっこよく。

 だから彼らがどんな曲を聴いてたんだろうって想像するのが楽しいんです。そんなふうにネクライトーキーを聴いた人たちも思ってくれたらいいな。なんならネクライトーキーのことをバカにしてくれてもいいです。「甘いぜ、こんなやり方じゃ」くらいの生意気な音楽キッズが増えたらいいなと思っています。

——朝日さんは今28歳とのことですが、よく過去の音楽をお知りですね。

朝日 知らないからこそ憧れがあるのかもしれません。ちょっと音楽を調べて「こんなかっこいいバンドがいたのか」と。高校生の頃までYouTubeもなかったので大変でしたけど、その時は人が知らない音楽を聴いてる方がかっこいいと思ってました(笑)。古いバンドだったり、ワールドミュージックだったり、ブルースだったりを意味もわからず無理やり聴いてましたね。

 今それが役に立ってます。あと昔は輸入盤の方が安くて財布には優しかったです。母親がテープを持っていて、イエスとかニール・ヤングを聞かせてもらっていました。母は学生時代にバンドをやっていて、今も新しい音楽を探しているみたいです(笑)。最近僕はエマーソン・レイク・アンド・パーマーも好きですね。今聴いても全然古くないんですよ。特にイエスの『Fragile』なんかはオーパーツなのかというくらい、時代を感じさせないですから(笑)。

記事タグ