成熟が見える、大テーマだったスペース作り

――サウンド面では全体的に凄くこだわったのではないかと思うんです。

 その通りで、こだわりました。

――全体的に「空間」を感じるというか、聴いていて心地が良いんです。

 嬉しい! それ凄くポイントで。空間、スペース作りは大テーマでした。「とりあえず歌おう」とか「とりあえずここに何か入れよう」というのはナシで。わりと無駄がなくシンプルなところ、歌い方もトラックの感じも、バラードも唯一「Last Love Letter」という、凄くシンプルな構成のバラードも、イントロがなかったりアウトロも余韻もなかったり。そのシンプルな空間は本当に大切にしていたので、「よくぞ気付いてくださった」という思いです!

――隙間があったら何か入れたいですもんね。

 そうそう、「入れた方が良いかな?」っていう。その自分に気付いて。正解はいつだってないから。それでやればやるほど、それこそ押しつけになりたくもないし、聴いている人が想像できるような“間”が必要だと、今までの作品を聴いていて思って、間を大切にしました。

――サウンドも歌声もそうですがスペースがあるなかで楽曲がしっかりと成り立っているのは、やっぱりボーカリストとしてBENIさんの表現力、パワーがあるからだと思うんですよね。もともと持っているものに加え、これまでのコラボによって新たに備わった力というか。

 嬉しい!

――さて、今作収録の楽曲はいつ頃出来たのでしょうか?

 一番最後にレコーディングしたのが「Intro」と「Cinematic」です。「Arigato」と「MONEY」と「S.U.K.I.」は、わりと初期の頃ですね。「Last Love Letter」と「No one else like you」は後半で作りました。

――「MONEY」は金欲への憎悪が凄いなと思いまして。何か鬱憤が溜まっていた?

 溜まっていたし、女友達といっぱい話したときにインスパイアされることがあって。みんな共通して言えるのは、カードの明細が来るときの「ウワァ!」みたいなあの気持ち(笑)。リアルなそういう部分をあえてこういう風にドラマチックに、ちょっとスカした感じで歌うような。ちょっとファンキーな感じにはしたかったんですけど。ライブでは披露しているんですけど盛り上がります。

――声も少し荒々しくなっているというか。

 現実的なことを非現実的に伝えるというか、ラジオボイスで。

――それがまた面白いですよね。アルバムには逆再生も使っていますが、この意図は?

 逆再生に何でもしてみて、どういう風になるのかというのは個人的にハマってました。それを今回取り入れたりしました。これはサイドストーリーなんですけど、実際に逆再生で曲を作って、それを初めてツアーのときに更に逆再生で戻して種明かしじゃないですけど、そういう風にやったら素敵じゃないって。実はイントロを作ろうと思ったんです。イントロを逆再生。本当はこうだけど、それを逆にしてイントロとして収録する。みんな「何なんだ」と思わせて、ライブで「こういうこと言ってたんだよ」っていう風にやろうとしたんですけど、あまりにも聴き苦し過ぎて。「これ1曲目に流れたら絶対に止めるよね」って(笑)。こんなの1分も聴きたくないという風になってヤメたんですけど。それくらい逆再生がテーマだったので、今聞かれてびっくりしました。何で知ってるのって!

――いや、気づくと思いますよ(笑)。その「Intro」ではフィールドレコーディングのような音が入っていたりしていますが、それは映画っぽく見せるためでしょうか?

 そうですね。コンセプトが「自分の日常が映画だったら」という。だから街の鳴りを。歌っている私も居て、語る私も居てという。心の声をテーマに映画の幕開けっぽく作りました。

――「No one else like you」というのは、2人がこれまでの過ちなどを認め合って、繰り返さないで、許してね、という感じでしょうか?

 そうです。凄く爽やかな曲ですけど、実はめちゃくちゃ激しい「嘘でしょ」というレベルのケンカを繰り返す2人がお互いに「さんざん色んな人を見てきたし諦めよう」と思っていたけど、「やっぱり他に居ない、あなたみたいな人」という仲直りソングなんです。これは実際、Michael Kanekoと私の共通の友人のカップルが居て、そういうカップルなんです。それをネタにというか、インスピレーションに曲を書いたんです。

――そういった爽やかな感じなのに、最後「Last Love Letter」が来たから、より衝撃度が凄くて。

 確かに(笑)。

――「CANDY」も冒頭は激しく怒っているような感じですが、その怒りの表し方が面白いなと思いました。

 そうですね。どこかちょっと飽きれているというか。怒っていても、ちょっと引いたところから。余裕というか、それすらちょっと楽しんじゃっているところですかね。確かに「PULLBACK」も「CANDY」もそうです。感情のまんま表現していないというか。

――少し大人の女性という感じ?

 「そうやって傷付けられているけど、結局戻っちゃうんだな私は」みたいな。ちょっと自分にも飽きれているような。そんな状況も以外と嫌いじゃないのかなっていう。ちょっと足りない、辛いくらいな…ドMですかね?

――どうなんでしょうね(笑)。

 そういう心境はちょっとありますね(笑)。

――「READY25」は横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手の入場曲として書き下ろされたものですが、これを最後にしたのは?

 ちょっと番外編というか。今年リリースしたのでアルバムには入れたかったんですけど、『CINEMATIC』の世界感というよりも彼のために書き下ろしたので、ボーナストラックとして入れています。

――これはこれでエンドロールになっている気がしていいなと思います。

 それは考えになかったですけど、確かにテンション的には。「Last Love Letter」で終わりだとわりと落ちたままなので、これでちょっと前向きに。かなり力強い歌なので。ライブでも歌っていてパワーがある歌だなと。スタジアムをイメージして作ったので、そういう意味では規模感で言うと「よし、行くよ!」みたいなのは唯一ある曲だから、多分最後じゃないと成立しなかったと思います。

――MVの撮影はどれくらいかかりましたか?

 一日で撮れました。26時間くらいですかね。室内もありましたし、外もありましたし。

――演じるのは大変でしたか?

 初めてのここまでの演技だったので、本当に新しい経験でしたけどもっとやりたいなと思いました。ストーリーを実際にここまで作り上げるというのは観ていても更に深みが出て。

――今作はBENIさんにとってどういう作品になりましたか?

 今回は思い入れがとにかく。3年越しで作ったというのもありますし、本当に1曲1曲のストーリーを膨らませながら、それを映像でも表現してという、かなり作り上げた感じの作品になって、とても大切な一枚が出来たと思います。毎回、最高傑作を作るつもりで作っているんですけど、今回はきっと自分のディスコグラフィの中でも深く残る一枚になったと思います。

――ツアーが12月14日から来年1月12日までおこなわれます。どういったものになりそうでしょうか?

 まだ作り上げている最中ですけど、今回はホールが最後にあって、ライブハウスから始まるので、その二段階で違うステージが観れると思うので、『CINEMATIC』を最大限ステージに落とし込めるように、映像をこだわりたいなと思います。

――ミュージカルっぽいところも出てきたりしますか?

 目でも楽しめるような演出は期待して欲しいです!

(おわり)


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