密着取材で見えたもの

 撮影は10月某日、渋谷、そして都内でおこなわれた。午後10時過ぎ、日中は人混みで賑わうこの街の路地裏から撮影が始まった。ステップを踏みながら街を抜けていくメンバーを追いかけるように撮る。ドキュメンタリーチックだ。桜丘町の坂を下り、鉄道のガード下を抜け、そして歩道橋を伝って、明治通りへ、渋谷の中心地へと入り込んでいく。

MV撮影の現場

MV撮影の現場

 ビルのネオンの光は時折、空気に屈折して幻想的な輝きを放つ。

 タワレコ前の交差点で踊る健司。路地裏の階段を颯爽と駆け上がる隆児。

 かと思えば、赤い色のライトは赤ちょうちんにも見えてくる。日本の縮図がそこにはあった。渋谷スクラブルは2年後には東京五輪で賑わいを見せていることであろう。

MV撮影の現場

MV撮影の現場

 撮影中は「LIGHT」が流れている。この曲に乗せて歩くメンバー。康司は「このテンポで歩いたら、自然にはや歩き、ステップを踏む感じになる。渋谷の街をノリノリで歩けるのはいいですね。かなり振り切りました。これぐらいやらないと面白くないでしょ」と語っていた。自然とステップを踏み、笑顔になる。

 昼夜は逆転しているが、南アフリカのシーンにどこか重なるところもある。

 しかし、なぜこうした映像を撮ろうと思ったのか。その謎を解くにはまず、この曲に込めた思いを聞く必要がある。

康司。MV撮影の現場

 康司「主軸にダンスミュージックをやってきたなかで、自分たちが求めていくダンスミュージックの新たな提案ができる、新しい音楽の楽しみ方を提供できるのではないかと思いました。挑戦的で刺激的な曲になった。新しい切り口の『飄々とエモーション』が出来て、そのビート感で踊るというのは、演者としてもお客さんとしてもより一層、フレデリックのライブを楽しめるじゃないかと思った。それと今回は歌詞が多くなくて、一つ一つの言葉の重さやはっきりとしたテーマを伝えられるにはこういうビート感ではないかと思いました。時代的にスロウな曲を求めている傾向にありますが、でもBPMの問題ではなくて、早くてもメロウな曲もありますし、ゆったりでも重くどっしり構えているものもある。そのなかで自分たちの効かせたいビート感が、この曲でベストにできたなと。ダンスミュージックと言っている限りではどこでも踊れる音楽をと思っていて、洋楽はそういう部分で素敵なものが多い。それを自分たちが再現するために最適だったのがこの曲でした」

武。MV撮影の現場

 武「ギターロックの上にダンスロックをのせていたけど、ギターロックを取っ払って根幹をみせた。これまでもあったけど、よりダンスミュージックに近づけた。よりサウンドに気を付けたし、より言葉を重視したかった。80'sを更に進化させた。それだけ、これまでの曲にダンス要素を持っていたことになる。これまでもあったけど、音像をより最新にしている」

隆児。MV撮影の現場

 隆児「次はどんな感じで出そうかという話は皆でして、それに康司君がめっちゃうまく応えてくれた。あまり安い意味で捉えられたくないけど、流行りみたいなのは反映させていきたいと思っていて、Bメロでドラムが抜けるということなど、バンドだけではあまり成り立たない曲も挑戦していきたいと思っていて、それを康司君がしっかりとやってくれたなと。ギターはカッティングとバッキングをやって、苦戦は一番なかったですね。でもどこまで減らすのかは挑戦しました」

健司。MV撮影の現場

 健司「今までありそうでなかったし、ないこともなかった楽曲。リード曲としては挑戦的な1曲だと思うけど、これまでフレデリックがやってきたことを考えれば、分からないこともない。やってきたキャリアや音楽性を考えたら今出すのが一番。バンドにとっては凄く良い新しい扉を開いてくれる楽曲になると思います。自信はたっぷりです」

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 日付が変わった午前2時。撮影場所を品川ふ頭に移した。目いっぱいの光を浴びて踊るシーンだ。光源の強さに浮き立つ地平線。健司は<FLASHBACK LIGHT>のところで腕を振り下ろす。その瞬間、何かの映像が蘇りそうだ。「オドループ」なのか、「オワラセナイト」なのか。それとも世界なのか。

MV撮影の現場

 時折焚かれるスモークは、光は屈折させてより広範囲へと広がる。マグライトで照らされた光は、まるで虹のような光彩を作っていた。幻想的な雰囲気だった。これまでのMVでは多彩なカラーのライトが使われていたが、白一色とシンプルだった。音楽そのものを光で表現しているかのようだった。

 このシーンこそ、MVで多用に差し込まれている、夜に健司が光を浴びて舞うシーンだ。

MV撮影の現場

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 こうして、過去の取材などを振り返ってみると、これまではリズム先行で言葉を選んでいた節がある。しかし、今の彼らは、言葉からリズムを付けているようにも感じる。言葉を重視した先にたどり着いた洋楽的ダンスミュージックのアプローチ。この両立こそがフレデリックの核であり、唯一無二の音楽となるだろう。

 神戸で産声を上げたフレデリックの音楽は今、世界に浸透しようとしている。オドループ現象が世界的に起こる可能性がこの曲、このMVには秘めている。

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