俳優の村上虹郎が主演を務める映画『銃』が17日に公開初日を迎え、都内で舞台挨拶がおこなわれた。この日は村上と、共演の広瀬アリス、リリー・フランキー、日南響子、新垣里沙、岡山天音、後藤淳平(ジャルジャル)と武正晴監督、プロデューサーの奥山和由氏、原作者の中村文則氏が登壇。映画制作への経緯や、撮影のエピソードなどを振り返った。

 映画『銃』は芥川賞作家である中村氏のデビュー作を原作とし、『百円の恋』などを手がけた武監督がメガホンをとり制作された実写化作品。ある雨の日に河原で偶然拳銃を拾った一人の大学生が、その銃の魅力に取り憑かれ、狂気に染まっていくさまを描いたストーリーで、銃を拾い、その運命に翻弄される大学生、西川トオル役を村上が演じる。またそのトオルと一時心を通わせるヒロイン・ヨシカワユウコ役を広瀬アリス、殺人事件の現場で消えた拳銃を追う中トオルにたどり着き、つきまとう刑事役をリリーが担当と、インパクト十分なキャストが集結。

 またトオルの軽薄な友人・ケイスケ役に岡山、トオルとワンナイトラブの関係となる、通称“トースト女”役にモデル・女優の日南、さらに元モーニング娘。の新垣、道端でトオルに声を掛ける警官役に後藤と、個性的な若手陣の面子が脇を固める。また本作は『第31回東京国際映画祭』で日本映画スプラッシュ部門に出品、武監督が日本映画スプラッシュ監督賞、村上が東京ジェムストーン賞を受賞と2冠を達成し話題を呼んでいる。

リリー・フランキー、村上虹郎、広瀬アリス

リリー・フランキー、村上虹郎、広瀬アリス

「運命の映画だったと思う」奇跡が積み重なり完成した作品

 「原作は、遅まきながら自分のバイブルが出きたと惚れ込みまして」と、原作小説と出会ったときの衝撃を回想する奥山プロデューサー。本作完成までには、一度はとり損ねた原作権を奇跡的に手に入れ、スケジュールが合わなかったはずの武監督がアサインでき、そして村上のキャスティングなど様々なラッキーに恵まれ完成にたどり着いたことを振り返り「誰一人欠けても映画はできなかった。運命の映画だったと思う」と改めて実感する。

 そんな奥山プロデューサーをはじめ映画に関わった関係者全員に向け、中村は「(完成した映画は)すばらしいなと思いました、本当にすばらしい方々に演じていただいたと思う。今日はひたすらお礼と、(映画で演じていただいたのはそれぞれ)大変な役立ったので、ひたすらお詫びをするつもりできた」などとジョークで会場を沸かせながら、この日を迎えた喜びを語る。

 また映画では、原作にない場面にて、中村が自ら提案し台本にセリフを追加したシーンもあり、中村が今回はじめてそんな行為に及んだシーンに対して武監督は「感動しましたね。今日は見ていて泣きそうになりました。“俺、まだ病んでいるのかなと思いましたが」と冗談を絡めながらも、印象的なシーンになったことに対して満足の声を上げる。

 映画は、中村が原作小説を執筆したフリーター時代に住んでいたという東京・練馬の高島平にて撮影。現場となったアパートの一室には、村上が役柄に入り込むために撮影中はずっと住んでいたことを明かしながら「ニコチンとカフェイン。本当に中村さんの作品、主人公は映画『コーヒー&シガレッツ※』(の世界)ですよね。愚かに、狂気じみた感じで摂取した感じが多くて、中村ワールドにアリ地獄のように引き込まれて、いつ抜け出せるんだ、という感じでした」とかなり役に柄に入り込んでいた日々を振り返る。

村上虹郎

遅刻して登壇しながら、舞台挨拶を盛り上げたリリー

 この日リリーは予定時間よりも遅れて登壇。慌てふためきながら登壇しながら「(今日登壇は)12時(舞台挨拶は11時30分より)だと奥山さんから聞いていて…」などとコメント、さらに村上のファッションを見て「普通にこの格好で新宿を歩いていたら、3時間で2回くらい職質をされるぞ」などとツッコミコメント、会場を沸かせる。

 一方、奥山プロデューサーは、ブルーリボン賞の授賞式で偶然リリーと対面したことが、今作へのオファーのきっかけであったことを振り返りながら、オファーの返事がクランクイン直前だったことを回想、対してリリーは「呼ばれてすぐ返事するんじゃ、“やりたがっているんだ”と思われるじゃないですか。そんなに簡単に、人に対して股を開いていたら…」などと返し、爆笑を誘う。

 また舞台挨拶を迎えるまでに、偶然道端でリリーに会ったことがあったと語る広瀬は、リリーの登壇前に「“今日は、胸元の開いたTシャツを一緒に着て登壇して、盛り上げようよ”なんて言っていたんですけどね」などと語り笑いを誘っていた。

 そんな広瀬に対してリリーは村上がコメントをしている間の広瀬に対して「アリス、虹郎のコメントに飽きた顔をしてんじゃねえよ」と突然ツッコミを入れて広瀬を大いに慌てさせる。しかし広瀬もお返しとばかりに、岡山がコメントをしている間にじっと村上の腰の辺りを見ていたのを「リリーさん、一番つまんなそうな顔!」などと突っ込みを返し、大きな笑いを誘った。

広瀬アリス

「怖い」「緊張する」当初は敬遠される雰囲気もあった村上。だが本性は「すごく気の使える20歳」

 そんな村上との共演に、広瀬は“怖い”という印象をいだいていたことを告白。「やっと取材で本性が分かったので。それ(村上との共演)が居心地が悪かったわけではないですが」と現場の村上の様子を振り返りながら「飲み込まれないようにという感じですね。引っ張られたら、誰もこの救えないと思ったし」と覚悟を決めていたことを回想した。

 今年は村上、広瀬らと4回の共演を果たし、顔なじみとなっている岡山だが、村上の印象に対して「年下だけど緊張する感じしたね。広瀬さんは全然緊張しないですけど」などと共演のコメントを振り返る。一方、村上と初共演のリリーだが、父・村上淳とは以前から知り合いであることを明かしながら「親のいいところだけをもらったなと。性格もフラットだし、共演できてよかった」と共演の感想を語っていた。

 また、村上との絡みのシーンで今回わずかに出演した後藤だが、村上が事前に後藤のことを調べ、ザ・ビートルズファンであることを突き止めており、控え室ではザ・ビートルズの話で盛り上がったことを回想し「虹郎くんは、アイフォンで(ザ・ビートルズの曲を)掛けてくれたり。すごく気の使える20歳だなと思いました」と、村上を絶賛していた。

 今回「トーストの女」という通称で登場した日南は「名前が結構可愛いなと思っていました」とその名前にも興味津々。村上とのセクシーなシーンに対しても「トオルが来るたびにそれを受け止めて、という役だったんですけど、(村上は)来るたび表情が変わる。それが新鮮で大変だったけど、やりがいがあって楽しかったです」と有意義な撮影であったことを振り返る。

 また、今回子供に対してDVを働くという役柄の新垣だが、実際にはトオルの住む部屋の隣で、子役と共に叫ぶという役目。普段は舞台での活躍の多い役柄だが、今回は監督の演出によりその役目を果たしていたことを振り返りつつ「子役のレイくんと一緒の撮影だったので、“一緒に頑張って叫ぶんだよ”と言っていたのを思いだすんですが、素敵にしていただいて嬉しかったですね」と完成した映像に満足の様子。カメラの回ってないときの、新垣と子供の様子を、武監督は「(二人が)仲良くしていたのに、救われましたね」と、緊張感漂う現場で、数少ないよりどころを見つけていたことを明かしていた。

村上虹郎、広瀬アリス

村上虹郎、広瀬アリス

 ※映画『コーヒー&シガレッツ』:アメリカのジム・ジャームッシュ監督の映画。2003年公開。

【取材・撮影=桂 伸也】

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