20代だったら別のものになっていた

――個人的には「蒼波」という言葉が印象的でした。

 歌詞ができあがってから、タイトルにすごく悩みました。「海」というのがひとつテーマとしてはあって。「蒼波」と調べたら中国の言葉なんです。当初は馴染みのない言葉だったので、この字で「あおば」にしようかなと思っていました。そして真矢さんへの第一報を「直したいところがあったら教えてください」と添えてお送りしたんです。

 すると真矢さんからの返信がありました。この時、LINEの「すべて見る」(長文を送ると表示される)というボタンを初めて見ました(笑)。それくらい長い文章で感想を送ってくださるんです。「この表現は、こういう方がいいと思います」と毎回提案してくださって、そのやりとりのなかで「(タイトルについて)私は『そうは』が好きです」と。それで「あおば」ではなく「そうは」になりました。歌詞自体もとてもシンプルなんです。無駄なものをそぎ落としていってできた感じで。

 それからタイトルでは、「イヤフォン」もすごく悩みました。「歌詞のキーになっているのはイヤフォンなんだけど『イヤフォン』はどうなんだろう?」と最後まで考えていましたから。「イヤフォン○○」みたいなタイトルにしようかとも思っていて。「星をこえて」なんかは最初から「これだ!」と思っていました。サビか、歌の始まりでこの言葉を使おうと考えていましたね。

Ms.OOJA

――新曲は既にライブでも披露されていますね。

 今回は人の人生を歌っているじゃないですか。だから不思議なんですけど、カバー曲を歌っているみたいな感覚があります。人の人生を書いて歌うというのは、自分のことを歌うよりも深くて。染み入るものがあります。

――「星をこえて」はミュージックビデオも公開されています。

 本当に素晴らしいMVになりました。しほりちゃんも本当に忙しいなかで出演してくれましたし。撮影クルーのみなさんも、普段映画とかを撮ってらっしゃる素晴らしい方たちばかり。予算とかも度外視でやってくれてて、映像を作り上げることに情熱を注いでくださったことに感動しました。全員で作り上げたということをとても感じる時間でしたね。

 朝の6時から撮影が始まったんですけど、クルーの方は前日の夜から準備してくださっていて。終わったのは夜中の3時、4時。こんなに長く撮影したのは久しぶりでした(笑)。自分が登場するMVって最近作っていなかったので。

 しほりちゃんの撮影をモニター越しで見てると「やっぱり女優はすごいな」と。ただ立っているだけで絵になるんですよね。ずっと見ていられるんです。彼女の演技力を感じましたよ。あと、幸せなシーンの撮影をしながら「星をこえて」が重なるとすごい切なくて、悲しいんですよ。モニターを見ながら何回も泣きそうになってしまいました。

――レコーディング時のエピソードなどあれば教えてください。

 制作をしている時に、貫地谷しほりちゃんが「私もスタジオに行きたい」と言ってくれて。その3日後くらいに本当に来てくれたんです(笑)。制作って、プロデューサーとトラックメイカーと私とで歌詞とメロディとトラックを同時に作り上げていくんです。なのでスタジオに6時間くらいこもるんですよ。

 そこにしほりちゃんは手作りのチーズケーキを焼いてきてくれて。しかも低糖質で「女子力高い!」みたいな(笑)。そこでしほりちゃんも歌詞の表現とかに意見を出してくれて、一緒に作れたというのはすごい印象に残っていますね。

――世界的には近年、女性の美しさ、力強さを賛美するような歌が多くリリースされています。今作がそういう流れと重なる様に思えましたが、いかがでしょうか。

 特に「女性最高!」という想いがあったというわけではありません。でも女性には女性にしかできないこと、男性には男性にしかできないことがあるとは思っています。適材適所というか。フェミニストではないし、やっぱり今の私にできる一番自然な形がこれだったのかなと思っています。「女性だから強く生きていこう」とかそういうメッセージではないのかなと。女性の柔らかい部分だったり、それぞれのゲストの人生観だったり。それが性別関係なく誰かの生きる助けやヒントになったらいいですね。

 素晴らしい女性の働き手が増えてきた、というのは色々な流れのなかで感じていることなんです。今の私の年齢とかキャリアがあるからこそ、こういう形で自然にできている。例えば、これが20代だったらまた全然別のものになっていると思いますよ。もしかしたら、もっと「女子イエイ!」みたいなものになっていたかもしれませんし(笑)、もっと強いメッセージを発信していたんじゃないでしょうか。それは今の私が歌うメッセージとは合わなくなってきていると思います。

――次作の構想などはありますか。

 曲はたくさん作っているので、その曲を早くまとめたいなという想いがあります。今回はこの「Stories」という、普遍的な音や言葉を作ることができたのでまた新しい方向に向かっていくんじゃないかなと思います。

――今後の展望などあれば教えてください。

 10月28日で36歳になったので、いよいよ40代が近づいてきました。歌手としてデビューした、20代後半とはもう全然違うんですよね。歌詞の作り方とか、曲調も違うし、ライブの仕方もどんどんシフトしていく。それが私のなかでは自然な流れなんです。もともと歌謡曲も好きだし、ポップスも好きだし、洋楽も好きですけど、そのなかにも自分の好きなテイストがあるんです。それに向かって、色々なものがそぎ落とされてもっとシンプルになっていく様な気がします。

 年齢を重ねることは悪い事だとは思いません。40代、50代に素敵な方がたくさんいるので楽しそうだなと思っています。もちろん年を重ねることで抗えなくなってくる部分もたくさんあります。美容だったり、体力だったり。ただそれに対して達観する部分というか、気持ちの部分で悟りを開いていけるんだと思います。生きるのは楽になってくるんじゃないかなと。恋愛や仕事も。

 最近は恋愛していないですけど(笑)、40代にとっておこうかなと思ってます。その年齢になってから出てくる自分の魅力もあるはずですし、人の魅力に自分が気付ける様にもなっていくんじゃないですか。頑なになっているものがほぐれて、心の間口が広がっていく様な気がします。もちろん恋愛する機会があったらしますけど(笑)。

(おわり)

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