すべての事柄は誰かの愛で出来ている

――またひとつ良い経験が出来ましたね。さて、4枚目のアルバム『LOOKING FOR THE MAGIC』が完成しましたが、アルバム用の新曲はいつ頃から作り始めたのでしょうか。

亀本寛貴 アルバムに入っている新曲は武道館公演が終わって、少し休みをもらってから書き始めました。夏フェスと並行して作っていった感じです。この中では8月にデジタル配信リリースされた「ハートが冷める前に 」が最初に出来た曲です。

松尾レミ 「TV Show」と「Looking For The Magic」はLAでレコーディングしたかったので、早めにデモを上げて、そのあとに「Hello Sunshine」と「4 Dimensional Desert」、最後に「Love Is There」を作りました。

――4月にリリースされたシングル「All Of Us」では、イギリスでマスタリングをしてもらっていましたけど、今回はアメリカのLAでレコーディングというのが興味深いです。今回なぜLAでレコーディングをしたいと?

松尾レミ まず、今回ジャケットや「TV Show」のMVでも映っているサルベーションマウンテン(芸術家レナード・ナイトが30年以上の年月をかけ作り上げた、神への愛、そして神の愛を表現したアウトサイダー・アート)で、アルバムのアートワークを仕上げたいということを3年ぐらい前から考えていました。この場所ということがまず大きかったです。あと、LAに大好きなエンジニアとミュージシャンがいたので、そのすべてが揃ったのがLAでした。

――サルベーションマウンテンは砂漠の中にあるみたいで、暑さが大変だったみたいですね。

松尾レミ 実は撮影の前に個人的に旅行でも行きました。その時は武道館が終わったあと、5月に行ったんですけど、日本の真夏というぐらいの暑さだったんですけど、再び撮影で9月に行った時は40度を超えていて、マネージャーが熱中症になって倒れてしまったり…。私達も水を暇があったら飲み続けるみたいな感じで、気温は本当にしんどかったです。

亀本寛貴 日焼けも凄くて。僕は寒いのよりは暑いほうが好きですけど、暑すぎましたね。

松尾レミ 過酷でしたけど、ここで撮影できる喜びが勝って、楽しい撮影でした。

――アルバムのオープニングを飾る「4 Dimensional Desert」は、そのサルベーションマウンテンからインスパイアされて出来た曲だったり?

松尾レミ タイトルは完成してから付けたんですけど、亀からSEを作りたいという話が出まして、完成形には歌が入っているんですけど、まずはインストを聴かせてくれました。そこから歌を入れたいなと思ってアレンジなどまた練ってこの形になりました。そこからタイトルをどうしようかとなった時に、砂漠に行った記憶と、サイケデリックでどこにいるかもわからないような、不思議な空間からこのタイトル付けました。これはLAに行ったからこそ出来たタイトルですね。

――亀本さんはこの曲を制作するにあたって、何かきっかけがあったのでしょうか。

亀本寛貴 SEを作りたいと思った動機は、僕らが武道館だったり、大きなフェスのステージに登場してくる時に、スケール感の大きな曲が流れてきたらすごく良いなと思いました。この曲で僕らの個性がより際立って、他のバンドとは差別化も出来るなと。

――惹き込まれる音楽ですよね。このシタール(インドの楽器)も亀本さんが弾いているんですか。

亀本寛貴 これはシンセの音源にシタールシミュレーターを掛けています。このシミュレーターを通すと、だいたいどんな音でもシタールっぽくなってしまうんです(笑)。

――なまで弾いたと言われたら信じてしまいますけど、シンセの音だったんですね。あと、気になったのが歌なんですけど、逆再生されていますが、この音源を逆再生すれば何を歌っているかわかります?

松尾レミ もちろんわかりますよ。もしご興味がある方は是非試してみて下さい(笑)。

――GLIM SPANKYは60年代や70年台の音楽からインスパイアされていることもあり、逆再生の使い方が上手いですよね。

亀本寛貴 逆再生のギターを録るのは僕、得意なんです! 逆再生をすることで映えるフレーズというのがあります。まずは、とりあえずたくさん弾いて、そこから細かく編集していきます。例えば、8小節分あったとしたらその8小節のフレーズをいっぱい録っていくんです。

――聞いただけで大変そうです。

亀本寛貴 そうですね。弾いたフレーズによってはレベルも変わってしまったりするので、音量が下がったところをちょっと上げたり、音量の微調整とかを細かくしていきます。綺麗に鳴るように整えていって。

――だから、不思議な音ではあるけど、バックの音に馴染んで歌を邪魔しない感じになっているんですね。

亀本寛貴 普通に弾いて単純に逆再生しただけでは、良い感じにならないことが多いです。違和感が出ないようにエディットしていきます。

松尾レミ 「4 Dimensional Desert」の歌に関しても、逆再生しても言葉に聞こえるように「っ」とか促音を調整して、歌じゃないものを歌に聞かせるアレンジをしました。

亀本寛貴 逆再生したときをイメージして、歌ったり弾いたりしますから。

――その境地に辿り着くのは至難の業ですね。さて、続いてはこのアルバムで最後に完成したという「Love Is There」です。アルバムのバランスを見て最後に作った感じですか?

松尾レミ いえ、ピースが足りないとか、そういう感じではなかったです。

亀本寛貴 僕の中ではちょっとバンドミュージックすぎる音が多いなと感じていたところがあったので、シンセを多く取り入れた感じにしたいと思って、敢えてこういうアレンジ、音像にしたという経緯はありますけど。

松尾レミ 確かにシンセをけっこう重ねていたり、特徴的かなと思います。今回歌詞は抽象的な内容にしています。あまり答えを決めつけない感じの歌詞を書きたいなと思いました。

――捉え方が聴いたの人の数だけありますよね。少ない文字数で的確に表現されているとは思うのですが。

松尾レミ わかりやすい言葉での組み立て方というのはこだわって書きました。そういったことは今までもしてきていたんですけど、この曲は意味を持たせるというところも曖昧にしています。今回のアルバムは自分の理想郷や桃源郷のようなアルバムにしたいなと思っていて、言葉でメッセージを伝える曲は「TV Show」など揃っていたので、それもあってこういった曲は宙に漂うような言葉を使いたいなと思ったのがきっかけです。だけど、聴いた人が「もしかしたらこういうことを歌っているのかな」と、ふとしたときに答えが見つかるような歌詞にしたいなと思って作りました。それが「Love Is There」が他の曲とは違うところです。

――人それぞれの答えがあるなかで、レミさんにとっての“愛”とはどのようなものなんですか。

松尾レミ この曲を書く時にいろいろ考えました。この曲を聴いた時、何を“愛の扉”に置き換えることが出来るだろうと考えたら、数え切れないほど答えが見つかって。人の愛もあるし、自分への愛というところでは、自身が自分のことを嫌っていて愛の扉を開けていないとかもあると思うんです。身近なものに例えると分かりやすいんですけど、生活の中でも愛は溢れていて、ここにある机の角が丸まっているのもデザイナーさんの愛だったり、ペットボトルのキャップに溝が入っているのも、キャップを開けやすくさせてくれている愛だと思います。すべての事柄は誰かの愛で出来ているんです。

亀本寛貴 「誰かの愛で出来ている」ってなんかCMのキャッチコピーみたいでいいね(笑)。

――そう考えると世界は愛に溢れていますね。

松尾レミ そうなんです。そうなると全てに愛があるように見えてしまうんです。自分が「これただの机じゃん」と思ってしまったら、もうそれは扉のようで閉めてしまったら愛は入ってこないし、でも、それを開くのはあなただし、開けた時に愛をくれた人の顔がわかるという歌詞にしました。

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