4人組ロックバンドのTHE BACK HORNが10月17日、ニューアルバム『ALL INDIES THE BACK HORN』をリリースした。1998年に結成、2001年にシングル「サニー」でメジャーデビュー。結成から20年に渡ってシーンで確固たる存在感を示してきた彼ら。今作では、廃盤になっているインディーズ時代の3枚のアルバムを再録し、過去と現在を繋いだファンにとっても嬉しい1枚になった。また、映画化された『君の膵臓をたべたい』などで人気の小説家・住野よる氏とのコラボで生まれた最新曲「ハナレバナレ」も話題。「ハナレバナレ」の制作秘話から、結成20周年における気持ちまで、山田将司(Vo)と菅波栄純(Gt)に話を聞き、住野氏の小説と彼らの歌詞の共通点などについても語ってもらった。【取材・文=榑林史章/撮影=冨田味我】

共通項は、余韻が長く続くところ

山田将司(撮影=冨田味我)

──小説家の住野よるさんと、THE BACK HORNによるコラボが話題です。もともと住野さんが皆さんのファンで交流があったそうですが、住野さんの作品を読んで、自分たちの音楽や曲と通じるものは何か感じていましたか?

山田将司 少し稚拙な表現になってしまうけど、住野さんの作品は、どれもちゃんと闇が描かれていて、そこは僕らの音楽も同じだと思います。それが、すごく人間らしいんです。それに読み手が、主人公の想いや考えと共鳴して、どんどん読み進めていってしまう。わかるなって。気づいたら自分も、その本の主人公になっていて、読み終わってからもずっと心に残るものがあります。

菅波栄純 読んでいる間は、主人公たちと一緒に時間を過ごしているような気になっていて。読み終わったときに、友だちがどこか遠くに行ってしまうような寂しさを感じます。ベースの(岡峰)光舟は、「住野さんの作品は余韻が長くて、あいつら今ごろ何しているんだろう? って考えてしまう」と言っていたんですが、それはすごく分かります。住野さんのファン方がBACK HORNを聴いたら、きっと「分かるな」って言ってくれると思います。

──THE BACK HORNのファンも、ライブに行ったりSNSなどで活動を追ったりするのは、メンバーと一緒に時間を過ごしている感覚かもしれないですね。

菅波栄純(撮影=冨田味我)

菅波栄純 ライブ帰りの寂しさっていうものも、余韻ですよね。俺らも住野さんの小説みたいに、余韻が長く続く作品はいいなって思います。THE BACK HORNの曲の終わり方もいろいろで、ハッピーエンド風もあれば、バッドエンドじゃないけど死んで終わるみたいな感じの曲もあるし。そこでどういう感情が動くかは様々だけど、余韻が長く続くものでありたいと思っています。

山田将司 それにライブ中は、どれだけ肌触りを感じられるか、どれだけお客さんの心に触れられるかを考えてグイグイいくんだけど…。それは気持ちだけじゃなく、感覚としても忘れられないものにしたいと思っているからで、それが一緒にいる感覚になるんだと思う。

──住野さんの『また、同じ夢を見ていた』を読んで、「描写力がすごい」と、オフィシャルインタビューで語っていましたね。

菅波栄純 はい。きっとどのキャラクターにも、なり切って書けているんだろうなって思う。

山田将司 ぜんぜん知らない人のことなのに、「分かる」って共感する。主人公の感情に対して、「人間だからそういうことを思うよね」って感じるのは、それだけ描写が細かいことの表れで、それが大きな魅力なんだなって。

──歌詞を書くときは、お二人は誰かになり切って書くんですか?

岡峰光舟(撮影=冨田味我)

山田将司 俺は、自分視点でしか書いたことがない。

菅波栄純 たとえば将司が作詞した「孤独を繋いで」という曲は、自分の気持ちで書いている?

山田将司 誰かをイメージしたわけではないから。でも、「ライブでお客さんを前にしている俺たち」という気持ちでは書いていて。THE BACK HORNとして、今こういう気持ちを歌いたいとか思って書くことはあるけど、どうしても自分が軸にはなっちゃう。

菅波栄純 それは将司の作り方だから、それもリアルでいいと思う。俺はけっこう、自分以外のキャラクターを作って書くんです。だからリアルさよりは、物語を作っている感覚が強いです。だから毎回歌詞の主人公は将司というわけではなくて、たとえば「コバルトブルー」というライブで定番の曲は、特攻隊員の気持ちになって書いた歌詞なんです。ベースの光舟が歴史好きで、特攻隊の話をしてくれて興味を持って、その話にすごくショックを受けて衝動のままに書いたんですね。

 特攻に出る前の夜に酒を飲んでいる設定で、<逃げちまおうか 今更誰も口にはせず>という歌詞があるんですけど、当時をよく知らない俺がそんなことを書いたら、失礼だと感じたり不快に思う人がいるんじゃないかと思って、光舟に見てもらったんですね。そうしたら「むしろ良い」と言ってくれて。その人たちの気持ちになって書いたからこそ出てくる言葉だし、変に知識として知らないからこそ、人間っぽい言葉だと言ってくれて。どの曲も、そういう感じで書いているんです。

──何かのきっかけに触れて感じた気持ちは、リアルなものですよね。

松田晋二(撮影=冨田味我)

菅波栄純 そう。物語ではあるけど、気持ちはリアルなんです。それをどういう物語で、どういう言葉で書くかという行程が、自分は1つ多いのかもしれないですね。

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