KEYTALKが10月29日、NHKホールで、自身初となるホールツアー『KEYTALK ホールツアー2018 ~あなたの心へ100ヤード 目指せホールインワン~』のファイナル公演をおこなった。インディーズ時代から現在の曲までを網羅する、まさに集大成ともいえるセットリスト。しっかりとしたメロディの上で繰り広げられるダンサンブルなナンバーに場内は終始、大興奮だった。KEYTALKが放つ楽曲の力を、観客は全身で浴び、そして全身で楽しんでいた。【取材=木村陽仁】

狂喜乱舞の幕開け

 開演――。ステージ前に広がる赤い幕にシルエットが映る。観客はそれだけで一気に興奮の度合いを高める。女性客を中心に埋め尽くされた場内。とてつもない歓声に熱気を帯びる。程なくして幕が上がる。そこに広がるのは真っ赤な絨毯とその上に立つメンバーの4人。彼らにとって念願だったホールツアーは、音もかき消されるほどの歓声を浴びて始まった。

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

 幕開けを飾ったのは「Human Feedback」。それはまるでメリーゴーランドのように生き生きとした音がめくるめくように飛び交っていた。息つく暇もなく飛び交う音。それに呼応して跳び跳ねる観客。終始、そういう光景が広がっていた。曲間で音が途切れれば響くざわめき。声高なそれは熱狂に満たされる観客の喜びを表していた。

 曲のなかでも拍子が目まぐるしく変わり曲間も切れることがない。1曲目から全快だった。間髪入れずに届けられていく楽曲たち。どこからどこが始まりでどこからどこまでが終わりかはもはや検討もつかないほどの音を浴びせていく。しかし、この日のライブにあってはそうした定義すら不要ではないかと思わせるほどだった。曲単位ではなく、曲の中にある一小節ごとにドラマがあり、それを楽しんでいるようだ。

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

 ダンスフロアと化した場内に飛び交う黄色い声援。一糸乱れぬ振り。MVで描かれる振付を全体で真似ている。その光景は凄まじいものがあった。そうして足早に過ぎていった4曲。「ASTRO」を終えて寺中友将(Vo&Gt)が「元気ですか! 皆さんの心にホールイワン狙いますよ!」と言って更に盛り上げる。

フォーマルハウト

 それからも「アーカンザス」「MONSTER DANCE」と踊りまくりのナンバーを届けていく。休みを与えさせない。もちろん休みは観客も求めていない。特に「MONSTER DANCE」は日本の音頭祭りを感じさせる要素も入れ込んであるとともに、テンポは早いと思いきや急に遅くなったりと激しく拍子が変わる調子で、まるでジェットコースターのような展開。当然、観客も心を躍らせている。

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

 あっという間に8曲を駆け抜けた。首藤義勝(Vo&Ba)はここで改めてこの日を迎えた思いを口にする。

 「NHKホール、予想以上に熱いです! 皆にはもっと汗だくになってもらう予定です! ホールツアーは前からやりたくて、メンバーの間でも言っていました。ようやくそれができて、しかもファイナルがここNHKホール。みんなと一緒にできて…きょうは色んな曲をやりたくて、外はすっかり秋めいてきたので…金木犀(きんもくせい)を」

 そうして披露したのは「フォーマルハウト」。それまでのダンサブルなナンバーとは異なり、やや趣きは変わり、ゆったりと時の流れを感じさせる楽曲に、今度は心を泳がせる観客。そこには爽やかな心地よさが漂っていた。

 心を潤した後に、八木優樹がアグレッシブなドラミングを披露する。祭りが始まりそうなワクワク感がこみ上げてくる。それを更に高揚させるように小野武正(Gt&Cho)が光の線を描くようなギターサウンドを鳴らす。そうして始まった「シンドローム」。リズミカルとメロディアスが組み合わさった楽曲に揺れる場内。曲間の境目もなくそのまま「nayuta」へと流れる。

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

 寺中が、初めてのホールツアーに感慨に触れている心境を明かしながら「席がある会場なので、皆にゆっくりと音楽を聴いてもらう良い機会だからレア曲をやっていますが、皆さん付いてきてますか! 知らない曲もあると思うけど、まだ出会ってない僕らの曲に会える良いきっかけだと思う。そうしたらKEYTALKの新たな一面が知れると思う」と語った。

この日輝いたあの頃の楽曲

 寺中は謙遜気味に「じっくりと聞いてほしいとレア曲を並べた」と語ったが、どの曲もイントロが流れれば大歓声。知っても知らなくても一気にその魅力に惹きこむ力を持った楽曲たち。「認知」さえも超越していた。そして寺中はメジャーデビュー前を振り返りこうも述べた。

 「KEYTALKに改名する前は『real』という名前だった。俺が最後に加入して最初に練習した曲を、あの頃に戻って届けられたら」「最初は、ライブハウスには、店長と(対バン相手の)メンバーぐらいしか見てくれる人がいなくて…でもこうして今日、この場に立っている。その頃に書いた曲たちもここで披露することで浮かばれるだろう、喜んでもらえるだろうと思っています」

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

 そう語り披露したのが、インディーズ時代の楽曲「blue moon light」と「a pictuer book」、そして「ブザービーダー」。「浮かばれる」と語ったそれは、彼らの今の音楽の原型を感じさせるものだった。サウンドは変わっても文脈のなかで息継いでいる、変わらぬ彼らの根幹が見えた3曲でもあった。そして、多くの歓声を浴びたその3曲は時を超えて輝いていた。

 夢中になれば時間の経過が早く感じるのは人間の心理だが、この日のライブはまさにそうだった。そして、「僕らの演奏は皆の心に届いていますか?」と呼びかけて「ここからはラストスパート。ライブハウスに変えてやるぞ! 全力を出すから、全力でロック魂を見せるからな!」と煽って披露した「夕映えの街、今」からは一瞬の出来事のように、興奮という余韻だけを残して通り過ぎていった。

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

 しっかりとしたメロディの下で激しく刻むリズム。それを浴び、踊りまくる観客。その一糸乱れぬ動きに更に興奮を高める。とてつもない盛り上がりだった。そして最後は昇天させるように「太陽系リフレイン」で締めた。

まさかのダブルアンコール

 アンコールもにくい演出があった。大声援に押され再びステージに登場したメンバー。彼らの人柄が溢れる緩いトークが始まった。ドラムの八木はそのトークで、ツアータイトルに絡めて「100ヤードは飛んだ」と述べていたが、まさにそれぐらいの飛距離を飛ばすほどのパワーを、彼ら自身、そして楽曲たちは持っていた。

 トーク後に届けられた「MATSURI BAYASHI」ではミュージックビデオで披露されている振付を観客全員が完コピ。まさにお祭り騒ぎといった感じだ。

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

撮影=後藤壮太郎(sotaro goto)

 そしてライブは「桜花爛漫」で結んだ。終演の挨拶も終え、幕が下り、場内も明るく、BGMが流れていた。すべての演目を終えたことを意味していた。幕が完全におり、観客も席を立って帰途に着こうというときに、「まだまだ」とマイクを通った声が響く、ほどなくして演奏が始まる。まさかのダブルアンコールだ。意表を突かれた観客は歓喜。そのなかで届けられる「Summer Venus」。歌の世界観をそのまま体現するような光景、まさに「パラダイス」のようだった。

 こうして終えた初のホールツアー。興奮という余韻に浸る観客は口々に「良かった!」「最高!」という言葉を残して、会場を、渋谷を後にした。

 なおこの日、メジャーデビュー5周年を記念して、デビュー日でもある11月19日、そして20日の2日間、恵比寿LIQUIDROOMでスペシャルライブ『KEYTALK Major Debut 5th Anniversary Special Live ~そこらのギターかき鳴らして歌い出して5年目の真実~』を開催することも発表された。

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