音楽でバズを起こせ!――優勝条件は音楽トレンドを作ることをコンセプトにしたオーディション『Feat.ソニーミュージックオーディション FINAL』が10月9日、Zepp DiverCity TOKYOで開催された。オーディションは世の中の音楽トレンドに新風を吹かせてくれるアーティスト、バンド、グループなどを募集。1000組を超える応募者の中より、ファイナリスト6組が選出。ソニーミュージック独自のアルゴリズムで作られた音楽トレンドランキングで、最終的にトップをとることができれば優勝となる。7月からの烈戦によりKID CROWが脱落し、FINALのステージにはあさぎーにょ、SUKISHA、ドアノブロック、葉山柚子、夜中出社集団の5組が選ばれ、熱いパフォーマンスで沸かせた。グランプリを獲得したあさぎーにょは「新しい音楽の届け方を発明したい」と未来への意欲を見せた。【取材=村上順一】





ドアノブロック~SUKISHA~葉山柚子

DJ 和

 会場に入るとJ-POP DJの第一人者・DJ 和によるJ-POPのヒットミックス、乃木坂46の「インフルエンサー」や、ラストにDA PUMPの「U.S.A.」を選曲し開演前のフロアを温める。会場が暗転しオーディションのファイナルステージがスタート。音楽リアリティ番組『Feat. ソニーミュージックオーディション』で司会を務めた平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)と池田美優(みちょぱ)が登場。さっそく客席に観覧で訪れていた、惜しくもファイナリストから脱落してしまったKID CROWを発見し、弄る場面も。FINALは3カ月間で得た現在のポイントに、このライブ中にリアルタイム投票で獲得したポイントを加算し、最もポイント数を稼いだアーティストが優勝を勝ち取ることが出来るというもの。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)と池田美優(みちょぱ)

 トップバッターは“世界、ドン引き”がコンセプトの愉快犯バンド・ドアノブロック。平均年齢20.2歳でドラム、ベース、ツインギターにボーカルという5人編。予想がつかない楽曲構成とセックスフラペチーノ(Vo)の破天荒なキャラと歌の表現力が魅力的なバンドだ。1曲目に披露したのは「バスタブとミラーボール」。グルーヴィなドラムとベースに、ディレイを効かせたスペーシーなフレーズにソリッドなリズムギターが絡むナンバーでスタート。一気にドアノブロックの世界観に引きずり込んだ。続いてはクリエイター集団れもんらいふ、振り付けにラッキィ池田を起用したオーディション中にMVが制作されたナンバー「プラスチック隕石」。中盤で見せたラウドなセクションではセックスフラペチーノのデスボイスが響き渡り、そこに宇宙人に扮したエキストラが多数登場。ステージを埋め尽くす迫力のある演出で、トップバッターという緊張感のあるステージを、堂々としたパフォーマンスで魅了した。

ドアノブロック

 2組目は現在4位の孤高の宅録ニート・SUKISHA。みちょぱは紹介時に「音楽は好きだけど、人間性は好きじゃない(笑)」とその個性的なスタンスに辛口な意見を浴びせる。ニートというライフスタイルや活動軍資金を使っての「人生で一度してみたかった」というアフロヘアーにも注目が集まる彼だが、そのセンスを感じさせる音楽性はサウンドメイキングやアイデアなど高水準の完成度。1曲目の「4分半のマジック」はアシッドジャズやネオソウルを感じさせるコンテンポラリーなアレンジでアーバンな世界観を表現したかと思うと、2曲目では一転して、大事な人を大切にして欲しいというメッセージが込められた、しっとりとしたバラードナンバー「恋する幽霊」をエモーショナルに歌い上げた。その幅広い音楽性は、少し緩い人間性とのギャップがあり、それがまた期待感を感じさせるファクターとなっていて、今後の活動にもより注目が集まりそうだ。

SUKISHA

 3組目は現在2位、グローバルライブ配信サービス「Uplive」などで43万人のフォロワーを持つ、アジアのカリスマライバー・葉山柚子が登場。このオーディション期間中には47都道府県、そして台湾と全国をヒッチハイクでまわりファンに会いに行く企画を実施。ギターにもチャレンジしながら各地で歌を届けてきた彼女の最終地点はこの東京・Zepp DiverCity。いつもは弾き語りやオケを使ってのライブをおこなっている彼女だが、この日は初の生バンドによる演奏でパフォーマンス。葉山はアコースティックギターを抱え、ギターを覚えてから作られた曲だと話す「誰ですか」を届けた。スクリーンにはそのヒッチハイクの旅の様子が映し出されるなか、透明感のある、心に直接語りかけてくるような等身大ともいえる歌声で、会場を包み込んだ。続いて、感情を揺さぶりかける切なさが溢れる楽曲「マイナーコード」は、ピアノとストリングスをメインとし、そこに絡むシンセサイザーのサウンドが印象的なアレンジ。その上に情感を込めた歌を紡ぐ葉山の姿に、オーディエンスも惹きつけらているようだった。

葉山柚子

夜中出社集団~あさぎーにょ〜Open Reel Ensemble

夜中出社集団

 4組目は神出鬼没の音楽集団・夜中出社集団が登場。楽しいものを自由に表現するスタンスは、様々なスタイルを昇華し常に進化を続けているグループだ。パフォーマンスするメンバーと作曲、プロデュースと分担制にしているのも特徴で、そこから生まれるものはオリジナリティのある世界観を放つ。音楽性としては70’sや80’sを感じさせるソウルミュージックやディスコティックな懐かしい雰囲気のバックサウンドに、現代社会への疑問や不満を爆発せた歌詞という、多くの人、特に働いている人が共感できる歌詞を乗せたキャッチーな仕上がり。まず「万歳!働き方改革!」や「ガン詰め上司モンスター」「痛勤リーマンズ」と3曲を立て続けにメドレーで披露。そして、メンバーのマネージャー兼DJであるおばけに扮したエキストラ8人が登場した新曲「Freedom to Worker」へ。MVも今まではイラストや役者を使うなどしてきた彼らだが、自らが出演することで、今までとは違う新しい印象を与えてくれたナンバー。歌でも4人よる豊かなハーモニーを聴かせ、グループの持つポテンシャルを十二分に発揮。体を動かしたくなるグルーヴでオーディエンスを楽しませた。

あさぎーにょ

 オーディションのラストを飾ったのは、ここまでのランキングで1位のクリエイティブアーティストのあさぎーにょ。オリジナルソングQRコード付きのパジャマを販売し30秒で完売するなど、既成概念にとらわれない自由な発想で世間を賑わせたのも記憶に新しい。そして、今回のステージでも他の出演者とは違うスタイルを見せた。このオーディションの集大成として、今までの素材を散りばめた粋な衣装で登場し、ステージにはソファやドレッサーなど部屋を装ったセットを組み込み、独特な空間を作り上げ、始まったのは犬を主観にした自作の絵本の朗読という意表をついたパフォーマンス。何とも優しい気持ちにさせてくれる表現力豊かな朗読を、オーディエンスも静かに聴き入っていた。今回のあさぎーにょのテーマは“着る音楽”、“食べる音楽”に続いて“読む音楽”だという。朗読を終えた彼女はソファに座り新曲「Sleepy Dog」を歌唱。今までポップなナンバーを提示してきた彼女が、このファイナルのために持ってきたのが意外にもバラードナンバーだった。絵本とリンクした世界観を持つ楽曲をしっとりと丁寧に歌い上げた。

Open Reel Ensemble

 全てのファイナリストのパフォーマンスが終了し、集計結果を待つ間にスペシャルゲストのOpen Reel Ensembleによるステージ。和田永、吉田悠、吉田匡の3人がオープンリール式テープレコーダーを利用し楽器のように奏でるという特異な存在感を放つグループだ。オープンリールをDJのようにスクラッチしたり、竹の竿でテープを釣りをするかのようにデッキのヘッドにこすりつけ弦楽器のようなサウンド、シンセとレコーダーを使用したオープンリールオルガン、極めつけはレコーダーから伸ばし張ったテープをスティックで叩きドラムにしてしまうという奇想天外なアイデアで楽しませた。ライブならではのオーディエンスの声をその場でサンプリングし、楽曲に組み込むというパフォーマンスも相まって会場が一体となったステージングで魅了。最後の「Space Fushigi#2」では司会の平井をステージに招き、レコーダーでスクラッチを要求。不安そうな面持ちの平井だったが、見事なスクラッチを決め、華を添えた。

 遂に集計が完了し、結果発表へ。3位には夜中出社集団が受賞。賞金である50万円を手にし「嬉しいです!」とシンプルに喜びを述べた。続いて、2位には葉山柚子がランクイン。葉山は「1位が良かったけど…」と悔しそうな一面を見せながらも「皆さん応援してくれてありがとうございます」とファンと勝ち取った2位という栄誉に感謝を伝えた。そして、栄えある1位に輝いたのはあさぎーにょ。「すごく嬉しいです!」と今の気持ちを素直に表現し、優勝賞金の300万円の使いみちを尋ねられると「新しい音楽の届け方を発明したい」とこれからの活動への意欲をみせた。

『Feat.ソニーミュージックオーディション FINAL』

 最後にこのオーディションのプロデューサーである梶 望氏から「新しいカルチャーが生まれるのは、既成概念を覆した時だと思います。あさぎーにょさん含め皆さんその予感をさせる十分なパフォーマンス見せてくれたと思います。将来のカルチャーをこれからも応援していきたいと思っています」と総括し、『Feat.ソニーミュージックオーディション FINAL』の幕は閉じた。第2弾の開催も期待されるなか、次世代アーティストたちが鎬(しのぎ)を削った長い夏が終わりを告げた。ここに登場したアーティストたちがこれからどのようなトレンドを創り出していくのか、音楽シーンの未来の一片を垣間見たような気がしたオーディションであった。

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