ロックバンドのLACCO TOWERが9月24日に、東京・昭和女子大学人見記念講堂で全国ツアー『LACCO TOWER new Album「若葉ノ頃」発売記念ホールツアー2018「五人囃子の新時代」』最終公演を開催。同ツアーは8月にリリースしたニューアルバム『若葉ノ頃』のリリースを記念し、8日の群馬・高崎市文化会館公演を皮切りに全国4公演をおこなったもの。バンドのスタイルに新たな要素を取り入れるチャレンジをした前作『遥』に続き、約1年ぶりとなった『若葉ノ頃』は彼らがさらに新たな扉を開き次のステージへと進んだことを示す作品。松川ケイスケ(Vo)が「僕らの曲が皆さんの背中を押して行ければ」と語った様に、彼ら自身の思いを十二分に込めたステージで17曲を演奏。ツアータイトル通り彼らの新時代の幕開けを告げる公演となった。【取材=桂 伸也】

いつもとは違うステージ

LACCO TOWER(撮影=Masanori Fujikawa)

 LACCO TOWERがこれまでおこなっていたライブハウスでのライブでは、Tシャツにパンツスタイル、そして首にはタオルを巻く、といった、筋金入りのライブ好きに見えるような人々が多く見られたが、この日のホールに訪れた観衆はカジュアルな装い。そのことに観衆は、お互いに若干の戸惑いも持っていたかもしれない。普段のライブ会場では観衆が皆、和気あいあいとした雰囲気だったのに比べると、スタート前の会場は、少し静かな感じもしたからだ。しかしその一方で、胸に“LACCO TOWER”と文字が刻まれたTシャツを着た人とも多くすれ違う。若干の戸惑いの中にも、思いはバンドとともに。観衆の表情にはそんな意気込みも感じられた。

 そしてステージはいつものように、定刻どおりにスタートした。会場にはSEサウンドが流れ始め、やがて会場がスッと暗くなると、何の前触れもなく観衆は皆スクっと立ち上がった。叙情的なSEを背景に、ステージ後方のスクリーンには流れる雲の像が映し出される。さらに青、紫、そして虹色と、薄暗いステージが光によって幻想的に彩られる。次の瞬間、SEは分厚いビートが取り巻くロックなサウンドに様変わり。さらにサウンドが止まったかと思うと、ステージがパッと強い光が照らされる。そこには5人の姿が。最新のアーティスト写真そのままの堂々とした姿でポーズを決める5人がたたずむ。そんな彼らに観衆は盛大な拍手を送り、待ちわびた瞬間の到来を熱く迎えた。

 そして、ステージは松川ケイスケ(Vo)の歌と同時に始まる「若葉」でスタートした。頭に歌われたサビが鳴り響くと同時に、観衆の腕がサッと上に伸びる。松川は会場の隅々にまで自身の思いを伝えんとばかりに両手をいっぱいに広げ、大きな手振り身振りでパフォーマンスを展開していった。

新たに確立したスタイル

LACCO TOWER(撮影=Masanori Fujikawa)

 「腕を上げてみようか? 下げてみようか? (そう、)今日はその動作と笑顔だけで結構!」ステージのスタート後に、松川はそんなことを観衆に語り掛けていたが、もう言葉など不要とばかりに観衆は、腕を振り上げ、そして下ろして彼らのサウンドに深く酔いしれる。その姿は後ろから見ただけでも、嬉しそうに震えているようでもあり、笑顔であることは間違いない、と思わせるものでもあった。

 「未来前夜」から「傷年傷女」まで、強烈なビートが会場を包み、猛烈な熱気を放出していく。激しいパフォーマンスを繰り出しながらも、文字通りバンドを支える塩崎啓示(Ba)。その大きなバックアップがあったからこそ、細川大介(Gt)、真一ジェット(Key)、重田雅俊(Dr)が怒涛のようなサウンドを繰り出すことに集中できていた。

 一方で「切手」からはゆったりとした、どちらかと言うとキャッチーで暖かい雰囲気に。演奏テクニックとしてはエキスパートが集うLACCO TOWERだけに、ハードなロックを身上とする面もありながら、前作のアルバム『遥』から自分たちの新たな面を見出し、今作『若葉ノ頃』ではそのスタイルを自然に醸し出すことを確立したという彼ら。その成果がここでは、より味わい深いサウンドとして実現されたようにも見える。

 特に真一ジェットの華麗かつ叙情的なピアノで始まる「薄荷飴」は、そのメロディを辿ると、音源で聴けるもの以上のイマジネーションを彼自身が働かせて作ったものという印象すら感じられ、ライブをより深みのあるものとしていく。さらに、松川のアカペラによる独唱から始まる「遥」へ。思いが溢れるそのサウンドに、観衆はただそこに立ち尽くし、自分の中に染み込んでいくサウンドに身を任せるほかない、といった様相を呈していた。

 改めて松川は、ここまでの道のりを回想する。そして前任ギタリストがバンドを去り、細川が新たなメンバーとして加入した時の思いを「この5人で、最後まで行こうと決めました」と振り返る。さらにこの日、最初に「若葉」を歌ったときの思いを「バンドの曲は、俺らだけのものじゃないと思いました」と、この日この場所に集まった観衆と分かち合った思いを語る。そして、今の思いをこう語った、「紛れもなく僕らの背中を押してくれたのは、あなたたちだと思う。だから今後は僕らの曲が、皆さんの背中を押して行ければいいな」。

5人の「新時代」は始まったばかり

LACCO TOWER(撮影=Masanori Fujikawa)

 ステージもいよいよクライマックス。これまでの様々な苦しい日々が文字通り消えていくような「雨後晴」から、ひと時重田のドラムソロによるワンマンステージで観衆の気持ちがワンランク上がると、「狂喜乱舞」「怪人一面相」そして「火花」と、ハードでアクティブなサウンドとステージングで猛烈な熱気を再び呼び起こす。LACCO TOWERのファンなら「これ!」と言わずにはいられなくなるほどにアピールしてくるそのパフォーマンスに、会場はこの日一番の盛り上がりを見せた。

 そして、松川は観衆に向けた再度の礼とともに、思いを込めた曲のコールを告げ、ラストナンバー「愛情」を披露。最後はしめやかにライブ本編を締めくくった。そしてアンコール。「花束」「薄紅」とLACCO TOWERとしては外せない大切なナンバーで、この日のライブに盛大に幕を下ろした。

 このアンコールのプレーの前に、松川以外のメンバーもまた今の思いを明かした。ホールツアー敢行の喜びを見せながらも、挑戦する姿勢、思いは、今も、そしてこれからも変わらないと語る塩崎。着実な前進とともに、またいい景色を見たいと語る重田。これまでの道のりの厳しさを振り返りつつも、周りに支えられここまで大きく成長できたことを実感、感謝の思いを告げる細川。そして真一ジェットは、いつものように少しおちゃらけながらも、このホールツアーで経験した4本のライブで、自分たちがなおも成長したことを改めて振り返り、LACCO TOWER自体がタイトルどおりの「新時代」を迎えたと感慨深く語る。

 ライブに向けた意気込みには、彼ら自身にとってはきっと変わったものはないに違いない。しかし、この日披露されたステージで、大きく見えたのは、決して会場の大きさだけではない、なにかこれまでと意図的に変えたものでもないはずだ。このライブは、彼らにとってまさに「新時代」の幕開けといえるものになった。まだ彼らはその入り口に立ったばかりだが、ここからの爆走は、きっと見ものだ。そんなことを感じさせる、この日のライブだった。

(※塩崎啓示の“崎”の字は、正しくは山へんに立、可の異体字)

記事タグ