<映画試写評>
 俳優の窪田正孝と女優の広瀬アリスが声優を務めたアニメ映画『モンスターストライク THE MOVIE ソラノカナタ』(配給・ワーナー・ブラザース映画)が5日公開された。人気ゲームアプリ『モンスターストライク』をもとにした完全オリジナルストーリーともあって、激しいバトルシーンが見どころの一つともいえるが、友情や共闘、成長といった普遍的なテーマを軸に構築したともあって、メッセージ性が強い作品になったように感じる。

ソラとカナタ(C)XFLAG

ソラとカナタ(C)XFLAG

 映画は、2つに分断された東京を舞台に、モンスターと人間の共生を探るカナタ、ソラらが奮闘する姿を描いた物語。13年前に東京から切り離された空中都市・旧東京と、地上に残った新東京。旧東京は通信などが遮断され、モンスターが隔離されている状態。その旧東京では、人間の裏切りに愛想を尽かしたセンジュ率いる解放戦線が旧東京を地上に落とそうと画策する。それを阻止するために奮闘するのがソラたちだ。そのソラはこの危機を乗り越えるため、新東京にいるカナタを探しに舞い降りてくる。

 カナタの声を演じた俳優の窪田正孝、ソラは女優の広瀬アリス。窪田は声優そのものが初、広瀬は実写版の吹き替えはあるもののアニメ声優は初で、ともに初挑戦の作品だ。

カナタ(C)XFLAG

 映画では度々「けがれ」というワードが出てくる。モンスターは「けがれ」に触れると、自由が奪われ石化する。その「けがれ」が一つの軸となり物語が進行していく。もともとは味方同士だったモンスターたちだが、人間の身勝手な考えに翻弄され、それに愛想が尽き見限ったのがセンジュたち。かたや人間との共生を探るソラたち。モンスター同士が戦うのは皮肉な話だ。

センジュ(C)XFLAG

 どらも正しい――、物語の終盤で強烈に響くセリフだが、どちらも正しいと思って行動をとっている。しかし、立場が変わればそれは間違いであり、敵とみなすこともある。この構造は現代にも通じるものだ。そのなかで大切なものは何なのか。自分とは何んなのかを問いかけている。

 東京を舞台に物語が進んでいくともあって、背景には馴染みの街並みが出てくる。小説でもそうだが、実在するものが劇中に登場すると一気にリアリティが生まれる。また、3DCGによる迫力のアニメーションは目を見張る。

新東京の上に浮かぶ旧東京(C)XFLAG

 そして、歌声が物語の一つの鍵を握る。劇中歌は、マナ、そしてソラそれぞれが歌っている。ラジオから流れてくるものを含めれば、3人。マナの歌声から物語が始まり、ソラの歌声が新たな展開のきっかけを作る。

 過去におこなった別のインタビューで、あるミュージシャンは「音楽はその時の記憶とともにある」と言ったことがあった。当時の匂いまでも思い出してくれるという。そのフックとなるのがメロディだったり、歌声だったりもする。

ソラ(C)XFLAG

 マナとソラ、そしてラジオの中の歌声にはそれぞれ特色がある。歌声一つとっても曲の伝わり方がだいぶ変わってくる。優しさに包まれたマナの歌声、一方、心、体に染みついた歌を囁くように歌うソラ。数秒の歌声だが物語の雰囲気を支配する存在感を放っていた。もちろんソラの歌声の主は広瀬アリス。快活な女性というイメージが強いが、彼女の素直で優しい心の内面が、その歌声から現れている。

 視覚のインパクトが強い作品でもあるが、その視覚だけでなく、その裏にあるメッセージ性や音楽にも着目するとより深みが増すだろう。【木村陽仁】

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