乃木坂46若月佑美が、11月1日から静岡県で開催される『大道芸ワールドカップin静岡』のオフィシャルTシャツをデザインした。乃木坂46ではオフィシャルグッズのデザインを手掛け、「二科展」デザイン部門では7連続入選を果たすなど芸術の分野でも才能を発揮している。過去に「デザイン画を活かしたお仕事も出来たらいい」と語っていた彼女だが、今回が初めてのグループ以外のデザインの仕事。しかも、地元静岡のビッグイベントともあって喜びもひとしおだ。若月はどのような思いで手掛けたのか。【取材=木村陽仁/撮影=片山 拓】

垣間見えた真摯な姿勢

 乃木坂46でのアイドル活動だけでなく、芝居やアートなど多彩な才能を見せる若月。舞台や映画などにも引っ張りだこで、10月14日スタートの日本テレビ系10月期新日曜ドラマ『今日から俺は!!』(毎週土曜よる10時30分~)にも出演が決まっている。

 アートワークでは、「二科展」デザイン部門では7連続入選を果たし、2014年には2作品がA部門とC部門と、当時芸能人では初の同時入選の快挙も成し遂げた。また、地元テレビ局・静岡朝日テレビの情報番組『ふじ△』(読み=ふじさんかっけー)では番組ロゴも手掛けている。

 そんな若月が今回手掛けたのは、『大道芸ワールドカップin静岡 2018』のオフィシャルTシャツのデザイン。1992年スタート以来、毎年11月初旬に静岡市内で開催されている、アジアで最も注目を集める、大道芸人のパフォーミングアーツフェスティバルだ。

 静岡県富士市出身で子供の頃に同フェスを観に行ったことがある若月は、Tシャツのコンセプトについて「大好きな富士山と頂上=ワールドカップの頂点をかけました。印象的でポップでかわいいものをと、ゴシックロリータの女性にして、あえて顔は無しにしました」と語っている。

見られることで生まれる作品の価値

――過去の取材で、言葉にできない感情を絵にしていると語っていましたが、今回はどのような思いでデザインされたのでしょうか。

 お話を頂いたときにすぐにイメージが湧きました。第一には、かわいい感じにしたいというのがあって。アイドルという職業をやっているなかでお受けしたお仕事でしたので、アイドル要素をちょっと入れたいなと。私は普段、抽象画を描くのですが、今回は何のTシャツかはっきりさせるために、具体性のあるデザインにしました。『大道芸ワールドカップ』は市内で開催されているイベントで地元では有名。市内から車で1時間離れた場所に住んでいた私も昔からずっと知っていましたから嬉しいです。

 大道芸は、単純に見ていて楽しいですよね。声に出して感動を表現できるのが大道芸で、対してアートは観る人によって意見が分かれるといいますか。例えば、美術館に行って絵画やアートを見た時に「これはすごい」と感じる人もいれば「何がすごいんだろう?」と感じる人もいる。感性は様々ですから。そこに奥深さや美術や芸術があると思います。大道芸は一目見ただけでそのすごさが分かる。華やかでストレートに素敵なものだと思います。

若月佑美

若月佑美

――感性によって分かれるアートですが、若月さんは描くときに何を意識されていますか? よく音楽では芸術性と商業性が議論されますが。

 お仕事によって分けることもあります。例えば「二科展」のように、自分発信の作品でしたら、描きたいように好きなように描きます。それでも自己満足になってはいけないということを自分に言い聞かせています。特に私は抽象画を描いていますから伝わらないということもあり得ます。誰かに見てもらって作品が生きるということもあると思いますので、それを心の隅に置いています。お仕事によってテーマと自分らしさというのを3:7ぐらい。3は自分らしさ、7は大衆性。絵も作品もそうですが、見てもらわないと始まらないと思うので、その引っ掛かりとして大衆向けの部分はどうしても考えなければならないと思います。

――そういう考えは昔からありましたか? それとも活動していく中で?

 活動していくなかです。私は、舞台のお仕事もさせて頂くことがあります。そういうときに、どこかしら「アイドルだから…」と申し訳なさを感じることがありました。でも、ある演出家の方にこう言われたんです。「私(演出家)がどれだけ良い作品を作っても、誰にも見てもらえなかったらその作品に価値はつかないし、あなた(若月)がそこに立ってくれることで作品を見に来てくれる層が、これまでとは違う人たちが見に来てくれる、そこで知ってもらえる、そのことだけでも本当にありがたいことだから、自信を持ってくれ」と。それを聞いたときに安心しました。それと、その考えは絵も一緒だなと思って。誰かに見てもらってこそ価値が初めてつくものだなと。本当は黒でいきたいけど、ピンクの方が目を引いてもらえると思えば、自分の意志に反してでもちょっと変るというのもしていくべきだなと思いました。

若月佑美

若月佑美

――そういう流れのなかでの今回のTシャツデザインは、いろんな人に見てもらいたい、着てもらいたいという点ではそういう意識が働いているといえそうですね。

 本当はもっとわかりにくいTシャツでも良いのかなとは思いました。でも、私も小さい頃に見に行っていたので、小さい子供もたくさん来場されるだろうと。そう考えた時に、「これなに?」と思われるよりかは「あれ、みたやつだ!」と、キャラクターまでとはいかないですけど、わかりやすいモチーフの方がきっと小さい子供にも喜んでもらえるだろうと思いました。そうした点でも具体的なデザインにしました。

自分だから表現できるデザインを

――2014年に「二科展」に二部門で同時入選されたときに、「このデザイン画を生かしたお仕事も出来たらいいと思っているので、その目標に向かって頑張っていきたい」と語っていました。それが今回、叶ったということになりますが、デザインやアートの分野では今後、どのような仕事をされていきたいですか?

 その最初の仕事が、地元・静岡の、しかも『大道芸ワールドカップ』という大きなイベントのデザインをさせて頂けたことがすごく嬉しいです。本当に良いスタートを切れたなと思います。デザインを描くという仕事には、その道のプロの方がいらっしゃるので、そういう方の作品はやっぱり素晴らしいと思っています。そのなかで、アイドルという別な職業を持っている私が、デザインすることに意味を見出せればと思っています。アプローチの仕方もストレートにいくときっとプロの方が勝ると思うし、技術面でも毎日書かれている方に及ばないところもあると思いますので、そういうところではなく、自分の経験のなかで生まれるデザインを活かしていきたいと思います。

若月佑美

若月佑美

――「アイドルだから…」という言葉を使われていましたが、アイドルがゆえのプレッシャーは大きいのですか?

 大きいです。やっぱり良くも悪くもアイドルはマルチで、お芝居やバラエティ、芸人さんと同じように体を張ったり、声優のようなこともしますし。ラジオやドラマ、映画、いろんなことをやらせて頂くのは嬉しいんですけど、やっぱりどこか、ホーム(乃木坂46)があることへの甘えが、出しているつもりはないんですけど、そう思われてしまっても仕方ないかなと思うところもありますので、そうではないことをちゃんといろんなお仕事でお伝えさせていけたらいいなと思っています。世間ではそう思われるだろうなという壁を壊したい。

――普通ではできない貴重な経験をされているわけですから、それは宝だと思います。

 でも、悔しいと思ってしまうところも多々あります。先ほども話しましたが、芸人さん一緒にリアクションをとるときにやっぱり違うなと思うし、その道1本でやっている方の見せ方は違うなと悔しい思いがあります。そこは課題ではあります。

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