米シンガーソングライターのキャンディス・スプリングスが9月7日、ニューアルバム『Indigo』を発売した。前作から約2年ぶりとなる2ndアルバム。10代の頃から音楽を志し、生前の米シンガーソングライター・プリンスに絶賛された才能あふれる期待の29歳だ。今回は世界中を旅しながら、活動するキャンディスにインタビュー。今作に込められた想いや、先人へのリスペクト、クラシック音楽からの影響、プリンスとの思い出など饒舌に語ってくれた。【取材=小池直也/撮影=大西 基】

「インディゴ」は私の大事な言葉

キャンディス・スプリングス(大西 基)

――本日は何度目の日本滞在ですか。

 今回で4回目の来日となります。みなさんにとても良くして頂いて、とても楽しんでいますよ。日本のオーディエンスは、リスペクトを持ってライブを観てくれるんです。パフォーマンスも楽しいですし、これからの演奏も12月にある(日本での)演奏も楽しみですね。

――日本のオーディエンスの反応はいかがでしょう?

 それぞれの文化圏によって反応が変わります。私の地元の人は「いい!」とて思うと「WOW!」とか騒いでくれますし。日本人は静かな瞬間を持って、音楽を楽しんでくれている様に思います。

――新作『Indigo』は、ナチュラルだった前作『Soul Eyes』と比べてサウンドが変わりましたね。

 今作は現代的になっています。自分の違った面を見せたいなと思ったんですよ。他のジャンルにもチャレンジしてみようかなと。テーマは「シャーデー(英バンド)やニーナ・シモン(米ジャズ歌手)が2018年に生きていたら、どんなことをしたか?」ということでした。タイトルの『インディゴ』には色々な理由があります。まずは藍色(=インディゴ)はとてもきれい。そして、美しい花の名称でもありますし、非常に雰囲気がある。あとは感情に訴えてくる色でもありますね。

 あと、ナッシュビルのクラブにホテル・インディゴというお店があるんです。そこは私は初めてステージに立った場所なんです。パフォーマンスするつもりはなかったのですが、友達に誘われて演奏したら、場が静まった。常にうるさい店内が静まり返って、みんな「良かったから、また演奏しにきて欲しい」と言ってくれたんですね。ここでの演奏が私のキャリアのターニングポイントでした。これをきっかけに音楽を職業にしていこうと思えたから。だから「インディゴ」は私の大事な言葉なんです。

――短い表題曲のドラムの質感とピアノのメロディが素晴らしかったです。

 サウンドはとても才能あふれるカリーム・リギンスによるものです。ピアノのメロディはラフマニノフの「前奏曲嬰ハ短調」から引用して、新しいものにしました。ニーナ・シモンが割とそういうアプローチをよくやっていたんですよ。クラシックの曲を下敷きにして、ジャズのスタンダードを歌っていた人なので。「パッヘルベルのカノン」をアレンジして歌っていたと思います。アリシア・キーズも同じ手法で曲を作っていましたね。

 2つの「Indigo Part 1」「Indigo Part 2」の曲が短いのは、単純に収録できる曲が限られているからです。インタールード(間奏曲)とすれば、雰囲気を切り替えて違うところへ連れていってくれるじゃないですか。ローリン・ヒルやエリカ・バドゥもそういうことをやっていました。フルバージョンもあるので、そのうちリリースしようと思っています。

――クラシック音楽は普段から聴かれているんですか?

 ベートーヴェンもいいですが、ショパンが1番好きですね。クラシック音楽もジャズと同じで普遍的な音楽だと思うんです。若い世代にこういうものを紹介していくといたニーナ・シモンたちのやり方を私も受け継ぎたいなと。こういう気持ちになったのは、父のスキャット・スプリングスからの影響なんです。父自身もシンガーなので、彼からニーナ・シモンやシャーデー、ノラ・ジョーンズ、ダイアナ・クラーク、ロバータ・フラッグ、カーメン・マクレイ、エラ・フィッツジェラルドなど偉大なアーティストを教えてもらいました。

――『インディゴ』で1番気に入っている曲は?

 難しい質問ですね…。「The First Time Ever I Saw Your Face」でしょうか。「6 8」という曲も好きなんですけど、「The First Time Ever I Saw Your Face」は本当に普遍的な良い曲だなと思うんです。割とアップテンポだったら「Fix Me」もいいですし。1つに絞れないですよ。

――「6 8」に参加したフルート奏者のエレーナ・ピンダーヒューズは、日本でも注目を集めています。どの様に知り合ったんでしょうか。

 彼女は素晴らしいですよね。彼女はハービー・ハンコックとよく仕事をしているんですよ。私のプロデューサーでもありマネージャーでもある、エヴァン・ロジャースとカール・スターケンがエレーナのアルバムを制作しているそうなんです。その2人を通じて知り合ったんです。アメリカには色々な場所から夢を叶えようと人が集まってくる。だから素晴らしいプレイヤーが多いんじゃないかと思います。映画スターやシンガーなどを目指して、みんなやって来ますから。

 ただ私の地元はチキンの食べ過ぎなのか、みんな太っちゃったり(笑)。ミュージシャンの交流はナッシュビルだけでなく、ロサンゼルスにもニューヨークにもあります。同じ地元のミュージシャンと一緒に曲を作ったりもしますね。年齢的は違っても仲良しです。ツアーに行くと空港で知り合いの音楽家とすれ違って、お互いに声を掛け合ったり。日本人の方ともそういう関係ができたらいいなとも思っています。

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