今年5月12日にマイナビBLITZ赤坂でおこなわれた、板野友美のライブハウスツアー『板野友美 LIVE TOUR 2018 ~Just as I am~』最終公演の模様がパッケージ化され、このほど発売された。120分にもおよんだ本編映像とともに、当日のバックステージの模様やインタビューなどのドキュメンタリー映像も収録されている。記者は先立って映像作品をみる機会を得た。最終公演の模様はレポートとして既報の通りだが、改めて見ると現場では気づけなかった板野の表情や思いなどが見られた。バンドツアーにも「自分らしさ」が現れていたようにも感じる。【木村陽仁】

ライブでも表現した「Just as I am」

 「私の中ではやり切れたと思える公演になったので、良かったと思います」

 そう語る彼女の表情は凛々しかった。ライブ前に感じていた緊張と不安はいま、自信に変わっている。それが表情にも表れている。

 冒頭の言葉は、『板野友美 LIVE TOUR 2018 ~Just as I am~』DVD&Blue-rayの特典映像に収録されているドキュメンタリーの最後で語ったものだ。

 ソロデビュー当時からの夢だったバンドを従えてのライブ。昨年夏のファンクラブイベントで、数曲だったがアコースティックライブに臨んだ。そのとき板野は「音楽も生きているなと感じます」と生演奏によるライブへの憧れを明かすとともに「今後はバンドを伴ったライブもやりたいですし、最終的には一つのライブでダンスナンバーも、バンドもやれたら良いですね」と語っていた。そのうちの一つがこの春、実現した。

 ただ、バンドライブをおこなうのではなく、これまでの集大成と未来につながる布石を置いた。それが、「Just as I am」。

 今年2月に発売されたシングル「Just as I am」はソロとしては10枚目のシングル。今後の方向性を占う節目の作品と言える。そこで打ち出したのは、ソロデビュー7年間を振り返りながら今の自分と向き合い、それを写真集と楽曲を連動させて制作するもの。その起点となったのは、自身への手紙。そのなかで「自分らしさとは何か」を考え、その答えをそれぞれの作品で表現させた。そうして生まれた「Just as I am」。それをさらにライブ、しかもバンド編成によるライブでも表した。

曲の良さを感じ欲しい

 全国4カ所のライブハウスをまわり、5月12日、マイナビBLITZ赤坂でファイナルを迎えた。デビューシングルからこれまでの楽曲をセットリストに載せた。ライブのMCで板野はこう語っていた。

 「懐かしい曲から最新の曲までもりだくさん。楽曲への思い入れや思い出があると思うので今回はアレンジせずに、CD音源に忠実に作っていただきました。その時の思い出や私自身もこのときこういう気持ちだったなと、そういうことを振り返りながら聞いてほしい。今回は楽曲の良さを伝えるのでダンスは封印しました。ぜひとも板野友美の楽曲で自分のお気に入りソングを決めてほしい」

 そうして組まれたセットリストのなかには、「歌うのが難しい…」とこれまでライブでは歌ってこなかった「Deep In Lies」などもあった。

 アレンジせずに忠実に再現させたが、ファンキーさやハードロックさ、EDMさを場面によって自由に作り出すバックバンドのグルーヴ感によって楽曲は別な表情を見せていた。どちらかと言えば、これまではダンスパフォーマンスを軸にした「見せる音楽」だったが、このライブでは「聴かせる音楽」「躍らせる音楽」へと変わっていたように感じる。“生身の音”によって楽曲の良さが際立った。また、彼女の低音の伸びには“ハッ”とさせられた。大人の色気を兼ね備えた低音は楽曲のアクセントにもなっていた。ライブを終えた後、あのグルーヴ感、あの熱気、そして板野の歌声を求めていたのは何も記者だけではないだろう。

 「曲の良さを感じて欲しい」。そのねらいは見事にはまった感じだ。そして彼女は冒頭のMCで「やりたかった生バンド、みんなでグルーヴ感を体感してほしい」と語っていた。何よりも彼女自身がこのバンドサウンドに心を打たれていたはずだ。後半になればなるにつれて、自然体で心地よく歌う彼女が印象的だった。

 先の言葉にもあったように今回はダンスを封印した。しかし、中盤ではアグレッシブに体を動かしている板野がいた。あのグルーヴ感やオーディエンスの熱気がそうさせたのだろう。ドキュメンタリー映像のインタビューではこう語っている。

 「お客さんの盛り上がりも自分のパフォーマンス次第。ダンスをしていると決められた振りがあるから、私は私で『それをファンの方に見てください』という感じなんですけど、今回はファンの方がこれくらい盛り上がったら私も盛り上がって、相乗効果みたいなものがあった」

 それは何もオーディエンスとだけではない。バンドメンバーもそうだった。とてもたったライブが5回という感じがしないほど、長い歴をもったバンドのように息が合っていた。バックバンドがしっかりとしていればボーカルのパフォーマンスは最大限に引き出される。板野のこれまでにない魅力も見られた。

ドキュメンタリー映像に現れた板野の素顔

 「自分らしさ」――。ドキュメンタリー映像では彼女のありのままの姿を映し出している。板野は以前、公の場に出ると「表情を作ってしまう」と語っていたが、この映像には、普段は隠れている不安や緊張に揺れる彼女の姿があった。

 「これまではオケだったから、ボリューム感やリズムはどの音で取ったら いいか…一番難しかった」

 会場が変われば音の環境も変わってくる。リハーサルで入念にチェックする板野はこんな言葉をもらしていた。

 「ピッチ大丈夫だったかな」
 「この場面、音が取りづらい」
 「会場が違うから外音も違う。音も“わんわん”と(広がる)。レベルを合わせるのが…調整できたら楽に歌えるけど、それまでは…」

 そして、本番まで直前に迫った控室。

 「この待ち時間が嫌だな…」

 笑顔で取り繕うとするが、出てくる言葉は隠せない。

 そのインタビューではこうも語っている。

 「本番前は緊張していました。緊張しない公演よりも緊張した公演のほうが良いと言われて、それだけ真剣に向き合っていることだと思うから…」

 緊張の数だけ人は大きくなれる。

 そして、こんな趣旨のことも語っている。

 「自分で自分らしさを考えていくとウソになる。ストレスなく自然にいるのが自分らしさだと思う」

 バックステージ前の姿はまさに「自分らしさ」の一つなのかもしれない。

 彼女はツアーを振り返り「初日はファンの方もどんな感じになるだろうと想像もつかなかったと思うけど、途中から乗ってきてくれて、終わった時にファンの方とお話しする機会があって『バンドライブめちゃくちゃいい』と言われて嬉しかった。バンドをやって良かったな」と手ごたえを口にしていた。

 大きな挑戦だったという今回のライブで大きな収穫を得た。

 「今までダンスパフォーマンスと歌を一緒にやってきましたが、節目で音楽と向き合いたいと思って、ダンスは封印しました。楽曲の良さを伝えるためにバンドかなと思って。自分にとっても挑戦でした。これからの成長になったらいいなと思ってやったツアー。良いライブになったと思う」

 30分にもおよぶドキュメンタリーには彼女の等身大の姿が映し出されている。アーティストとして、女優として、板野友美として。本編映像でライブのあの感動を楽しみつつ、ドキュメンタリーで改めて彼女の本音、そして、未来へと考えを巡らせても良いと思う。バックバンド、バックダンサーを従えてのライブ。その日が来る日を楽しみにして。

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