詩吟や和楽器とロックを融合した和楽器バンドが去る7月16日、東京・国際フォーラム ホールAで『和楽器バンド TOUR 2018 音ノ回廊 -oto no kairou-』の東京公演をおこなった。4月25日にリリースされたオリジナルアルバム『オトノエ』を引っさげて、4月28日の埼玉・川口総合文化センター リリアを皮切りに9月2日の大阪・グランキューブ大阪 メインホールまで全国25カ所26公演をおこなうというもの。『オトノエ』の楽曲を中心に日替わり曲として「儚くも美しいのは」やボカロメドレーなど和楽器バンドの魅力を凝縮したセットリストで魅了した。21公演目となった東京公演の模様を以下にレポートする【取材=村上順一】

日替わり曲は「儚くも美しいのは」

ライブのもよう

 異世界へ迷い込んだかのような妖しげなBGMがホールに流れるなか、これから始まるステージへの期待感が会場全体から感じられる。そのステージには赤い緞帳によって中は全く確認出来ない。まもなくな開演を告げる鐘の音が鈍く響くと緊張感が走る。

 その幕が上がり照明が会場を照らすなか、スクリーンにメンバーが映し出される。中央のスクリーンには8人のシルエット。そのスクリーンが上がりいよいよメンバーが登場。大歓声のなか、「細雪」でライブはスタートした。憂いのある鈴華ゆう子(Vo)の歌声で美しいメロディラインをより鮮やかにしていく。続いての「紅蓮」ではそのハードなサウンドに観客もヒートアップ。さらにブラックミュージックの要素も感じさせる「沈まぬ太陽」と感情を爆発させるかのようなステージを展開。早くもクライマックスのような盛り上がりをみせていた。

 幅広い年齢層の観客が集う和楽器バンド。男性、女性、子供たちと分けた声出しで一体感を高め、鈴華による「この幅広い年齢層で盛り上がっていきましょう!」と「World domination」へ突入。町屋(Gt)と神永大輔(尺八)、亜沙(Ba)も軽快なステップを踏みながらの演奏で視覚的にも楽しませる。そして、アーバンな世界観を持つ「シンクロニシティ」でバンドの新たな一面を見せる。鈴華と町屋の歌のハーモニーも見どころのひとつだった。

 ここでスクリーンに楽曲名が書かれたルーレットが映し出され、日替わり曲を披露する。ルーレットで選ばれた曲は「儚くも美しいのは」。蜷川べに(津軽三味線)による雅な三味線、黒流(和太鼓)のダイナミックな和太鼓がミディアムバラードにスパイスを加え、他のバンドとは一味違った趣を打ち出した。そして、「五芒星」「焔」と和楽器と洋楽器編成と分けた、和楽器バンドならではのインスト。各々のポテンシャルを活かした演奏は加速度を増しライブならではの臨場感を味わえる。「五芒星」で鈴華は剣舞を披露、「焔」では町屋がお面を着用しながらもギターを華麗に弾く姿が印象的だった。

 楽器の魅力を存分に打ち出し、続いては「砂漠の子守唄」を披露。叙情的な世界観を持つこの曲は鈴華の艶やかな歌声がより強く出ていた。そして、和楽器バンドとしては珍しい小編成での演奏となった「独歩」。鈴華、町屋、いぶくろ聖志(箏)、神永の4人編成。いぶくろの凛とした箏と、神永の透明感もあり力強い尺八の音色が美しい調和を見せていた。

みんなの笑顔を見て前へ進めたなという感覚

ライブのもよう

 「独歩」の演奏が終わると山葵(Dr)と黒流が客席後方から登場するというサプライズ。飴をばら撒きながらステージへ移動。リズム隊2人によるリズム遊びで観客と楽しんだ。ここで、会場を2つのチームに分けて勝負することに。ツアーを通しておこなってきたどちらの観客の声が大きいかを競うというバトル。この日までの戦績は11対9と黒流が優勢。負けたらスカイダイビングという罰ゲームも発表され、黒流は高いところが苦手なため負けられないと闘志を燃やす。一方、山葵はスカイダイビングをむしろやりたそうな雰囲気。結果、今回は山葵チームの勝利し、凹む黒流を余所目に6人が合流。

 ここからはボカロメドレーと題して畳み掛ける。まずは「セツナトリップ」からスタートし、「吉原ラメント」では鈴華が、蛇の目傘を使用したパフォーマンスで楽曲を盛り立て、「千本桜」まで全6曲を和楽器バンドのアグレッシブさを凝縮させた。

 MCでは鈴華が「千本桜」でヘドバンをやらなかったことに物議を醸したかと思うと、いぶくろがライブでほとんど汗をかかない件についてなどメンバーの素顔に迫る話題で盛り上がった。和やかなMCに続いてライブもラストスパートに突入。ポップなナンバー「花になれ!」で体を揺らさずにはいられないご機嫌なグルーヴと民謡「アルプス一万尺」を取り入れた合唱パートで一体感さらに高め、本編ラストは「天上ノ彼方」。スピーディーなロックバンドの持ち味と、そこに絡み合う和楽器のコントラストが絶妙なナンバーを浴びせ、本編を終了した。

 「暁ノ糸」を合唱しアンコールを求める観客。その歌に応え、再びステージにメンバーが登場。亜沙の“亜沙カメくん”と呼ばれるパペットを使用したMCで和ませ、鈴華は「ツアーというのは(バンドを)成長させてくれる。みんなの笑顔を見て前へ進めたなという感覚があります。下半期に向けてまだまだ走り抜けていかなければいけないのですが、まだ届いていない方のところにも届けられるように、今ここにいる皆さんとともに歩んでいけたらなと思っています」と述べ、壮大なスケール感の「オキノタユウ」を届けた。渡り鳥のように、まだみぬ新天地へ向かい羽ばたくような演奏で感情を揺さぶり、ラストは「雪影ぼうし」。キャッチーなメロディを聴きながら、躍動するリズムに合わせタオル回しで盛り上がり、金のテープが盛大にステージから放たれる中、東京公演の幕は閉じた。

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