8月26日に東京・新木場STUDIO COASTで開催された、10代限定の夏フェス『未確認フェスティバル2018』を、昨年に引き続き取材する機会を得た。今回の展開の中で印象的だった様々なシーンを振り返ってみたい。【取材・撮影=桂 伸也】

リツキという少年、1年後の姿を見て改めて感じた思い

 実は正直な気持ちを述べると、個人的には、昨年グランプリを獲得したギター弾き語りの少年、リツキのゲスト登場が気になっていた。昨年のあのステージから1年、あの雰囲気をまた味わいたいという思いと共に、敢えて何か変わった部分もあるのかを見てみたいと思っていたのだ。

リツキ

 昨年の印象は、本当に衝撃的だった。パフォーマンスやサウンドに派手さや巧妙さがあるわけではない。なのにギターを掻き鳴らしながら歌う姿、メジャーキーのメロディの中に交錯する様々な感情。昨年そのステージを見た人たちの中には、まだ途中のステージながら「今年はこいつがグランプリじゃねえか…」と思った人もいたことだろう。審査員も、応募音源のサウンドの酷さと、そのステージの衝動とのギャップに、さらにビックリしたと語っており、演奏パフォーマンスとしては皆“本当に10代か?”と思えるほどに卓越していたファイナリストの中で、一人異彩を放っていた。

 一方で、この日リツキを迎えた、TOKYO FM『SCHOOL OF LOCK!』のパーソナリティーであるとーやま校長は、昨年のそんな印象を振り返りつつ、彼に対して「グランプリをとった後には、どこかに消えてしまうんじゃないか」と思っていたことを漏らした。それは私の受けた印象と全く同じで、昨年彼が聴かせたサウンドが余りにもピュアであり、それだけに時と共に彼が受ける様々な影響に、その輝きはパッと砕けてしまうのではないか、そんな儚さのようなものが感じられたことだった。今年聴く彼の歌は、昨年とは全く違う印象なのかもしれない、そしてその変わってしまうということが残念でしょうがない、という気持ちで溢れていた。

 反して、人間は成長するものであり、変わらないことを敢えて良しとすることが、必ずしも正しくはないという気もして、複雑な気がした。ましてや、まだ高校生のリツキは、色んな刺激を受け、日々心身ともに変化していく。それは否定できるものではない。何か自分の中で解せない気持ちがあるものの、彼の歌や彼自身に変化が起きることに対して、必ずしも非難することは、絶対してはいけないという妙な脅迫心に駆られていた。

リツキ

 そんな様々の複雑な気持ちを抱きながら見た、今年の彼のステージ。ギターは少し上達したような感じもあり、コードに込めた独自のテンション感が、鮮明になった印象も受けた。しかしその一方で、昨年歌を聴いてたときに感じた印象は変わらなかった。MCで戸惑ってしまうような、朴訥な感じも合わせて、1年を経てあのときと同じ感動が味わえたのが、嬉しかった。

 そのとき悟ったのは、彼自身の中で起きた変化は、必ずしも彼の魅力をそぎ落としてしまう要因にはならないだろうということ。例え次に彼の歌を聴いたときに感じるものが、今と全く違うものとなったとしても、それは多分彼自身の、魅力の範囲の中で変化していくものなのだろう。1年が過ぎてそういうことを感じることができたこと、そんなことを感じられるこのイベントがあったことが、素直に嬉しくも感じた。

My Hair is Bad

 この日はイベントの前身となるコンテスト『閃光ライオット』にも応募した経歴があるロックバンド、My Hair is Badがゲストとして出演、ボーカルの椎木知仁が「フロムナウオン」を演奏する前に、激しくギターを掻き鳴らしながら、このイベントへのエントリーを含めた様々なチャレンジに挫折しつつも、自分たちがここまで来た経緯や、そのとき感じた思い、そして同じように苦しんでいる後輩バンドマンたちや、10代の子供たちに向けた力強いエール、アドバイスを、衝動的な言葉で叫び続け、観衆を圧倒した。

 『閃光ライオット』ではファイナリストになれなかった彼らだけに、この場に改めて立てた彼らの声、音は余計に熱くなったのかもしれない。そんな思いをかみ締めるように、とーやま校長が「(このイベントを)続けてきてよかった。未確認フェスをやってきた意味が、ここにあった気がする」と語った言葉も印象的だった。そのとき椎木が激しく語った数々の言葉の一つが頭に再びよぎった。

 「大事なのは才能じゃない、続けることなんだ」

 この言葉は、様々な場面に当てはまる。My Hair is Badが様々な苦難に向き合いながら今を迎え、この日このステージに立ったこと、「未確認フェスティバル」というイベントが続いてくること、など。リツキについてもそうだ。去年、今年だけで彼の魅力を推し量ることなど、無意味だとあらかめて思う。これから何年も彼が歌い続けて欲しい。そして何かの折に触れ、彼の歌が聴けるときがあれば、と願うところだ。とーやま校長の言葉を思い出しながら、そんなことを思った次第だ。

新たなスターの誕生、彼らに期待する思い

 さて、今回の『未確認フェスティバル2018』だが、今年も様々に個性的な面々が集い、10代のどのバンドもトップを争う魅力的なステージを展開した。準グランプリを獲得したステレオガールは、クセの強い女性メンバーを主体に、強烈なパワーを感じるインパクト十分のライブを披露。

優勝したマッシュとアネモネ

 また審査員特別賞を受賞した、諭吉佳作/menは、15歳という若さながら曲作りのセンス、音の使いかたのセンス、そして歌のテクニック、見せかたに至るまで、底知れぬ才能を感じさせた。他にも理性が飛びそうなほどにはじけたステージを見せるもの、オールドスクール的なロックスターの作法を踏襲しながらも、カッコよさを十二分にアピールして観衆の目を釘付けにしたバンドなど、様々なスタイルのバンドが観衆を魅了した。

 そんな中で今回グランプリを獲得したのは、東京出身の男女4人組によるバンド、マッシュとアネモネ。グルーブとパッションに溢れたリズムに、ツインギターで厚みと広がりのあるサウンドを展開しながら、もちこの一見キュートながら芯のあるボーカルが彼らなりのスタイルを決定付ける。衝動的なインパクトというと他にも驚くようなバンドが他にもあったように見えるが、10代のフェスという部分で、多く共感を得るという部分で大きな魅力を持ったものだという印象がある。

 その意味では、逆に今後彼らが活動を続けていく中で、どのような変化を遂げていくか、その点は深く興味深いところだ。10代の彼らは、この10代のイベントで大きな反響を得た。今後彼らが成長していく上で、その成長がどのように音に反映されていくのか、そしてどんな人の胸に刺さる音を作っていくのか…このイベントで大きく認められたバンドだけに、以降の動向にも注目していきたい。

マッシュとアネモネ ミニインタビュー(イベント終了直後の囲み取材)

マッシュとアネモネ:
Gt.Vo.もちこ
Gt.間下隆太
Ba.理子
Dr.ヨネクボ隼介

優勝したマッシュとアネモネ(提供写真)

――イベントを終えられた現在の心境などはいかがでしょう?

もちこ いやもう本当に“信じられない”と…。

間下隆太 もうその一言に尽きます。

ヨネクボ隼介 発表された直後と、今それほど変わらないですね。まだ実感があまりなり。

――今回、どのバンドも強豪だったと思いますが、気になったバンドってありますか?

間下隆太 午前中(リハーサル)のころ、ずっと見ていたんですけど、TRANS LUCENT LADYさん(東京出身の3ピースガールズロックバンド)が、本当に勢いがあって、メチャメチャカッコよかったです。それと諭吉佳作/menさん(静岡出身のソロアーティスト)。本当にすさまじかったですね。袖で見ていたけど、全然15歳って思えない歌唱力とセンスがすごかったです。

――対して自分たちとしては、どのようなことを目指されましたか?

間下隆太 曲を聴いてもらうというのが第一なんですけど、バンドの目標としているのが、それ以上にライブハウス全体を「マッシュとアネモネ」のカラーにしたいというか。そんなことを目標にしているんです。それが今日は本当にうまくできたと思います。

――バンドのことを改めておうかがいできればと思います。作詞/作曲を担当されているのはもちこさんということですが、音楽遍歴を教えていただけますか?

もちこ 中学生のときに、Mrs. GREEN APPLEがすごく大好きで、ライブハウスにずっと通っていたんですけど“この人たちといっしょに仕事ができるようになりたい!”と思って始めたんです(笑)。

――このバンドがまだできて1年くらいということですが…。

もちこ そうですね、高校に入ってから。もともと理子ちゃん以外が同じ高校の部活で、理子ちゃんがその地区で仲のいい高校に通っていたので、それで後から入ってもらいました。

――プロ志向でいきたい、という思いもあるのでしょうか?

もちこ そうですね。ある程度のところまではやりたい、続けたいということは、ぼんやりとですが思っていました。

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